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変身ロワイアルその6
470
:
あたしの、いくつものアヤマチ
◆gry038wOvE
:2015/07/26(日) 18:18:18 ID:2QeaXfr60
ドブライの顔色が変わる。
そして、──キュゥべえがそこから告げるのは、確かに一切の感情を排した生物の突きつける冷徹な事実であった。
「おかしいとは思っていたんだ。君たちの宇宙には、意思があるなんてね。──宇宙は、あくまで僕たちの居住地であって、生命体じゃないはずなんだ。どうして、君たちの宇宙に限って、意識なんていう物があるのかと思っていたけど、ようやくその意味がわかった」
キュゥべえは、あれからずっと、ドブライについて考えていたようである。
そして、その思案の果てに、ドブライについて、彼はこう結論した。
「結論から言うよ。君が感じたもの……それは、おそらく──宇宙の意思なんかじゃなくて、ベリアルの声さ」
そう──ドブライは、「宇宙の意思」を感じていたわけではないという事である。
その事実が、ドブライの脳に衝撃を与えた。
「なん、だと……?」
驚いているのは、ドブライだけではなかった。
彼のもとに集まっている、杏子やヴィヴィオ、城二やアンドロー、ウエスターやサウラー、ヴォルケンリッターやナンバーズ……果ては、ワルダスターのメンバーまでもが、その事実に驚愕する。
先ほどのドブライの言葉は全て嘘だったというのだろうか。
「君がワルダスターを結成する前から、ベリアルは君たちに目をつけていたんだろうね。そして、ベリアルに利用されてしまった。──君は、感情に縛られすぎているんだよ。宇宙があんなに感情的なはずないからね。あれは、他ならぬ君自身の憎しみなんじゃないかな。本当に君たちの感情って余計だよね。だから、こんな間の抜けた失敗で宇宙に住む他の生物に迷惑をかけるんだ」
そして、更に無慈悲な事実を、キュゥべえは突きつける。
彼には感情がないから、ドブライへの配慮などまるで行わない。
たとえそれがどんな事実であれ、躊躇う事なく全てを告げていくのだ。
過ちを犯した者への救済を、キュゥべえは一切考えない。
「実際には、ベリアルの暴挙は、このまま宇宙の寿命を縮める一方だよ。──それには、僕たちも迷惑しているんだ」
杏子たち全員が知っていた事実と、ドブライの主張との決定的な矛盾がそこだった。
何故、宇宙の寿命が縮まっているのに──宇宙の意思が、それを手助けしようとするのか。
そう思い続けていたが、ドブライは誤解を植えられ、利用されていたに過ぎないのだ。
──これまでのテッカマンとワルダスターの長い戦いすべての答えだった。
何の為の戦いをしてきたのか、と思うのはドブライだけではない。スペーツナイツも、地球人も、ワルダスターも、いずれも同じだった。
「ならば、私のしてきた事は……」
「全部、独りよがりの勝手な思い込みだよ。宇宙の意思だなんて思い上がりも良いところだね。どうしてそう思ったのかな? ちょっとびっくりしちゃったよ」
その瞬間、ドブライの中の何かが崩れていく。
自らが重ねた途方もない数の罪が、全て──正義の為ではなく、無意味なジェノサイドに変わり果てていく。
ならば、正しいのは、あれほど憎んでいたテッカマンの方だった──という事だ。
「……なんという、事だ……。私のしてきた事は……全て……私は何のために、今日まで……」
愛する宇宙を自らが穢していた事に気づいたドブライは、落胆し、力を失っていった。
自分は、全て、ベリアルに利用されていたにすぎなかったのだろうか。──母星と宇宙を想う感情が、ベリアルに目を突けられ、それを利用され、この世界のテッカマンの戦いを繰り広げさせていたというのだ。
全ては無駄どころか、世界にとってマイナスでしかなかったのである。
「ドブライ……」
そんなドブライを、テッカマンたちも少しずつ憐れみ始めていた。
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