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変身ロワイアルその6

536時代 ◆gry038wOvE:2015/08/02(日) 11:34:21 ID:cMWgAZpE0

「消えろッ!」
「──ッ!?」

 コダマの腹から剣を抜くと、コダマの姿がばらばらに爆ぜる。
 零は一歩下がり、その跳ね返り粒が自らに降りかかってくるのを防いだ。

「一丁上がりってとこかな」

 ──ソウルメタルの重さは勿論、鎧の強さというのは当人の気によって変わってくる。
 かつて、コダマと戦った記憶に比べ、そこに繋がってくる魂の成長により、その剣の力もコダマの身体を爆ぜさせるほどに上がっていたのだ。
 零自身も、それだけ力量が上がっていた事には、少しばかり驚いている。──魔戒騎士としては、修行の経験もなしに記憶だけで精神力を上げてしまうのは少々反則的にも思えたが、確かに今、零の力はかつてより上がっていた。
 ともかく、両腕の鎧を解除したところで、雷牙が駆け寄って来た。

「ありがとうございます、助かりました……零さん」
「お前も、最後の最後でちょっとツメが甘いみたいだな。油断してたってわけじゃないが……まだまだ修行が足りない部分もあるって事か」
『零……お前が、奴の変身の事を教えなかった事にも責任があるぞ』

 師匠面をしてみる零だが、ザルバがそう口を挟んだ事で、その威厳が崩れる。
 まだ顎髭もなく、顔立ちも幼い零は、雷牙の方に笑顔を向けた。

「悪い、悪い。でも、あの鋼牙の息子ってのは確かに今の戦いを見て、確信したぜ」

 見れば、本当に太刀筋がほとんど黄金騎士のそれである他、格闘の仕方までも鋼牙そっくりだ。時折、わざわざ鞘まで使って二刀流を使うのは、零の戦法を似せているようにさえ思える。
 零たちとそう変わらない年齢であるにも関わらずあそこまで戦えるというのは信じがたいのだが、鋼牙の遺した血というのは相当の物らしい。
 既に同じ年の頃の鋼牙を遥かに超越しており、はっきり言って、零の知る鋼牙よりも戦闘能力は高かった。
 ──……その上、性格で言えば、おそらく不愛想な鋼牙よりは、マシだ。

「……おい、零。周囲のホラーは全部倒したぞ」
「おう、サンキュー」

 翼が声をかけた。彼も実力者だ。零の倒す分も全て、彼が仕留めてくれたらしい。
 城前のホラーは全て潰し、零も翼も、少しだけ安心する事が出来た。──が、それも束の間で、またすぐに城に突入し、ホラーを狩らねばならない。

「……零さん。一つお願いがあります」

 雷牙は、その時、不意にそう、少し深刻な顔で言った。
 もしかすると、コダマに不覚を取ったのを少し気にしているのかもしれないと思い、訊き返す。

「なんだ?」
「──この世界にはもう父さんはいないかもしれませんが、もし、この世界にちゃんと俺が生まれて、俺が十歳になったら……その時もまた、俺を鍛えてくれませんか?」

 雷牙が何故、こんな事を言い出すのか、零にはわからなかった。鋼牙がいないこの世界でも、雷牙は生まれるのだろうか。……普通に考えれば否である。
 ただ、弟子を取らない主義の零も、今の雷牙の戦いを見ていると、将来、雷牙のような魔戒騎士を育ててみたい気持ちにもなった。
 ──それに、この雷牙の成長も、少しは楽しみに思う気持ちがある。
 実力は零より上である物の、確かに彼は、零が教えればまだまだ成長できる余地があるだろう。

「突然どうした? ……まあ、別に構わないぜ。もし、そうしないと、どうやらお前の二刀流とかも身に着かないみたいだしな」

 零は、そう言って軽く笑ったが、雷牙がどこか深刻そうで、どこかこの時代の父や母や師に対して思う所があるように見えた。
 カオルや零と相対する時の彼の顔は、まるで、いなくなってしまった人間を見るようだ。






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