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変身ロワイアルその6

537時代 ◆gry038wOvE:2015/08/02(日) 11:34:38 ID:cMWgAZpE0



 途中に立ちはだかるホラーたちは彼らの敵ではなかった。
 零が驚くべきは、雷牙と翼の二人のサポートがあれば、零が動かなくとも二人がホラーを倒してくれるほど、彼らの実力が高まっている事だ。
 当の零も、一体でも多くのホラーを狩る事で、更に実力を上げようと画策している。──零にしてみれば、ここはこの争いのゴールではなく、あくまで通過点。下手をすると、折り返し地点となるかもしれない場所だ。
 エモノは雷牙や翼にも極力渡さないようにした。実質、敵のようなものである。
 そして、その調子でホラーや番人たちを次々に狩り、彼らは城の頂上まで辿り着いた。

「ここは……!」

 辿り着いたそこは、広いホールになっていた。暗闇の中であったが、彼らがドアを開けた事で、少し光が漏れていた。
 零には、この場に見覚えがあった。
 あの殺し合いの始まりの広間に、非常によく似ていたのだ。──ここが本当にあの場所なのか、それとも、ぞれに似た偽りの場なのかはわからない。元々、あの場の事を細かく観察できる状況ではなかったし、零もよく覚えてはいなかった。
 しかし、こんな場に来ると、湧き立つ怒りを抑えがたかった。

 全ての始まりの地。
 あの場で起きた全ての悲しみと、この今の世界の惨状に繋がる全ての出来事を、潰せなかった自分への怒り。
 まだ黄金騎士への復讐などに燃えていた自分の未熟さを呪う。

『どうかしたのか、零』
「あの殺し合いの始まりの場にそっくりだ……」

 雷牙たちがここに現れたのを確認したのか、その広間に再び──かつてのようにスポットライトが放たれる。かつてを思い出し、零は両手の魔戒剣を握りしめた。
 スポットライトの当てられた中央に、烏の羽根のドレスに身を包んだ女性の姿があった。
 以前もその女を見た事がある。──そう、ガルムだ。
 かつては加頭順がそこに立ち、殺し合いの始まりを告げたのだが、今度はこの番犬所の神官が、ここでの戦いの始まりを告げる。

「貴様ら……待っていたぞ……!」

 ガルムの様子は、怒り心頭である。
 このビルでの全ての情報は彼女も監視していたらしく、コダマの死を目の当りに舌らしい。

「一度ならず、二度までも……私のコダマを!」

 コダマはこのガルムという女の息子だ。一見するとコダマより若い女性の姿をしているが、それは彼女たちが若い女の身体を乗っ取り、憑代としているからでしかない。実際には何百年も生きる老女である。
 そして、彼女はホラーではなく、かつては人間であった──つまりコダマも人間である──が、魔界に魅入られ、ホラーたちを現世に呼び出そうと試みたのだ。
 そんなガルムに対しての同情など、魔戒騎士たちの中にはない。

「懲りずに何度も自分の息子を野望の道具にするアンタの方に原因があるんだぜ……!」
「今まで、貴様が幾つの親たちを悲しませてきたと思っているッ!」
「──その通りだ。……本当の親子の絆、俺がお前に突きつける!」

 三人の騎士がそれぞれの武器を構え、ぎらりと輝く瞳で、ガルムを前に立ちふさがろうとした。
 それを見て、ガルムが手で合図すると、広間にある幾つかのドアが開き、そこからわらわらと素体ホラーたちが湧いて来る。

 どうやら、素体ホラーたちが彼女の従える最大の武器らしい。あまり個性の強いホラーたちをまとめ上げるよりはやりやすいのだろう。
 しかし、素体ホラーたちの攻撃は単調だ。──盾や時間稼ぎくらいにしかなるまい。

「涼邑零、山刀翼──そして、黄金騎士の紛い物の魔戒騎士! 貴様らを地獄に落としてやる!」

 ガルムはスポットライトの当たるステージの上で、高みの見物というわけだ。
 しかし、ガルムもここまでの彼らの動向を知っているはずである。──この程度の妨害に三人の魔戒騎士たちがひるまない事は承知済。
 やはり、これは何かを成す為の時間稼ぎだ。


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