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変身ロワイアルその6

498虹と太陽の丘(前編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:36:19 ID:didGUWPE0

「ここなら追っ手は来ないが……こんな所にいる場合ではない! さっさと行かねえと」

 富士山の麓(青木ヶ原樹海ともいう)まで追ってくる者は、流石にいなかった。もっと前に撒いているとはいえ、流石にこんな所は管理の守備範囲外だ。
 既に二百人余りの追っ手を倒している良牙だが、彼にはその戦闘による疲れは殆どない。
 ……とはいえ、そうして雑魚をどれだけ撃退した所で、全く意味はなかった。
 良牙が倒すべきは、この世界を支配している存在──ベリアル帝国の根本だ。一刻も早くこの惨状を打開しなければならないとは、良牙も思っている。
 流石に、いつまでもこんな世界ではいられない。

「……そうだ、帰ったら、あの妖怪ばばあに新しい技を教えてもらおう……! たとえそれがどんな地獄の特訓でも、俺は──」

 ふと、良牙は思いついて、そう思った。
 シャンプーの祖母で、良牙にかつて爆砕点穴を教えた、あの拳法の達人のババア──コロンならば、ベリアルを倒す為の有効な策も教えてくれるかもしれない。
 度々、怪しげな道具を貸して人を操ったり騒動を起こしたりもしてくれる人だ。
 何度も言うが、それにはまず、天道道場まで帰らなければ──

「──誰が妖怪ばばあじゃ」

 ──と思ったのだが、その妖怪ばばあの声が良牙の背後で聞こえた。
 良牙が振り返ると、そこには、杖一つを地面に突きたて、そこに乗っかる形で良牙を見ている蛇の干物のような顔の醜い老婆の姿があった。
 それは、確かに良牙の知るコロンその人である。

「なんであんたがここにいる!? はっ……まさか、ここは猫飯店の近くか!? ……ああ、良かった、東京にこんなデカい山があって」
「ここは静岡じゃ!」
「……静岡!? おれはいつの間にか東京の隣に来てしまっていたのか……」

 良牙と土地の話をしていても仕方がない事に気づき、コロンは諦める。
 少なくとも、静岡は東京の隣ではないはずだが、まあ概ね、比較的近い所にはあるはずだ。いつものように、沖縄やら北海道やらまで行かれるよりはずっとマシだろう。
 気を取り直し、コロンは口を開いた。

「しかし、まさか、あの映像を見た時は、お前が生き残るとは思っておらんかったわ。婿殿やシャンプーがいる中でなぁ……」
「……」
「でもまあ、お前にも色々あったからなぁ」

 コロンもまた、映像であの殺し合いをしっかりと見ていた。その上でも、少なくとも、管理の影響下にはないようで、今のところ良牙に仇なしてくる様子はない。
 婿殿──即ち、乱馬や、シャンプーの事を彼女が口にするたびに、良牙は心が痛んだ。この妖怪のような老婆にも、その名前を告げる時は、感情の浮き沈みが口から洩れてしまうのを察知する事ができたからだ。

「すまない……シャンプーの事は」
「──シャンプーの事はもういい。お前が気に病む事でもないじゃろ」

 台詞だけは平然としていた。
 ……コロンたち、中国の女傑族には、元々、死と隣り合わせの掟がいくつも存在する。その為、あれだけ可愛がっていた孫の話とはいえ、彼女はその死を覚悟していたし、それを受け止める心も持っているはずだ。
 ただ、彼女としても、欲を言えば、シャンプーにもあと百年ばかりだけ、生きていて欲しかったとは心のどこかで思わずにいられなかったのだが、その気持ちは良牙の前では封じておいた。

「で、ばあさん、なんであんたがここにいるんだ?」
「わしだけじゃないぞ?」

 そう言って、コロンは近くの木に目配せする。
 そこには、コロンやシャンプーと同じ中国のとある村出身のある男が、凭れて腕を組んでいる姿があった。

「よう、良牙。久々じゃな」

 白い服と黒髪の身長の高い美男子。普段つけている丸い眼鏡を外したその整った顔は──中国から乱馬を倒しに来た刺客・ムースである。
 彼も良牙と同じ呪泉郷出身であり、水を被るとアヒルに体質を持っている。それで、良牙とも何度か共闘した事があった。
 あの殺し合いの最中も、良牙はあるアヒルをムースと勘違いしたのを、ふと思い出した。


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