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変身ロワイアルその6
450
:
あたしの、世界中の友達
◆gry038wOvE
:2015/07/26(日) 18:09:16 ID:2QeaXfr60
「……っつーかそれ、持ってない奴はどうすればいいんだ?」
「そんな事、僕に言われたってわからないよ。今回は、性別や年齢の区別なく配布する予定だけど、それでもどうしても数には限りがある。ミラクルライトを持ってない人間は、心の中で応援すればいいんじゃないかな」(取扱注意事項3)
「そんなんでいいのか……」
相変わらず、何を言っているのか、そして自分でも何を質問しているのか──よくわからなかったが、杏子は納得する。
「ああ、そうか」
その後で、キュゥべえは、ふと何かに気づいたような表情になった。
自分の中でも、杏子との会話の隙に、何故杏子にミラクルライトの力が効かないのかを考察していたのである。
「なんで効かないのかと思ったら、ピンチの時にしか効果がないんだ。ピンチじゃない時は振らないようにしないとね」(取扱注意事項4)
「いや、そもそもあたしはプリキュアの力がなくなっちまったし……」
「なるほどね。あのアイテムが破壊されてしまった以上、君はもうプリキュアにはなれないんだ」
キュゥべえにも他意はなさそうだ、と、杏子は呆れつつも納得する。
とにかく、近くの人に向けて振り回すと危ない事や、あまり長くつけすぎると内蔵電池──もとい「ご加護」が減る事以外、この奇跡の対価はないらしい。
「……そうなると、杏子。プリキュアの力もウルトラマンの力も魔法少女の力もないとなると、君はこの先で問題にぶつかるかもしれない」
キュゥべえが、そう付け加える。
──と、同時に、安心しかけていた杏子の顔が強張った。
「──ちょっと待てよ。どういう事だ……? 魔法少女の力がないって」
「……やれやれ。君は自分の事もわからないのかい? レーテに君のソウルジェムが入った時、君は多くの絶望の力の介入によって、どうやら魔法少女に変身する力を失ってしまったみたいなんだ。肉体を維持したり、軽い魔法を使うくらいならできても戦闘はできないよ」
急に無性に腹が立つ言い方で返され、杏子は更にキュゥべえに対するストレスを覚えたが、殴るのはやめた。
それよか、納得しておく事こそ大人だと思い、相槌だけ打つ。
「ほんとかよ……」
「僕はこんな無意味な嘘はつかないよ。いま労っておかなければならない君に余計なストレスを与えるだけで、全く意味がないからね。でも、事実は事実だから予め伝えておくよ」
とっくに杏子にはキュゥべえに対するストレスがあったが、それはそれとして、わざわざ契約までした魔法少女の力がないというのは少々痛いという事実に気づく。
グリーフシードを得るには勿論、魔獣との戦闘が必要だし、ベリアルとの戦いに首を突っ込むなどという場合、間違いなくソウルジェムは穢れていく一方になってしまう。
それどころか、そもそも杏子は今、ただの人間の肉体しかない。──プリキュアでも、魔法少女でも、ウルトラマンでもないのだ。それで、行く意味があるのだろうか。
「まあ、君たちに賭けるしかないんだよ。その為には一応、全員駆りだしてそれぞれ何らかの形で頭を使いながら奮闘してもらうしかないかな。まったく、希望も何もないような状態だと思うけど、向こうに行ける人がいるだけまだマシっていう所かな」
なんだかんだと言っても、キュゥべえは杏子をそちらに向かわせたいようだ。
殺し合いの生還者でもあり、まどかが再構築する前の世界を知っている者でもあり、今の魔獣との戦いを知っている──そんな、ある種イレギュラーな立場の杏子を厄介に思っているのかもしれない。
この先で誰が死のうとも感情を動かさない点は変わらないだろう。
「とにかく、君たちに惜しみない協力をするのは本当さ。たとえば、もう一度契約したいと言えば、別のソウルジェムに移し替えて、君がより強い魔法少女になって戦えるように……」
「──それは、やめろ」
再度、険しい目つきで杏子はキュゥべえを睨んだ。もうこれ以上、余計な荷物を増やして体や心に負担をかけたくない。
──勿論、仲間にピンチが及ぶならば、杏子はまた遠慮なく契約してみせるかもしれない。
だが、それは……今じゃない。杏子がもし、美希やつぼみを契約させようとした時に止めるように、翔太郎たちが杏子の再契約を止めるだろう。
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