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変身ロワイアルその6

550永遠のともだち ◆gry038wOvE:2015/08/09(日) 01:07:23 ID:yTeAA/4M0



 要するに、ここは、蒼乃美希とは縁もゆかりもないような星だが、どういうわけか、彼女はこの世界に飛ばされてしまい、変な目玉の怪獣に一人で追われる状況になっている。
 彼女が帰りたいのは、ウルトラマンの故郷ではなく、自分の故郷の地球だ。しかし、何らかの不幸な事故か導きによって、ここに転送されてしまった美希は、とにかく目先の障害から命を守るしかなかった。
 見る限り誰もいないビル群の中を、どすどすと歩いて追ってくる怪物。
 怪獣から必死で逃げる美希。

(っていうか、何なの……! あの目玉の怪獣はっっ!?)

 奇獣ガンQ。
 体長は55メートル。体重5万5千トン。
 ちなみに生命がない。

 ……という怪獣のデータはどうでもいいとして、問題は、美希は反撃が一切できないという状況である。
 例によって、美希のリンクルンは石堀光彦によって光の吸収を受けた際に力が消えてしまい、完全に美希からキュアベリーへの変身能力を奪っていた。勿論、孤門一輝に継承されてしまったネクサスの光での変身もできない。
 更に言えば、地の利も悪い。見知らぬ土地であるのは勿論の事、美希が普段履いているスニーカーはこの不明な材質の上を走るのに適した構造をしていないし、美希の身体も宇宙の果ての星で息を切らすには向いていなかった。
 現状、策はないが、生きるには上手く策を講じて、ガンQを撒いて逃げるほかない。

「キィィィィィィィィッ!! キュィィィィィィィィィ」

 一方、ガンQは、余程美希の事が好きらしく、巨大な目玉をハートにしてしつこく追ってくるのだった。
 好意を持ってくれるのはありがたい話であったが、残念ながら美希の身長は164cm。ガンQと比べると54メートルほどの身長差があり、その身長差では、指先で触れられただけで潰れてしまう。今も地鳴りで体が飛び跳ねそうなほどだ。

「好きになって貰っても、お返しが出来ないから〜〜〜!!」

 というわけで、両腕を振って美希は好意を無碍にする。
 あの目玉を見ていると、どうしても何を考えているのかわからず、不安になる気持ちを抑えられなくなる。

 好機とばかりに、怪獣の入って来られないような建物と建物の隙間を見つけ、そこに全速力で駆けていき、すぐさま陰に隠れると、美希は少しだけペースを落として百メートル程度だけ走った。
 ガンQがどれだけ美希をちゃんと見る事ができていたかはわからないが、人間がすばしっこく逃げていく蟻を追えないように、ガンQもこれ以上美希を深追いする事は出来ないのではないかと思ったのだ。

(はぁ……はぁ……まさか、帰って来たと思ったら怪獣に追われるなんて……)

 こうして建物の陰に隠れると、狙い通りであった。遂に細やかな美希の姿はガンQの身体にある無数の目にも映らなくなったらしく、ガンQは、きょろきょろと巨大な目を回しながらどこかへと去って行った。先ほどの一瞬で死角に入れたのは奇跡だ。

(ふぅ……でも、何とか向こうに行ってくれたみたいね)

 ぜいぜい息を吐きながらも、彼女はまた百メートルほど来た所を戻り、遠目で、ガンQが背中を向けているのを見て、ほっと胸をなで下ろした。
 しかし、顔をそーっと出して、ガンQが去って行くのを黙って見つめる。
 この陰に隠れていれば、しばらくは安全だろうと思った。色々と考える事はあるが、ひとまずはこの疲労をどうにかしなければ……。



 ──と、そんな時だ。



「──おーい、お前、そんなトコで何してんだー!?」



 またも、巨大な怪物が、屈んでこの建物の陰を覗いて見ていたのである。


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