[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
変身ロワイアルその6
516
:
虹と太陽の丘(後編)
◆gry038wOvE
:2015/07/31(金) 03:43:59 ID:didGUWPE0
「良牙さま。あのあかねさんの事が好きだったんですね。……わたし、泣いちゃいました。自分が失恋してたからじゃなくて、良牙さまがあんまり辛そうで……」
「……ごめん。ずっと隠していて」
まあ、あかりも二股については、モニター映像で知ってしまっていたのである。何も知らないままではないというのは、せめてもの良牙への報いであったが、それにしては、あかりの言葉は良牙に罰を一切与えていなかった。
よもや、良牙も自分の積年の想いが全世界中継されているなどとは思わず、今になって恥ずかしさも込み上げているのだが、それを必死に抑え、あかりに素直に謝っていた。
自分が最低の男だと、思い知っている真っ最中である。
「いいえ、良牙さまは決して軽い気持ちで誰かを好きになったわけじゃないですから。それに、前にも一度、同じような事があったので……」
前にも一度、同じような事があった──という言葉を聞いた瞬間、彼らの後ろで右京が直接良牙を巨大なヘラで殴りに行こうとしていたが、それはボロボロのムースが必死で止めた事で事なきを得ていた。
まあ、実際は、乱馬のせいで起きた誤解の一件の事なのだが、彼女たちが知る由もない。
「絶対に……たとえ、何があっても死なないでくださいね」
どこか気まずくしていた良牙に対する、健気なあかりの言葉は、彼の胸を打った。
やはり──たとえ、早乙女乱馬や天道あかねがいなくとも、自分には帰るべき世界があるのだと、良牙は悟る。
あかりの言う通り、何があっても死にたくはない。死にたくないどころか、もう戦いに行って死ぬリスクを負う事が嫌な気持ちもある。
はっきり言って、良牙でもベリアルの事は少し怖い。──ましてや、帰るべき場所や、そこで待っている人がこれだけ楽しいならば、何で意地をかけて戦わなければならないのだろう。
永遠に、ずっと……ここにいたいと思っている。
だが、その気持ちを抑えて、この安息の地を一度離れてでも、良牙は決着をつけに行かなければならない。
それは──これまで言ってきた通り、乱馬に負けない為でもあるが、おそらく乱馬と出会わなくても、良牙はそうしたのではないかと思う。
「──あかりちゃん……大丈夫だよ。俺は、必ずここに帰る。……ここにいたいから」
帰れるかはわからないが、帰りたいという想いさえあれば、いつか帰れるんじゃないかと良牙は信じた。
今まで、生き残る為に帰ろうとしていた気持ちの方が強く、生き残れば、それに付随して「帰還」が起こるだけだと思っていた。だが、今は、ここに帰る為に生き残ろうとしている。
……そういう気分だった。
だから、もっと、いくつでも、この場所に帰りたくなるような事を考えた。
「……そうだ、あかりちゃん。帰ってきたら、ここでデートしよう」
咄嗟に、そんな言葉が口から出てしまい、あかりはきょとんとした。
良牙は、それから数秒後に、自分らしからぬ言葉を発していた事にふと気づき、それから一瞬で顔を赤らめた。
あまりにも、これからの事を考えすぎて、女の子をデートに誘う恥ずかしさなど全く考えもせず、突発的に口から出てしまったのだ。
ましてや、あかりは、あかねとの事を知ってしまったばかりである。本命のあかねが死んだからといってあかりとデートする……というのは、当然、勝手な行為だ。
生き残りたいが為に、彼女のデートを方便にするというのも、かなり身勝手で、彼女の心を弄んでいるという事に、今更ながら良牙は気づいた。
……それに、あかりが良牙をあそこまで好きでいてくれたのは、ブタになる体質のお陰でもある。
今は、それは失われ、良牙は体が頑丈なだけの普通の人間なのだ。
あかりがまだ、良牙を好きでいるという保証はない。
「……いや、勝手かな。ごめん、忘れてくれ」
良牙は、あかりの方を見る事ができなくなった。
自分の想いがどうしても不誠実で、それをこんなに純粋で健気なあかりにぶつけるのが、彼には辛くなったのだろう。それに、またフラれると思った気持ちがあった。
だが、そんな良牙に突きつけられたあかりの言葉は、いつまでも優しく在りつづけた。
「──待ってます」
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板