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変身ロワイアルその6

488時(いま)を越えろ! ◆gry038wOvE:2015/07/27(月) 03:43:46 ID:OupDhxSw0
 だが、言われずともわかっていた事だ。──そして、あまりにも窮屈な選択肢しかない事まで、暁は既に理解している。
 ベリアルに歯向かう事は勿論、暁の他、暁の世界の人間たち全ての死に直結するかもしれない。──だから、その道を選ぶ事はできないのだ。

「一つ目と二つ目の選択肢を選んだ場合、あなた自身も、橘朱美も、住んでいる世界と共に消えますよ?」

 ニードルが、釘を刺すように言う。眼鏡の奥の歪んだ顔つきが憎かった。

「──……くっ!」

 しかし、暁の脳裏に、橘朱美の笑顔が浮かんだ。
 つい先ほど、酔った暁を介抱してくてたあの秘書だ。──暁は彼女に辛く当たる事もあったが、それでも、他のたくさんの女の子よりも、彼女を想う心があった。朱美も、なんだかんだ言いつつ、暁を献身的に支えてくれる良い秘書だった。
 それは、友達として、相棒としても、あらゆる意味でも──どうあれ少なからず、確かにあった感情である。
 朱美の存在まで嘘だとは思いたくない。

「……嘘だろ? な? ニードル……あんたもわかってるよな? こっちの世界が夢なんだよ。見ろよ、時が止まってる世界なんて……そんなの出鱈目に決まってる」

 いや、いっそ、この悪夢のような世界こそが夢でなくてどうするのだろう。
 暁のいた世界は楽しかった。──それが現実でなければ、暁は嫌だ。
 ここに広がっている人類の最期が真実であるなど、認めてはならなかった。
 きっと、この絶望の世界に住んでいた暁もそうだったのだろう。
 それは、暁の真実への最後の抵抗であったが、あえなくニードルに打ちのめされる事になった。

「やれやれ。懲りないですね。これは私たちが、あの実験の為に止めているんですよ。──この人間の脳内世界から人間を具体化し、殺し合いに招いたら更なるエネルギーが回収できると考えました。そして、結果は大成功でした」

 暁は、それを聞いて、ついに力を失い、落胆してへたり込んだ。
 実験……その為に、自分は、こうして──。
 しかし、それを咎める気にはならなかった。暁の頭の中は、それどころじゃない。
 ニードルの性格への恨みつらみよりも、今はただ、自分の世界がこのまま滅んでしまう事への──ひたすらな抵抗が優先された。
 認めたくなかった、自分の存在のアンバランスを暁は受け入れなければならないのだろうか。

「じゃあ……本当に──そこの男が、“そこにいる俺”が望んだ、“俺たちの生きる世界”は、このままだと消えちまうってのかよ……ッ!!! 本当に……本当に……ッ!!」

 泣き叫ぶような怒号で、暁は誰にも見られたくないような顔でニードルに縋ろうとする。
 ニードルの足を掴もうとしたが、暁の手は彼の足をすり抜けてしまう。
 ニードルが幻なのか、暁が夢なのか──それは明らかだった。
 暁自身が、この世界では肉体を保つ事ができないのだ。──そうでなければ、夢と現実が同居している事になってしまうから。

「──ええ。だから、この世界の為に協力してくれますね? ……まあ、まずは、仲間と合流して貰って、彼らの隙をついて一人でも殺してくれれば、それであなたを仲間と認めましょう。その後、しばらく我々に従えば、あとはあなたの世界は永遠を保つ事が出来る……」

 ニードルが、邪悪な笑みとともに、暁を見下ろしていた。
 暁はその表情を見上げ、今のニードルの言葉を噛みしめる。

「仲間……」

 仲間──それは、おそらく、あの殺し合いを共に生き残った“彼ら”の事だ。

 ゴハットが生かしてくれた女の子、高町ヴィヴィオ。
 暁と同じ探偵で一緒に暗号を解いた、左翔太郎。
 物騒な武器を持った怪物、血祭ドウコク。
 敬語で喋る、ラブと比較しておっぱいが小さめな女の子、花咲つぼみ。
 逆におっぱいが大きい、巴マミ。
 ちょっと口が悪く年上の暁にもタメ口を利く、佐倉杏子。
 頭にバンダナを巻くというオタクみたいな事をしている男、響良牙。
 中学生とは思えないあのスタイルが良い女の子、蒼乃美希。
 気弱に見えるが実は熱い真面目野郎、孤門一輝。
 暁と同じ苗字で甘い物が好きで女好きな少し気の合う男、涼邑零。


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