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変身ロワイアルその6

481時(いま)を越えろ! ◆gry038wOvE:2015/07/27(月) 03:41:19 ID:OupDhxSw0

 ここまで急性アルコール中毒で死ななかったのが不思議なくらいだが、彼はそういう死因で死ぬ人間ではなさそうだ。
 とはいえ、酒でフラフラになった暁は、そのまま、壁に背中をくっつけ、するすると流れるように座り込んでしまう。

「朱美ぃ……折角だ、今からお前も俺と一緒に遊びに行くか? どこがいい? 水族館か? 遊園地か? 金ならあるからどこでもいいぞ。好きな物食べさせてやる」

 それは一層、彼の無理を感じさせる言葉だった。
 暁は自分自身でも、今日、これ以上遊べない事は理解しているはずだというのに。
 流石に、朱美も呆れながらも心配したように言った。

「遊べる状態じゃないでしょ、暁。今日はもう大人しくしてなさい。今日は一日、一緒にいてあげるから……」

 そんな朱美の言葉が聞こえたが、その直後にはもう、暁は大きないびきを掻いて眠っていた。



 そうだ……こんな楽しい日常がずっと続けばいい。
 またずっと、自分はこうして……楽しい日常にいられる。

 あんな悲しい事は、全部忘れて……。
 また楽しい一日を始めたい……。

 今は、ただ、この長い眠りに就いて……。
 嫌な事は、全部忘れる……この一時の休息だけが……。



 ────涼村暁は、夢を見る。







 暁は、夢を見ていた。──とても変な夢だ。
 それまでも、この「変な夢」を見る事は度々あった気がするが、いつも起き上がる頃には全部忘れていた。
 しかし、今、こうして振り返ると、いつも見ていたそれは、夢というには、あまりにも整合性のとれた物語であったように思う。
 今の暁は、これまでの夢を思い出し、そんな不自然さを覚えていた。

 人間の夢というのは、本来なら支離滅裂の物であるはずだ。人間は、映画の「アンダルシアの犬」のような、思い返すと不可解で、支離滅裂で、ナンセンスな夢を見る事で、脳内の情報を整理する。
 だが、暁が見ている“それ”は、もしかすれば現実を見ているのではないかと思うほどに、整った一つの物語を形成していた。
 人間の心理的に、それはどう考えてもおかしい話だったのだが、暁がたまに見る──そして、今も見ている──変な夢だけは、かなり丁寧に一から十まで、ある男の視点で構成された、別の人間の現実の人生を覗いているような夢だったのである。

 更に、暁の夢は、時折、連続性を保っていた。
 一度、暁の夢の中で死んだ者が、次にまたその夢の続きを見る時にちゃんと死んでいたり、壊れた街は次に夢を見る時も壊れたままであったりする。
 暁の見る中でも、良い夢にはこれがない。女の子と遊んでいる夢にも、おなかいっぱい食べる夢にも、死んだ人間が出てくる夢にも、こんな連続性はなかった。それらはいつも支離滅裂で、ナンセンスな光景も映し出す。
 だが、たまに見て忘れる、その「変な夢」だけが、ある連続性を保つのだ。

 そして、今日に限っては、これまで見てきたその全ての夢が一斉に、暁の脳裏に雪崩れ込んできた。

『──僕たちは……不死身のS.A.I.D.O.Cです!』

 その夢の中の暁は、何かと戦っている。
 確かにシャンゼリオンではあるが、現実の暁と違い、真面目に戦っていた。
 これが、いつも見る夢の内容だった。


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