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変身ロワイアルその6

489時(いま)を越えろ! ◆gry038wOvE:2015/07/27(月) 03:44:00 ID:OupDhxSw0
 暁と一緒にヴィヴィオを助けに行った時の仲間、レイジングハート・エクセリオン。

「──ッ!」

 全員を思い出した瞬間、暁の中で、何かが醒めた。

(あいつらを裏切れっていうのかよ……ッ!)

 その中で暁が裏切れる人間は──ドウコク以外にいない。
 いや、しかし、仮にドウコクを裏切るとして、隙をついて殺すなんていう方法は絶対に無理だ。

 かつては、軽い理由で殺し合いに乗ろうとしたが、なんだかんだと、暁は自分がそんな事のできるタイプの人間ではないと気づき始めていた。
 このシャンゼリオンの力を平和の為に利用してやろうなんて青臭い事は思っていないが、同時に、その力で人間を傷つけるような真似も──涼村暁にはできないのだ。

『──諦めるな!』

 何て事なく聞き流していた孤門の言葉が暁の中に蘇る。
 ふと、この絶望的な世界を前に、その言葉が再生されたのである。

(────そうだよ……何やってんだ、俺ーっ!)

 暁は、崩れ落ちたような状態から、力を尽くし、再び立ち上がった。
 そして、目の前で「燦然」しようとしている暁の姿を目に焼き付けた。

(この俺を見習えよ、俺っ! 俺はまだ諦めてないのに、俺が諦めるのかよ!?)

 ──この目の前にいる涼村暁は、こんな絶望の中でもダークザイドに立ち向かおうとしている。
 だが、この暁は、今、自分の世界が壊れる恐怖に震え、本当の敵に立ち向かうのを諦めようとしていた。
 確かに暁は、長続きせず、根気もない男であったが──それでも、本当の敵を見誤るのは、涼村暁の生き方ではない。

「──おい、ニードルッ!!」

 目の前の敵の名を、暁は、裏返った声で叫んだ。
 そして、ふてぶてしく笑い、彼の顔面を見つめた。
 そんな暁の姿を見た時、ニードルは、彼がようやくベリアル帝国に忠誠を誓う決意をしたと思って、更にニヤリと嗤ったのだが、それは全くの勘違いであったといえよう。

「さっきっから聞いてれば──あんた、ぐだぐだ何を言ってるんだよ……!」

 ──彼は、敵を見つめる瞳で笑っていたのだ。
 ニードルに返される言葉は、全く予想外で、ニードルの顔を曇らせた。

「──考えてみな? ……この俺が、たとえ死んだってあんたらみたいな暗い男に従うかっての! 俺は、あんたみたいな気に入らない人間の言いなりなんかにはならないの!」

 そうだ。暁は、野良犬のような男だ。
 会社勤めなど、絶対にありえない。誰かの下で働く事など、天地がひっくり返ってもありえない事だ。
 自由気ままに生き、自分で自分のやりたい事をやる。
 たとえ、そのために誰が犠牲になり、誰が悲惨な人生を歩んでも、暁は構わず、我が道を往く。──今は、自分のポリシーの為に、自分と自分の世界が消えるとしても、その犠牲を払って進む覚悟を持ってニードルを睨んでいたのだ。

「……橘朱美がどうなってもいいんですか? あなたは少なからず、想ってるはずですが」

 ニードルは、再度、冷やかな言葉で釘を刺した。
 暁に最も効果的な言葉だと思ったからだが、今度は、その言葉が暁に突き刺さる事はなかった。──そう、ここから先は永遠に。

「ああ……! でもな。……でも、それでも……たとえ朱美の為でも、そのために、別の仲間を騙して殺すなんてのは、この俺のプライドに賭けても、絶対にやっちゃならない事だ! たとえその為に世界が滅んでも、俺はお前たちを絶対に潰すッ!!」

 ──これは、暁自身のプライドに賭けての挑戦だ。
 既に覚悟は決まっている。たとえ、自分の世界中の人間が、消滅の果てに自分を恨んだって、暁はその追求から逃げおおせて見せる。


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