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変身ロワイアルその6
509
:
虹と太陽の丘(後編)
◆gry038wOvE
:2015/07/31(金) 03:40:46 ID:didGUWPE0
乱馬たちが数少ない特異な能力者なのかと思えば──なんだ、この惨状は。
「さっきはデータだとか何だとか言っていたが、調査不足だ、バーカ。お前の下っ端ごときにやられて、お前ら如きに従うような奴は、俺たちの仲間にはいないっ!」
「──そう。この世界の人間を敵に回したのが貴様の敗因じゃ!」
変身者及び参加候補者にばかり目をやっていたが、この世界の人間は──軒並み、格闘において人外レベルに発達した人間なのである。
あらゆる流派、あらゆる格闘術が、だんだんと、マスカレイド、屑ヤミー、ダスタードたちの数を減らしていた。──残っているのは、カンナギとその側近の数名、それから、息の根が止まる直前の雑魚たちのみだ。
「くっ……! 今だけは不覚を認めよう。だが! 我々三人だけは甘く見ないでもらおうか!」
ミュータミットの能力を持つ眼鏡の女性・ソラリスが素早く前に出て、ムースに向けてキック主体の格闘技で襲い掛かる。
ムースが、そのうち二発を両腕でいなすが、確かに、彼女からは人間離れした強さを感じた。──この女、できる。
そして、そんな彼女が足を高く上げて狙ったのは、ムースの顔面──。
ムースは直前に回避しようとしたが、ミュータミットらしい攻撃の圧力により、眼鏡は真ん中からぱっくりと二つに裂け、割れる。
「そうだ、ムースくんはどうせ眼鏡がなければ何も見えない……やれっ!」
その瞬間、ムースを狙い、再度ソラリスが謎のスイッチを持って前に出る。
ムースを一度蹴りで引き離してから、このスイッチを使って怪物に変身する予定だった。
「──ふんっ」
──が。
その次の瞬間、ソラリスの顔面には、ムースの飛び蹴り──秘技ダチョウ脚が、「みしっ」と音を立てて正確に叩きこまれていた。
ソラリスは、そのムースの一撃に耐えきれず、気を失ってしまう。そのまま、スイッチを握っていた右手からも力がなくなり、彼女の十八番のゾディアーツスイッチは地面を転がって、池の中に沈んだ。
あまりにも一瞬で倒された部下のミュータミットの姿に、カンナギが唖然としている。
「な、何故っ!? 眼鏡がないくせに何故、私たちを識別し、攻撃している。……まさか!?」
目の前のムースは、眼鏡をかけていない。超ど近眼の彼は、下手をすると味方を巻き込んで攻撃しかねない状況のはずだ。
それにも関わらず、彼は、正確に目の前の敵を攻撃した。
だとすれば、答えは一つしかない。
「そのまさかだ……」
ムースは、事実をカンナギに美しい素顔で告げる。
「──今のおらは、コンタクトレンズをはめているのさ!」
「な、やられたぁっ……!?」
カンナギもソラリスも眼鏡派なので気づかなかったが──ムースは眼鏡の下にコンタクトレンズを嵌め、もし眼鏡がなくても戦えるようにしていたのである。
眼鏡派であったムースがコンタクトレンズを嵌めるなどという覚悟が起こる事など、カンナギも予測していなかっただろう。
ソラリスもそこで油断し、今、敗北したという事である。
(はっ……!)
こうしている間にも、次々と財団Xの怪人たちは敗北を喫していた。
──ふと、カンナギもこの世界にいるうちに、自分がだんだんとばかばかしい思考に取りつかれはじめていた事に気づき、気を取り直して、また普段の思考に戻ろうとする。
(いかん……。奴らめ……我々と同じく、全ての部下を全て鎮圧して、残る我々だけを全員で追い詰めようとしているな……!)
その時、遂に天道道場の外壁が破壊され、戦闘員の束が、全員顔にお好み焼きを叩きつけられて伸びたまま、カンナギの足元に降って来た。
叩きつけられた後方の壁から現れたのは、この世界の数多の女性たちの中でも一番可愛い少女・久遠寺右京──乱馬のもう一人の許婚──であった。彼女のお好み焼き格闘は、財団Xの怪物たちも簡単に打ちのめしてしまったのである。
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