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変身ロワイアルその6

471あたしの、いくつものアヤマチ ◆gry038wOvE:2015/07/26(日) 18:18:37 ID:2QeaXfr60
 そして、意を決して、杏子と白には彼のもとへと歩いていき、屈んで声をかけた。周囲がざわめき始めるが、ドブライにはもはや攻撃の意思などなかった。
 二人が、言う。

「──ドブライ。あんたも罪を償えば、いいじゃないか。今日までじゃなくて、今から全て償えばいいんじゃないのか……? あたしたちだってみんな、そうしてきたんだ……。人は何度でもやり直せるって、あたしたちもみんな、誰かに教えてもらってきたんだ」
「そうだ……今からでもいい。ドブライ、お前たちはこの地球で共に暮らし、その中で共に罪を償えばいいんだ。……この宇宙を愛してきたお前ならきっと、この地球も愛してくれるはずだ。共に手を取り合い、この地球を再興させよう、ドブライ」

 そんな二人の姿を、ドブライは、ろくに動かない体で眺め続ける。
 彼らが何を言っているのか、ドブライには少しわかりかねた。
 杏子はドブライたちが開いた殺し合いに巻き込まれ、その中で多くの物を喪ってきた。
 城二はドブライたちとの長い戦いで父を喪い、心や体をすり減らしてきたはずだ。
 その全てを簡単に許す事などできないはずだが──現実に、杏子と城二の二人は、その手段をドブライに向けようとしている。

「……南城二、佐倉杏子……。この私を許すつもりか……?」
「ああ。あたしの友達なら、きっとそうする。……そして、あたしもあんたが立ち直って、ここにいる地球の人たちと手を取り合って生きるのを見たいと思ってる」
「これ以上、俺たちが憎み合っても意味はない……。俺たちの敵はベリアルだ!」

 しかし、そんな杏子と城二の厚意に、ドブライは一度、目を瞑った。
 何故、彼らを苦しめたのか──それが今のドブライにはわからない。
 サウラーの言った事と同じく、「対話」が足りていなかったのかもしれない。お互いにしっかりと話し合えば、ドブライも地球人の良い所にもっと早くに気づく事ができたのは間違いないのだ。
 彼らに手を差し伸べたいところだが、ドブライは、その時、自分の身体のある異変に気づいていた。

「いや……折角の厚意だが……無理だな……、……私の命は……ベリアルに管理されている……。どうやら……それが、遂に、尽きる時が……来たようだ……。すまない……こんな過ちの為に……君たちの……大事な物を、犠牲に……」

 更に、ドブライの身体から、ぷすぷすと、煙が上がっていく。
 それは明らかに、テッカマンや魔導師たちの攻撃による物ではなかった。──なぜなら、今この瞬間から、突如として、ドブライの身体に炎が灯ったからだ。

「ぐっ……!」
「何──!?」

 ぼわっ、と、音が鳴り、その直後にドブライの身体が一斉に業火に包まれた。
 城二と杏子が、咄嗟にドブライの後ろに下がる。

「……杏子よ。君のソウルジェムが……光が……きっとまた、輝く時が来る……その光で、ベリアルを、きっと倒してくれ……」

 体を燃やしながらも、ドブライは最後に杏子に言葉を伝えようとした。
 彼を葬ろうとしているのは他ならぬベリアルだが──そんな彼に何もしてやれないのが、杏子には心苦しかったのだ。
 真っ赤な炎が、そこにいる全員の瞳に映る。

「────スペースナイツよ……! 私の仲間とともに……この地球を……立て直せ……! 花を咲かせるんだ……この地球に……、過ちを繰り返させるな……ッ!」

 そして、城二にもまた、ドブライの最期を目に焼き付けていた。
 和解の道が開きかけていたドブライを無残にも焼き払ったベリアル。──城二の心の中に、怒りの炎が燃え上がる。
 この奇妙な宇宙人の遺体は、直後に完全に燃え尽きてしまった。
 ベリアルのこの処刑には、もはや水や魔法は無意味で、ドブライには死の運命しかなかったようである。

「きっと、ドブライも自分たちの安住の地を長く探してきたんだ……だから、その終わりが欲しかったんだろう。その心をベリアルに付け込まれた」

 アンドローが、少し渇いた口ぶりで言った。この男も、こう見えて熱血漢だ。内心で炎が燃えているのは間違いない。
 そして、城二もそんなアンドローの方を見つめた。

「彼も、終わりのない旅に、終わりを告げたかったのか……! 俺たちと同じに!」


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