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変身ロワイアルその6

501虹と太陽の丘(前編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:37:19 ID:didGUWPE0







 静岡県某所の小さな町。──近くが名所・富士山とはいえ、観光で賑わう事も今はないので、こうして良牙たちが下りてきても、ただの田舎町にしかならない場所であった。
 土産物を売っている町中も殆ど静まり返っており、まるでそこはゴーストタウンだ。
 だが、その土産屋のアナログテレビを一度つければ、そこには巨大モニターで写っている光景と同じ映像が映る。

 画面上には、加頭と同じ服装の眼鏡の中年男性が映っていた。
 テロップでは、「財団Xのレム・カンナギ氏による重大放送」とある。それは、変身ロワイアルの「第二ラウンド」などを告げた男であったのを彼らは思い出す。

「これはっ……!」

 そして、そのカンナギという男の立っている場所には、良牙も見覚えがあった。
 純和風な、灯篭や池のある庭──あれは、天道家だ。
 良牙たちの間に、緊張が走る。

『この世界の生還者、響良牙くんに告ぐ。天道家の家長・早雲、長女・かすみ、次女・なびきの以上三名は、今日、我々が捕えた』
「何だと!?」
『君が一週間後までに大人しく天道道場まで来ない場合、彼らを殺す。では、家長の言葉だ、よく聞いておくといい……』

 その言葉の後に、カメラが180度方向を変え、今度は、十字架に磔になっている三人の男女の姿が映し出された。
 ──それは、良牙たちも知っている顔である。
 中央には、髭を生やした立派な中年の男性の姿。どこか、憔悴しきった表情であった。画面では、彼の顔がズームになっていく。
 もう画面から消えてしまったが、残りの二人の女性は、若く、一方はロングヘア、一方はショートカットで、いずれも眠ったように首を垂れていて、顔すらはっきりと見えなかったが、やはりそれが誰だったのかは良牙にもすぐわかった。
 ここで写っているのは、天道早雲、天道かすみ、天道なびきの三人で間違いない。──つまり、天道あかねの父と、二人の姉が囚われたのだ。
 彼らの言った通り、三人は財団Xによって捕えられ、このようにして、良牙をおびきだす為の人質にしているらしい。

『来なくていい……良牙くん。もうこれ以上、関係のない私たちの為に、君が辛い思いをして戦う必要はないんだ。乱馬くんやあかねの事は、とても残念に思う。──あかねの事は、君にもすまないと思っているし、感謝もしている。最後にあかねが本当のあかねを取り戻してくれたのは、君のお陰だ。それが見られただけでも私たちは幸福だった。だが、君にこれ以上、重荷をいつまでも背負わせたくはない……』

 早雲が、いつになく疲れ切った顔で、良牙にメッセージを送っていた。これまで、あまり良牙と話した事はなかったのだが、だからこそ、遠ざけるようにそう言っているのかもしれない。無関係な少年を巻き込むのは申し訳が立たないと思っているのだ。
 早雲は、立派な大人だ。──一人の親として、良牙の親にも顔向けが出来ないような状況にはしたくなかったに違いない。第一、良牙の親にまで同じ思いを背負わせるのは、彼の人格からすれば耐え難い話である。
 だからこそ、強がるように、良牙に告げたのだろう。

『私は、こう見えても、かつて辛く厳しい修行に耐えた武闘家だ。自分のピンチは必ず、自分で脱して見せる。それに、私の妻の置き土産は、これ以上失わせはしない。──君が来ずとも、私たちは戦いぬく。……だから、君は来なくていい。どこかで休んでいてくれ』

 隈のできた目で、こちらを見つめる早雲と目が合った気がした。精悍な顔でそう言う彼だが、いくら何でも、今の彼に、このピンチを脱する余力があるとは思えなかった。
 良牙は、目を逸らし、握った両手を震わせていた。
 彼を見守る者たちはその手の震えを見逃さなかった。

『──まあ、こうは言うが、彼ら三人はこの通り、拘束されている。響良牙くん、君が来ない限り、全員の処刑は確定だよ。……まあ、君に情けがあるのならば、いつものように迷子にならない事だ。私たちは、一週間後までは、ここで待っているからね』

 カンナギがそう言う映像が流れると、映像はまた何度かインターバルを置いて、また同じ物を最初から流し始めた。見ていなかった部分に、これといった新味はない。良牙の目に入るよう、何度も何度も放送されるのだろう。


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