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変身ロワイアルその6

510虹と太陽の丘(後編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:41:09 ID:didGUWPE0
 彼女は、良牙に向けて叫ぶ。

「……良牙っ! あんたの彼女も向こうの丘におるでっ! ずっとウチらと一緒に行動しとったからな!」
「俺の彼女? まさか……それってあかりちゃんっ!?」

 右京も良牙も、未だ、わらわらと湧いて来る怪物たちを倒しながら会話していた。カンナギが調達した怪人軍団の数も、こうしてどんどん減っている。
 彼らにしてみれば、むしろ格闘しながらの方が会話は捗るくらいである。物が壊れ、怪人が倒れ、轟音が鳴り響いて、会話はすべからく、かなりの大声の物になっている。

「せやっ! だから、こんな所で油売ってないで、そっちに会いに行ったれっ!」
「わかった! 恩に着るぜっ!」

 良牙がそう言って、天道道場の塀を突き破って、外に走りだすが、彼は方向音痴であった──向かったのは、右京が差した方向と逆だ。
 思い込みが強い状況ほど、彼は自分が方向音痴である事を忘れてしまう。

「あっ、待て! そっちは逆や!」

 右京が、ダスタードの頭をヘラで叩きつけ、打ちのめした後、慌てて良牙を追いかける。──だが、良牙のスピードは速く、右京でもそう簡単に追いつける相手ではない。
 一度走りだした良牙に追いつくのは、当然、カンナギたちでは無理であった。幸いにも、良牙は逆方向に突き進んでいったらしく、それならば、待ち伏せすれば良い。
 しかし、そんな思考のカンナギの前には、まだムースが残っていた。

「──良牙が行ったか。ならば、貴様らをぶちのめすのはわしじゃっ!」

 一方、カンナギの部下はまだ残っている。
 特に強力な力を持っている黒人男性カタルが取ってあったのは、こういう時の為だ。──彼は、ミュータミットでありながら、人間体の時はそこまで強力な戦闘能力を持っていない。
 だが、変身さえすれば、ここにいる中でカンナギに次ぐ能力を持つ怪物になる事ができるというカンナギにとって都合の良い切り札であった。

「カタル。……任せた」
「──抹殺」

 ムースとカンナギの間にカタルが立ちふさがったカタルは、呟くようにそう言う。
 すると、彼は、その直後、濃い藍色の怪鳥──サドンダスへと変身した。
 更に次の瞬間、サドンダスが口から吐き出した青い熱線が、走っていたムースを襲う。

「おっと……!」

 地面にぶつかったそれを、辛うじて回避したものの、ムースはその爆風に耐えきれず、空中でバランスを崩して倒れる。
 顔から落ちたが、顎を手の甲で撫ぜると、彼はすぐにサドンダスを睨み返した。

「くっ……本物のバケモンか」

 いずれにせよ、サドンダスはムースの足止めには充分だったらしい。サドンダスが攻撃をし、ムースの視界が煙に包まれた隙に、カンナギは去って行ってしまう。
 カンナギは良牙と右京に任せるとして、この怪物はムースが倒さなければならないらしいと気づく。はっきり言って、面倒な上に厄介であった。こんな鳥の怪物などに現を抜かしている場合ではない。

「どけっ、トリ公。貴様など、アヒル以下だと教えてやるっ!」

 ──だが、彼はその一方で歓喜もしていた。
 直接的ではないながら、シャンプーの命を奪った主催者どものけしかける怪物をぶちのめせるという事に。

「──でやぁっ! 死ぬがいい、トリ公!」

 ムースの袖から出現する鉤爪付の縄たち。それらは、一瞬でサドンダスの身体中を巻き、彼を雁字搦めにする。良牙よりもきつく、複雑に、そして大量に絡まり、怪物たりとも一瞬ではほどけない状況が作り上げられた──。
 そして、そんなサドンダスに向かって、駆け出したムースは、体中から剣、爆弾などをばら撒いていく。
 天道道場は、こうして財団Xが現れる前よりもボロボロになっていくが、実際、こんなのはいつもの話であった。






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