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変身ロワイアルその6

542時代 ◆gry038wOvE:2015/08/02(日) 11:36:04 ID:cMWgAZpE0
 死んだわけではないが、ある敵の力により、鋼牙とカオルが異空間に呑まれ、零はそれを追って旅立ってしまったのである。
 その為、雷牙に両親の記憶は、六歳より前の物しかない。零もまた、十歳までしか雷牙の前にいなかった。
 だから、過去で起きた時空を乱す一事件を知り、強い思念でこの世界に旅立ち、カオルや零と再会した時、雷牙の中には懐かしさと嬉しさが過ったのである。
 ……それも全部、やがて消えてしまう。

「──だから、俺を信じて待ってろ、雷牙!」

 だが、そんな恐怖に怯える雷牙の前に、父のように頼もしい声が聞こえた。
 ──零のその言葉が、雷牙の中にあった消滅への不安を拭わせる。

 彼は約束を果たし、また雷牙と出会う──そんな気がした。
 雷牙には、未来で必ず倒さなければならない敵がいるし、彼には彼で寄り添い合う仲間たちがいる。そこで待っているたくさんの人間が──だから、消えるわけにはいかない。
 その一念は、零に託す事にした。
 雷牙は恐怖を脱し、零に強い瞳を向ける。

「……はい。……じゃあ、零さん。ベリアルを必ず倒してください! お願いします」

 師の暖かさに、雷牙は、少しだけ怯えを消した柔和な声で、お辞儀をした。
 すると、雷牙の身体は零と翼の目の前で完全に消滅していく。
 今、共に戦った黄金騎士の姿は完全に、空に溶け込んで消えてしまった。──翼がぎょっとしたまま、零を見た。

「……ああ」

 零は、誰もいないそこに、そんな返事だけ返した。まるで、今まで共に戦った青い瞳の黄金騎士は幻だったかのようだ。
 零と翼だけがその場に残る。──そんな時、零の前で、美しい空の果てで、奇妙な光が見えた。
 だが、それを気にした零の後ろから、翼の声がかかる。

「……零、一つだけ訊きたい」
「なんだ? 翼」
「お前は、この殺し合いで、本当の幸せを得る事はなかったよな? 今の鋼牙の息子のような犠牲者も生まれた、この“改変”で……」

 翼の問いは、ふと、零の胸に突き刺さった。

「お前の家族……つまり、静香や道寺は蘇った。バラゴやガルム、コダマも葬られた以上、彼らが死ぬ心配はこの先、薄い」

 確かに、バラゴが時系列を越えて呼ばれたせいで、どういうわけか、彼に殺された零の家族が復活している。──いくらホラーが湧いているからとはいえ、一瞬だけ、幸せを感じたのも嘘ではない。
 考えてみれば、バラゴの死により蘇った魔戒騎士や人々が何人もいる。
 冴島大河のように、あまりに古すぎた場合、修復が不可能であったようだが、現実に、静香や道寺が復活した事で、零の中に嬉しさが芽生えていたのは事実だ。
 しかし、彼らと冴島鋼牙やあの殺し合いで死んだ人々を比べるというのは、あまりにも酷な話ではないか。

「ああ。確かに、あいつらのお陰で静香や父さんは蘇った。だが、俺が守るべき者はそれだけじゃない……いくつもの大事な物が失われた。今も、鋼牙の息子の雷牙が消えた!」

 零の言葉は激昂に溢れている。
 しかし、同時に、彼が果たすべき使命の声でもあった。

「俺の目的は、決して、静香や父さんを甦らせる事じゃない。人間の脅威を狩り、今そこにいる人間を守る。……それが、魔戒騎士の使命だ!」







 ──どうやら、零が先ほど見た光の正体は、今になってわかったようだ。
 はたまた信じがたい話だが、冴島邸に帰ると、その森の中に巨大な未確認飛行物体がやって来ていたのである。


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