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変身ロワイアルその6

503虹と太陽の丘(前編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:37:55 ID:didGUWPE0

 ……このままでは、たとえあの世でも、シャンプーを乱馬に取られてしまうのではないか。
 それどころか、乱馬がいなくなっても、今度は良牙がムースの前に立ちはだかってしまうのではないか。

「くっ……!」

 かつて見た、強く、何度挑んでも負けない男の姿。──目の前の良牙が、かつて、乱馬に対してムースが抱いた執着と重なってくる。
 そうなると、ムースは、どうしても、その男を殴らざるを得ない衝動にかられた。
 シャンプーは渡さん──と、何故か、良牙にさえ思う。

「それにあかねさんの事で辛いのは俺だけじゃない……。あの人たちも、俺なんかよりずっと辛いのに……それでもまだ戦おうとしてるんだ! 俺は、あの人たちにも負けるわけにはいかない……今すぐにでも行ってやるっ!」

 そして──遂に、その拳が、怒りに触れ、良牙の頬を殴った。

「この、たわけがっ! ────っ!!」

 ただのパンチではない。
 それは、この一週間、コロンとともに、ムースが鍛えて編み出した新たな気が込められたパンチである。
 暗器ではなく、修行によって得た“拳”の一撃は、的確に良牙の左の頬に叩きこまれ、彼を土産物の山の中に吹き飛ばした。

「……!?」

 頑丈な良牙が今、気づけば土産物の台や床を突き破り、地面に半分埋もれている──。
 良牙には、一体、何が起こったのか、さっぱりわからなかった。
 コロンは頷き、シャンプーの父は呆然とそれを見た。──『土産物の台を突き破ったり、床を叩き潰したりしないでください』と書いてある注意書きの紙が、あまりの衝撃に剥がれた。
 良牙は、ムースを見つめ、呆然としていた。
 目を見開き、何かに興味を示した幼児のように、今のムースの攻撃を振り返る彼は、痛みなど忘れていた。

「ムース……お前、その技……!」

 先ほど、ムースに「教えてくれ」と頼んだ、ムース自身の技ではないか。
 それを今、自分は食らったのだろうか。──一瞬の出来事で、良牙はそれが何なのかわからなかったが、攻撃を受け、妙な清々しささえ覚えている。

「……」
「……ムース!」

 ムースは、ただ黙って、そこに立っていた。
 これが、良牙へのムースの返答でもある。──「今は行くな」と、それから、「この技を教えてやる」と。
 良牙がムースに技を聞くのを躊躇うのと同じく、ムースにも自分が折角編み出した自分だけの技を、同年代の人間に伝授するのはプライドが許さなかった。ゆえに、それを認める言葉を良牙に投げかけようとは思わなかった。
 そんな時、ふと、コロンが口を開いた。

「……一日じゃ」

 良牙とムースは、コロンの方に目をやった。

「ムース。今の技を、明日までに良牙に教えよ。良牙は死に物狂いでそれを覚えろ──二人とも、甘さを捨てて戦え! そして、残りは一日かけて天道家に向かう! 修行の休息は全てそこで取る!!」

 良牙とムースは、彼女の言葉には口を挟めない。
 二人の意見はぶつかっているが、それを傍観していた彼女の意見は、百年の人生経験から来る確実な中立であったからだ。
 良牙とムースは、再び互いに見つめ合った。
 慣れ合うつもりはない。──殺し合いだと思って、修行に挑むつもりだった。

 彼らの苛烈な修行は始まった!






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