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変身ロワイアルその6
459
:
あたしの、いくつものアヤマチ
◆gry038wOvE
:2015/07/26(日) 18:14:55 ID:2QeaXfr60
「なな……なんだこの暑苦しい男っ!?」
杏子のもとに駆けた彼は、杏子の両肩に手を乗せた。
西隼人──名前だけは日本人だが、到底そうは見えなかった。一見、名前を無関係に聞こえる仇名を強要するあたり、更にわけがわからない。
この謎の男に肩を激しく揺らされ、杏子の身体は激しく前後に振れる。
そして、彼は、杏子の身体を直後に激しく抱きしめた。
「イースを……せつなをありがとぉぉぉぉぉっ!! プリキュアたちと一緒に頑張るお前には感動したぞぉぉぉっ!! そうだ、杏子! お前は俺のドーナツ食べてくれたか!? 食べてなきゃ食え!! いっぱいあるぞ!!!」
「ちょっ……せ、せつな……!? ド、ドーナツ!? あのドーナツ作ったのアンタか!?」
「──食べてくれたんだなぁぁぁぁっ!! どうだ!? 俺のドーナツ!? 美味かったか!?」
今、わかったのは、彼がドーナツの製作者であるという事実だけだ。
せつなの名前があったのは気になったが、それについては何も説明してくれないうえに、非常に暑苦しい。
──直後に、隼人の身体は別の誰かによって、さらっと引きはがされ、放り投げられる事になった。
それは、先ほど隼人をこちらに呼んだ、もう一人の長い髪の男だった。
「──えっと、佐倉杏子。今は、彼の事は無視して」
「誰だよ、あんた……」
「僕の名前は南瞬。隼人とせつながいたラビリンスのメンバーだ。今は隼人と二人で一緒にアースラに乗船してる。……で、実は、ちょっと君に一つ頼みたい事があるんだ」
こちらも、熱血漢の西隼人と、クールな南瞬というコンビであり、そのうち冷静な瞬による説明で、杏子も概ね彼らの素性がわかった。
城二とアンドローは黙って彼らの様子も見ていた。口が挟めない状態のようであるが、会話の内容は気にしているように見える。
ともかく、クロノがフェイトやユーノの旧知の仲であるように、彼らは東せつなやプリキュアの旧知の仲間であるという。
──つまるところ、ラブ、美希、祈里、せつな、ノーザとはいずれも知り合いだったようだ。
しかし、そうした彼女たちとの過去に関する話は一度置いておき、別件での依頼を杏子にしたいらしい。瞬は隼人に比べればまだ割り切れる部分がある。
「頼みたい事……?」
「ああ。あの場では制限を受けていたから知らないみたいだけど、君が持っているアカルンは、実はパラレルワールド間の移動の為に使えるんだ。アカルンの力を借りれば、この艦の修理はもっと早く済むし、完成時により早く時空移動ができるようになると思う」
彼が提案したのは、艦の修理に関する事だった。
そして、今の杏子の唯一の変身道具であるアカルンの手配を要求したのだ。
アカルンはこれまで、せつなの相棒として、そのワープ機能をふんだんに使ってあらゆる場面で役立ってきた。その中には、管理局の常識さえも超えた異世界渡航もある。──ラビリンスのメンバーが使うワープも同様に、管理局にとってオーバーテクノロジーだ。
「でも……それは良いけど、アカルンの状態は、大丈夫なのか?」
杏子は、持ち帰ったデイパックからアカルンを、ひとまず瞬に差し出した。
アカルンは、今はかなり疲弊した状態である。──杏子も、ピルン、キルン、アカルンの三体を保護しているが、いずれもそうだ。
果たして、アカルンは力を出し切れるのだろうか──その事がとても心配だった。
瞬は、そんなアカルンを両手で丁寧に受け取った。
「……アカルン。あの戦いでかなり傷ついているようだね」
「ああ」
「まずは、アカルンの状態を最優先にした上で作業を続ける事にする。それから、念のため、ピルンやキルンも僕に預けてくれないか?」
所持している二つのリンクルンからピルンやキルンを出す。妖精たちは頷いた。
アカルンのケアという意味でも、同じ出自の彼女たちの存在が必要だと瞬は考えたのだろう。──ピルンとキルンも理解している。
「……わかった」
とにかく、瞬と隼人を信用し、杏子はアカルンを彼らに預けた。
それから、城二とアンドローが杏子たちの説明で、アースラの事を知り、ワルダスターと戦う組織「スペーツナイツ」のメンバーをそこに合流させる事になった。
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