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変身ロワイアルその6

505虹と太陽の丘(後編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:38:36 ID:didGUWPE0

 早雲を見て、良牙は弱弱しい声で呟く。
 汚れた子犬のような目で、助けを求めるのか、あるいは、謝るのかといった目で、早雲を見つめる彼──それを見て、早雲は無念を悟った。
 かすみとなびきの顔色も、流石に曇っている。

「──おい、レム・カンナギとやら! おらが良牙を連れてきたぞ」

 ムースがそこで、大きな声をあげた。
 すると、天道家の奥から、自分が呼ばれたと気づいた財団Xの服を着た中年男性──レム・カンナギが、何が起きたのかと顔を顰めて歩いて来る。居間を土足で通り抜けているが、彼はそれを全く意に介す様子はない。

「……おお」

 そんな彼であったが、ムースにお縄頂戴されている良牙の姿を見ると、少し驚いたような表情をした。カンナギとしても、まさか今になって良牙を連れてくる者が現れると思っていなかったのだろう。

「この良牙を連れてきたら願いを叶えてくれると言ったはずじゃ。じゃあ、おらの願いを聞いてくれるな?」
「ムース! 君は良牙くんの友達なんじゃないのか! まさか、彼を裏切ったのかっ! 一体何故!?」

 ムースは、早雲の方を一瞥し、それで一度は目が合ったものの、すぐに目を逸らし、彼の言葉を無視して続ける。


「──シャンプーを生き返らせてもらおうか、カンナギ!」


 ムースのその一言が、早雲の胸に衝撃を与える。
 ムースは、ただ一図にシャンプーを生き返らせたいだけなのだと──それに気づき、彼も黙って、少し項垂れた。彼にも、乱馬やあかねを生き返らせたい気持ちが少しあるだけに、どうしてもムースの想いだけは否定できなかった。
 しかし、それでも──それは間違っている、と、早雲は心の中では理屈抜きにそれを否定しようとしていた。

「……おい」

 一方、カンナギは、カメラマンに目配せした。──どうやら、「映像を差し替えろ」というような趣旨の合図らしいが、良牙たちにはそれはわからなかった。カメラマンは、その合図に、頷き、何やらカメラのボタンを押した。

「おやおや。これはこれは……珍しい客人だ。ムースくん、だったな? わざわざご苦労だ。君の、我々への協力は素直に感謝しよう。君の要件も概ね理解した」

 カンナギは、そうして、ムースたちから少し距離を置いた早雲たちの前に立ち、互いに顔を見合わせていた。
 そんなカンナギの元に、何人かの財団Xのメンバーがわらわらと集まってくる。黒人男性もいれば、女性もいた。カンナギの身を守ろうとする側近のような立場なのだろう。
 カンナギは薄く笑い、一見するとこうしてやって来たムースを歓迎するような表情をしたが、すぐにその表情を崩す。

「……だが、一つだけ言っておこう。──君はバカか?」

 カンナギは、この冷徹な言葉を、ムースに向けて放った。
 無表情でありながら、ムースを嘲笑っているかのようなその言葉に、カンナギは付け加えていく。

「もう私たちは君が何をしなくとも、良牙くんをここにおびき寄せる算段は立っていた。だから、もう君が何か手伝う必要はなかった。──告知し忘れていたが、もう、良牙くんを捕まえるゲームはあの放送の時点で終わっていたというわけだよ。良牙くんを倒すのには随分苦労しただろうが、残念ながら、君のしてきた事には意味はない」

 ムースは、彼の言葉をただ冷静に、黙って聞いていた。周囲の人々がざわめきだす。
 良牙を捕まえる「第二ラウンド」の終了など、誰も聞いていない。今、こうして良牙を連れてくる者が現れたというのに、それは一切無視されているというのである。

「それに、折角、来てくれたから言っておくが、『願いを叶える』などという話──悪いがね、あれも、全部嘘なのだよ。まあ、連れてきた者を洗脳し、幹部待遇を与える場合もあるというのは本当だが……」


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