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変身ロワイアルその6

497虹と太陽の丘(前編) ◆gry038wOvE:2015/07/31(金) 03:35:56 ID:didGUWPE0
 そう。──早乙女乱馬と再会し、天道あかねと出会ったのも、この場所だ。
 良牙は少しだけ、その時の事を回想した。

「……」

 体には疲れもある。
 それでも、歩く。
 このすぐ近く、天道道場まで……。







 それから一日が経過した。
 良牙は、日本一高い山・富士山の麓にいた。

「ここはどこだ……前にも見たな、あの山……富士山だか筑波山だか忘れたが……まあいいか。とにかく、あの上から見れば、もしかしたらあかねさんの家が見えるかもしれないな」

 ──あの殺し合いで一日半歩いた距離の何倍もの距離を、この一日、歩き、辿り着いたのがこの昼間でも暗い森である。

 結局、風林館高校から天道道場までのたかだか数百メートルの道のりを彼は迷ってしまったらしい。
 今のところ、なんと一日で二百キロも歩いているのだが、全く天道道場に辿り着く気配がない。
 彼も、その道の途中に小川とフェンスがあったのは覚えていたので、それを探して、それに沿うようにして歩いてきたのだが、とにかくフェンスらしき物を手当たり次第に探していたら、いつの間にかこんな樹海のような場所(というか、実際には樹海のような場所ではなく、樹海なのだが……)に来てしまったわけだ。

 そのうえ、ここまでの道の途中では、「管理」だとか何だとか言われ、だんだんとこの世界が支配されている事を知り、わけのわからない追っ手に追われ、それを撃退したり、道具もろくにないのに野宿したりしながら、丸一日を過ごした。
 中には、多少は骨のある奴もいたが、良牙はそれも五分以内には片づけていた。──はっきり言って、襲ってくるのは、良牙がエターナルに変身するレベルの相手ですらない。

 何が起きているのかと思えば、「良牙を捕まえればどうのこうの〜」というくだらないゲームがここでも続いていたらしいのだ。
 あのバトルロワイアルの全ての映像は監視されており、今度は「生還者狩り」と来た。
 いくら何でも、そこまでやるとは良牙も思っていなかったのだが、奴らは本当に良牙の手に余るほどの敵らしい──それをこの一日で再確認する。
 良牙の動向については、一時追っ手に撮影され、町中を浮いている巨大モニターでこの全国(あるいは全世界)に実況中継されていたのだが、逆に良牙を追う者が減るくらいに追っ手を叩きのめし続けたほどだ。良牙も、あれで困る事はなく、むしろ、ああして目立つ事が出来て、他の連中と会いやすくなったとポジティブに考えている。

 まあ、それは良いとして──そんな妨害のせいで(妨害のせいではないが、良牙はそう思った)一日経っても結局天道道場に辿り着いていないのは痛かった。

(お父さん……いや、おじさん……)

 彼が思ったのは、自らの父の事ではなく、天道あかねの父である天道早雲の事であった。
 天道家の人々はこの世界で、あのモニターから発される“殺し合いの映像”を見てしまったのだろうか──、と、良牙はそれだけがずっと気がかりだった。
 あのおじさんは大丈夫だろうか。今も気に病んではいないだろうか。きっと、ここしばらくは寝込んでいてもおかしくないのではないかと思う。
 やはり、あの殺し合いは全て現実で、この世界に乱馬やあかねはもういない事を、良牙は一日歩き回って、はっきりと認識した。

 伝えなければならない事は、当人たちには勝手に伝わってしまっている──だが、それでも、やはり良牙は行かなければならないのだ。
 天道家の人たちに、良牙は謝らなければならない。

 ──天道あかねを救えなかった事を。

 それから、あそこに住んでいる乱馬の父や母にも、シャンプーの祖父やムースにも、あのジジイ(故・八宝斎)にも、とにかく……あそこにいる人たちには会っておきたい。
 それに比べれば個人的な事だが──良牙は、また、あかりちゃんに会いたかった。


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