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変身ロワイアルその6

468あたしの、いくつものアヤマチ ◆gry038wOvE:2015/07/26(日) 18:17:45 ID:2QeaXfr60

 だが、杏子は強い怒りを感じずにはいられなかった。たとえ、どんな目的があろうと──その過程で、あの殺し合いが開かれたのは事実だ。
 そして、杏子はそこにいる一人として、大事な物を喪っていく実感を強く覚えてきた人間だった。
 あの殺し合いの中で、大事な物が順番に一つずつ、消されていく事──そして、これから消されていくかもしれない恐怖に何度もぶち当たってきたのだ。その感覚は今も残っている。

「フェイトも、ユーノも、せつなも、姫矢も、ラブも、マミも、さやかも、まどかも、ほむらも……みんな良い奴だった、友達だったんだよ! なんで殺しちまったんだよ!!」

 あの殺し合いによって何かを奪われた多くの人たちの怒りと、自分自身の感情が、杏子の口からドブライに向けられる。
 あの殺し合いを開く必要は本当にあったのだろうか。──いや、あったとしても、そこに巻き込まれた杏子は、それを絶対に許さない。
 それがたとえ、世界の望んだ答えだとしても、彼女が許す事は絶対にない。

「みんな、折角友達になれたんだぞ……!? それが、あんたらのつまんねえゲームに巻き込まれて、みんな……みんな、いなくなっちまったんだ!!! 見てただろ、ヴィヴィオを……大事な物、あんたらに全部奪われちまった……!!」

 母を失い、友を喪ったヴィヴィオ。
 彼女は、杏子の隣で、ただ険しい顔でドブライの方を見つめている。

「──大事な物を理不尽に奪われる気持ち、あんたにはわかんねえのかよッ! 住む星がなくなっちまったってなら、わかるだろ……ッ!!!」

 ──しかし、そんな杏子の心の訴えは、ドブライには通らない。
 その声を耳に入れながらも、しかし、

「フン……殺し合いの生き残りか……!! 地球人のくせに小賢しいわッ!! 平和の為に犠牲はつきものだ!! 貴様も今すぐに、仲間のもとに送ってやろう……」

 ドブライは、ただ──無慈悲だった。
 それどころか、ベリアルの世界に侵入できる数少ない残存兵力がのうのうと前に出てきたと思い、ヴィヴィオもろともここで消し去るチャンスだとさえ思ったのだ。
 誰もが、呆気にとられて動きを止めていた最中、ドブライの眼球に、一瞬でエネルギーが充填されていく。
 そして、彼は叫んだ。

「──ボルテッカッ!!」

 ──杏子に向けて一直線に飛んでいくドブライのボルテッカ。
 地上にいる杏子に向けて、スターライトブレイカーさえも超える砲撃が発射される。

「──!?」

 杏子も一瞬、息を飲んで死を覚悟した。
 想像以上の威力と圧倒。──しかし、それに対して目を瞑る事はなかった。

「はぁっ!!」

 確かに、今、危機的状況に感じたが、その直前に、ボルテッカに反応できた者たちがいたのだ。
 杏子の目線の中でも、魔導師たちが杏子たちの前に駆け出して飛び上がり、ボルテッカを防御魔法で封殺する。この包囲網は杏子たちにとって充分安全らしい。──まあ、魔導師たちからすればかなり間一髪の手ごたえだったのだが。
 それと同時に、バリアのこちら側で杏子のもとにやって来た、一人のヴォルケンリッターは、激しく杏子を罵倒した。

「──あぶねえだろバカ!! 戦えない癖に出てくんな!!」

 ハンマーを持った全身赤い服の赤髪少女、ヴィータである。
 しかし、ヴィータはボルテッカのエネルギーに耐えきれず、杏子たちの方に吹っ飛んできた。──思い切り、杏子の元へとぶつかってくる。

「……ったく、中で待機してろっつってんのに、なんで出てくるんだよバカ野郎! あんたに今、死なれると、こっちが迷惑すんだよ!」


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