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変身ロワイアルその6

479時(いま)を越えろ! ◆gry038wOvE:2015/07/27(月) 03:40:31 ID:OupDhxSw0



「「「「ケーキ!! ケーキ!! まあるいケーキはだ・あ・れ〜?」」」」

「「「「フゥゥゥゥゥゥーーーーーッ!!!!!!」」」」

 懐かしき涼村探偵事務所に帰って来た涼村暁。
 彼は、銀行からの借金によって事務所に呼んできた無数のコンパニオンをとともに、そんな、なんかよくわからない歌を歌っていた。
 事務所の机にはドデかく丸いホールケーキがあり、それをみんなで食べている真っ最中なのである。──これは、そのケーキを食べる為の余興のゲームだった。
 ルールもさっぱりわからないが、とにかくこんな歌と共に今回の物語は始まる。

 ……今日に至るまでの三日間、涼村暁はとにかく、今まで以上に遊び通した。
 あの殺し合いの半端ないストレスの山々を、今はこうして他人の名義での借金をぱーっと使い、とにかく豪遊しまくる事で発散していたのである。
 酒を浴びるほど飲み、僅か三日の間で百人近くの女の子と遊び、思いつく限りの高い料理を全て一口ずつ食べて「口に合わない」と返し、このビルの向こうのビルのそのまた向こうから苦情が来るほど歌を歌いまくって、全てを忘れようとしていた。
 もはや後ろを向いても仕方がないと思ったのだ。──確かに、彼の場合も、帰って最初の一日は、彼もとにかく落ち込み、ほむらやラブを喪った悲しみがどっと押し寄せ、彼をふさぎこませていたのだが、そこから先は違った。
 彼はこうして大量のコンパニオンを呼んで遊びまくる事でどこかに忘れようと思い立ったのだ。
 今のこの探偵事務所のこの惨状は、彼なりの逃避だった。

(マジで、いつまでもくよくよしてらんないよな♪)

 ……どうせこの外の世界の人間は、シャンゼリオンの事も殺し合いの事も何も知らないのだ。
 暁はそれらを全く朱美たちに伝えず、自分自身も全部忘れていく事で、普段の日常に一刻も早く戻ろうと努めていた。

 ──今は、とにかくあんな事を振り返るよりも、前を向いて生きようと。
 その方がずっといい。あの石堀ももう倒されてしまったし、ここから先の話はもう暁には関係ないように思えた。自分に出来る事は、死んだ奴らの分まで楽しく明るく生きる事。
 そう。じゃないと、人生が損だ。
 これからまた、殺し合いに関わるなんていうのは絶対に御免だが、こうして帰った場所に暁のいつもの日常があれば、それ以上する事なんてもうないのである。
 だから、全て忘れて前向きに生きられる頭を持つのが一番の正解に決まっている。

「ケーキは愛(←コンパニオンの女性の源氏名です)〜?」
「ち〜が〜う〜!! 私はピーチ!! 丸いケーキは燃・え・る!! ケーキはフォムラ(←コンパニオンの女性の源氏名です、どっかの国の人)?」

 ……と思ったのだが、実のところ、三日経っても、全然戻れていないのが暁だった。
 呼んできたコンパニオンの名前が、無意識の内にあの殺し合いで出会った人間の名前に限りなく近い物を選んでいたように思う。
 少なくとも、それを想起させる名前を集めた覚えは全くないのだが、今、暁は自分の周りの人間がほぼ、どこかで聞いた名前なのを感じていた。──見渡す限り、「愛」だとか、「穂村」だとか、「凪」だとか、そんな名前ばっかりである。
 見れば、名前が違っていたとしても、ツインテールだったり、黒髪ロングだったりする傾向もあるようだ。

(まあいっか……)

 それに気づいたが、呼んじゃったものは仕方ない。
 とにかく、時間まで遊びまくるしかないだろう。ここにいる女の子を暗い気分にして返してしまうのも自分の主義に反する。
 そんな感じで、また笑顔で、ノリノリで遊び出す暁。

「NONONO!! ワタシはオーマイゴッド!! マアルイ・ケーキはニンジャ!!」

 フォムラなる外国人少女はルールがよくわかっていないらしく、支離滅裂な事を言い出している。──いや、正直、実のところは誰もこのゲームのルールがわかってないのだが、どうしてか、いつの間にか、こんな謎のゲームが始まり、続いていた。


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