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変身ロワイアルその6

504虹と太陽の丘(後編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:38:16 ID:didGUWPE0



 ──そして、彼らの山籠もりの修行が終わり、二日はあっという間に過ぎた!






 東京都練馬区に位置する天道道場には、かなりの人だかりができていた。門の外から、何人もの人が覗いている。それは、そこで行われる処刑に立ち会おうとしている者たちだ。
 通常なら、管理下の人間に自由は与えるべきではないが、この場の処刑の立ち合いはあくまで自由参加である。
 ただ、人々から見れば、あかねは殺人を犯した大罪人であり、この天道家の人々はそれを生みだし、育てた人間たちだ。──悪趣味で鑑賞しようとする人間、変な正義感を持って見に来ていた人間が大多数であった。

 人目に晒されながら、磔のなびきは、この二日間、「見物料をよこせ」などと喚いていたが、勿論、誰もそんな事をしようとは思わず、それは却って天道家の威信を下げる発言となっていた。
 天道道場を取り囲む人々はこの短期間で、暴徒のような性質を見せ始めた。
 ただ、その一方で、そんな中でも守ってくれる人がいるのも事実で、かすみに向けてビールの缶を投げつけた男が、突如として全身の関節の痛みを訴え、動けなくなるという事態も発生している。──実は、近所の接骨院の男が、こっそりと財団Xに紛れて、天道家の三人にマッサージや忠告を施し、野次馬をたまに、指一本で撃退しているのである。



 ──そんな野次馬たちが大きくざわついたのが、その「二日後」なのであった。

「おい、あれ……」

 天道道場に至るまでの道のりをゆっくり歩いて来る、たった二人の男を見て、人々は道を開け始めていた。
 それは、まさに異様というか、誰も近寄れない空気を醸し出していた。
 白い服を着た長い髪、めがねのアジア人男性が、モニターで中継されていたあの「響良牙」を縄で縛り、無理やり歩かせているのである。──それを知っていた人々は息を飲んだ。
 良牙の身体は、何度も痛めつけられた痕があり、表情は、もはや限界寸前なほどに憔悴し切っている。倒れかけであった。

「あ、あんた、もしかして……良牙を捕まえたのか……」
「──ならば、何だという」
「い……いや、何でもない……」

 その男の、まるで暗殺者のような佇まいに、近寄れる者は誰もいなかった。
 あの良牙を捕えた者だというだけでも、この白い服の男の格は上がる。あの映像だけでも、良牙たちは、自分の手に負える相手ではないのを理解していた住民たちだ。麻酔銃が効くだけ、虎でも相手にした方がまだマシという気がしていた。
 それを仕留めたというのだから、この男がただならぬ者であるというのは一瞬で、誰にも伝わった。

「どけっ!」

 財団Xが警備していた天道道場の門に、良牙を連れて悠々と入ってくるその男。
 その警備兵が男の肩に触れたが、次の瞬間、男の拳が警備兵たちの顔に一撃ずつ叩きこまれ、すぐに気を失う羽目になった。

「良牙くん! ……それに、君はムース!」

 その男の姿が、いよいよ、天道道場の庭で十字架に磔にされていた天道早雲たちの目にも入った。
 庭に、落ち着いて、ただゆっくりと入ってくる白い服の男は──やはり、ムースであった。

 レム・カンナギたちはどこかで休憩していたようだが、テレビカメラがそこには設置されていた。
 早雲たちの周囲を囲む財団Xの人間が、慌ててテレビカメラを回すと、遂に──痛めつけられた良牙の顔は、世界中に中継される事になってしまう。

「おじさん……すまない」


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