したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

変身ロワイアルその6

539時代 ◆gry038wOvE:2015/08/02(日) 11:35:11 ID:cMWgAZpE0

 獣化したガルムの元に、白夜騎士打無が真っ先に駆け出し、魔戒槍が変形した白夜槍を振りかざす。
 その槍術を、華麗なジャンプで回避した彼女は、武器となるフープをどこからともなく取りだし、槍に引っかけ、それを弾いた。白夜槍が打無の手を離れ、何メートルか先に転がっていく。
 槍をなくした打無を次に襲ったのは、獣化ガルムの回し蹴りである。
 先走った打無は、顔面を叩きつけられ、ガルムの予想外の強さに、何メートルも吹き飛び、白夜槍のもとで倒れこんだ。

「くっ……!」

 獣化により魔導火への耐性が出来たのか、彼女はそれを横切ってステージを降り、歩きだした。
 そんな彼女のもとに、どこからともなくスポットライトは当たる。──彼女を照らす為にスポットライトがあるかのようだった。

『やっぱり、奴は強い……!』
「ああ。……だが、雷牙と俺の敵じゃない!」

 絶狼が、二つの剣を三日月の型に構える。その背中の後ろには、黄金の輝きがあった。──牙狼が垂直に黄金剣を構えているのである。
 暗闇の中で背中を合わせる金と銀の光──その輝きは、まさしく黄金騎士と銀牙騎士が背中を合わせた絵によく似ていた。

「父さんや零さんやたくさんの人を巻き込んだ殺し合い……それを仕組んだ者たちの一人、ガルム! ──貴様の陰我、俺が断ち切るッ!」

 二匹の狼はそれぞれ大剣を携えたまま、ガルムを睨む。
 ──ガルムが、二人を目掛けて走りだした。

「行くぞ、雷牙! 守りし者として!」
「──はい、零さん!」

 二人もまた、剣を構えたまま、ガルムに向けて走りだす。
 別世界の話とはいえ、目の前のガルムは父の仇に違いない。
 だが、彼は復讐に呑まれる事なく走りだす。大した心意気だ。──いや、また、それも零が教えた事なのかもしれない。
 絶狼は、牙狼に比べて一歩早かった。銀色の背中が雷牙の視界に映る。──かつて、子供のころに見たきりの、師の頼もしさ。

「はぁっ!」

 ──絶狼が駆け抜ける。
 絶狼の双の魔戒剣が、先に、ガルムの右脇から首と腰を斬り抜けていく。
 すれ違い様、ガルムも攻撃をしようとしたが、絶狼の剣がガルムを斬り裂く方が一瞬早かった。──ガルムの攻撃は、絶狼にかすりもしない。

「ぐっ……! な、何故だ……零、お前の実力はもっと──」

 ガルムの身体から烏の羽根が舞い、首がびくびくと震え、足をついた。
 次の瞬間、ガルムの獣化が解け、彼女は無力化される。
 ──絶狼の強さは、確かにかつて獣化ガルムと戦った時よりも超越されていたのだ。
 あまりに一瞬の出来事に、ガルムは驚くしかなかった。

「ぐあっ……! 私にはまだ野望が……」

 絶狼に気を取られていたが、まだ彼女への攻撃は前方からやって来る。
 次に駆ける牙狼の姿だ。──彼女はそれに気づいたが、人間のままではまともな反撃ができないのである。
 その牙狼の黄金剣が、女の姿をしたガルムの胸を容赦なく突き刺した。

「黄金騎士……っ! 貴様も……!」

 ──ガルムの胸に滴る、人間のものとは思えないどす黒い血液。既にそれは血も涙もない魔物のそれと化していた。
 彼女は、もがくように、右腕を前に突き出し、今、この場で叶えようとした──かつて叶わなかった悲願を叫ぶ。

「ぐっ……──メシア様ァッッ!!」

 ガルムの身体は、次の瞬間、無数の烏の羽根だけを残して消滅した。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板