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変身ロワイアルその6
531
:
時代
◆gry038wOvE
:2015/08/02(日) 11:32:52 ID:cMWgAZpE0
そう、それは、鋼牙と零の、それぞれの太刀筋の癖だ。
特に、黄金騎士の系譜の癖と、どの系譜にもない零の独特の癖が綺麗に混じり合っている。だが、一子相伝の前者と、唯一無二の後者の癖が相容れるはずがない。──そもそも、零の剣を使えるのはこの世で零だけなのだ。
今の僅かな組手だけでも、零とザルバはその矛盾をすぐに理解した。
敵であれば確実な脅威だが、味方であればそれはそれで、不思議な事である。
目の前の男は、零が不思議そうにしているのを少し笑い、それからすぐに、零たちの方を見て、その答えを告げた。
「──そりゃあ、冴島鋼牙は俺の父さんですし、零さんは俺の師匠ですから」
──と、彼の言葉で、その場の時間が一瞬、止まる。
その謎の男だけがニコニコと笑みを向けたまま、零、カオル、ゴンザ、それからザルバたちの顔が崩れていく。
真剣だった零の顔も、一見するとかなり面白い所まで変わっていった。
「鋼牙さま」
「の息子」
『で、零の』
「弟子……」
『「「「────はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」』
そんな声が出たのは、その直後だった。
鋼牙が父──つまり、彼は鋼牙の息子。いや、だが、だとすると、鋼牙の隠し子という事になる。今のところ、鋼牙の隠し子を産んだと考えられるのは、カオルだ。
カオルに一斉に全員の視線が集まる。だが、カオルはカオルで、そんな彼らの視線が集中している中でも、全く心当たりを持っていない。
『カオル、お前いつの間にっ!?』
「えっ、知らない知らない!! まさか、えっ……別の人……!」
「しかし、鋼牙さまにはカオル様以外の女性との交際は特には……第一、あの性格ですし。……というか、鋼牙さまのお子様にしては、少々、年齢の方がその……」
「俺も鋼牙の息子に剣を教えた覚えなんて……! 第一、これまで俺の剣なんて誰にも教えてないし……!」
一同は、混乱し始めているようである。
その上、ここで休んでいた魔戒騎士たちも、まさか次代の冴島家──つまり、黄金騎士の素質を持つ者がこんな所で突然現れた事には驚きを隠せない模様だ。
冴島家をよく知るゴンザやザルバまでもがこうして混乱しているくらいなので、事情を一切知らない魔戒騎士たちは野次馬気分で、更にひそひそと話し始める。
立ち振る舞いからすれば、それは確かに黄金騎士の資質があっても全くおかしくない者だというのは誰にでもわかった。だが、隠し子だとすればそれはそれでまた、随分と面白い話になる。
当の「鋼牙の息子」は、苦笑いしながら、やれやれ、と肩を竦めた。
どうやら、将来的に付き合いのある人間たちの過去の姿を見つけて、悪戯っぽい気持ちになっているらしかった。
だが、彼の口から出てくる言葉はまぎれもない真実ばかりだ。
「うん。僕の母さんは間違いなくあなたです、カオルさん。それから、相変わらずだね、ゴンザにザルバ。……零さんも、改めて、お久しぶりです」
「母さん!? ……って、えっ!?」
カオルが母であるのは間違いないようだが、カオルにしてみれば、息子なんて生んだ覚えがないし、そこに至る色々もまだない。それに、この男の年齢はカオルともそう変わらないくらいだ。そんな息子がいるはずはない。
零の他に、ゴンザやザルバの名前も彼はよく知っているようで、彼は親しみを込めてその名前を呼んでくる。
──全くわけがわからなかった。
「俺は冴島雷牙。将来生まれるはずの、新しい黄金騎士です。……今より少し未来から、この時代に救援に来ました」
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