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変身ロワイアルその6

460あたしの、いくつものアヤマチ ◆gry038wOvE:2015/07/26(日) 18:15:22 ID:2QeaXfr60







 ──それから、またしばらく時間が経過し、城二やアンドローの仲間であるスペーツナイツも艦の修復に協力を申し出た。スペースナイツのメンバーも、この世界において管理の影響を受けなかったのである。
 杏子は、やはり技術がないので、やむなくアカルンを瞬に渡してから、今は、隼人、城二、アンドロー、ヴィヴィオ、レイジングハート、キュゥべえらとともに部屋で話を聞いている。
 砂漠の先を探検した所で意味がないと城二から聞いたのである。

「……つまるところ、あんたたちのいるラビリンスは、かつて実際にこれと同じ管理を受けたんだな」
「ああ。その時に全パラレルワールドを支配されたはずだが、それでもまだ繋がっていない世界が存在していたようでな。……今はベリアルがその世界を次々と繋げてしまったが」

 隼人の話は、まさしくこの「管理国家」に関する経験上の話題であった。異世界の城二やアンドローは、それを興味深く聞いている。
 杏子とヴィヴィオは、この状況をあのバトルロワイアル中で何度も行った情報交換と重ねた。異世界、別時間軸、そして、同行していなかった間の経緯などを簡潔に引きだすあの感覚にそっくりだった。

「おそらく……あの殺し合いもFUKOを収集し、シフォンを使って多くの人を絶望する為の手段だろう」

 管理のシステムの概略を言うと、「本来赤子の姿をしているインフィニティのメモリ──シフォンを使い、FUKOを集めて支配が完了する」という物だ。それにより、管理エネルギーは莫大になり、無数のパラレルワールドを支配する事に繋がっていく。
 推察するに、あの殺し合いによって世界中から莫大なFUKOを収集し、全パラレルワールドを支配しようとしているのがベリアルではないかという話である。FUKOの収集という手段は、絶望を直接エネルギーにしているインキュベーターのやり方にも似通っているように感じた。
 隼人が、そこから先を続ける。

「とにかく、俺たちはかつての管理のお陰で、管理に対する強い抵抗があった。俺たちの国の人間は多数が今の管理を受けていない。……そして、俺たち旧制ラビリンスの幹部は、自力で異世界に行く事が可能だったからな。なんとかこの艦に合流する事ができた」

 そこで、杏子は一つ突っ込んだ。

「その後で、ここでドーナツを作ってるってわけか。……なんで合流して、よりによって、料理班に来たんだよ?」
「かつて、プリキュアが管理を打ち破った時──俺たちは、『美味しい』という感情を得る事で、メビウスの支配を逃れたのだ。このドーナツがラビリンスを救ってくれたんだ……」
「なるほど……」

 旧制ラビリンスの住民は長らく、感情や味覚が抑圧されていた。
 地球人の持っている「文化」、「娯楽」といった物は一切理解できず、それまで食という行為はラビリンスの住民にとって生命を維持する為の物でしかなかったのである。
 しかし、地球人の持つ文明や文化から来る幸福に、イースやウエスターは次第に惹かれ、結果的に、ラビリンスの中で「美味しい」という感覚が──そして、自我が、生まれ始めたのである。それが管理を破る意志や力に変わっていったのだ。

「……だが! また、あの悪夢の支配が行われようとしている。意識と、未来と、命とが誰かに管理される最悪の時代が……! 俺たちは、手遅れになる前に世界中の人々から幸せを取り戻さなければならない! そして、せつなや、プリキュアたちの仇は絶対に取る! 杏子よ、俺たちもベリアルのところに行けないのは残念だが……せめて、俺の作ったドーナツを共に!」

 隼人のドーナツへの想いや拘りを知り、杏子は彼がここで何をしようとしていたのかをようやく理解する。それにしても、かつて悪の幹部だったとは思えない熱血漢だ。
 ややバカである事も含め、杏子はこの男を嫌いにはなれない。

「そういう事なら、遠慮なくこのドーナツも持って行く。……な? ヴィヴィオ」

 安心してドーナツを受け取り、──小腹が空いた分、杏子はとりあえずそれを少し食べた。
 ヴィヴィオも嬉しそうにそれを受け取る。レイジングハートは──それだけではまだ足りないとさえ思っているようだが──よく見ると、既に食べていた。
 隼人がそれを見て目をキラキラ輝かせて喜んでいる。


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