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変身ロワイアルその6
448
:
あたしの、世界中の友達
◆gry038wOvE
:2015/07/26(日) 18:08:00 ID:2QeaXfr60
「とにかく、君たちが早くカイザーベリアルを倒してくれるのが、僕たちにとっても一番都合が良いんだよ。その為には、僕たちは惜しみない支援をする。まあ、何でも言ってくれ」
「……そいつはどんな支援だ? まさか、美希やつぼみにまで魔法少女になれとか言うんじゃないだろうな」
杏子は、キュゥべえの言葉を捨て置けず、また眉を顰めて言い返した。
──こうして、キュゥべえに対して疑り深くなるのも無理はなかった。
これまで、何度キュゥべえに騙されてきた事か──その数はわからない。今度もそうではないとは限らない。いくら口で協力すると言ったところで、そこに裏がないとはまだ思えなかったのだ。
実際、キュゥべえは、ほとんど無感情にこう答えた。
「確かに。それもいいかもしれないね」
「──させねえぞ」
杏子は、目を吊り上げてキュゥべえを睨む。
魔法少女の力によって、プリキュアにはない特殊能力や武器が併用できる事になるが、その対価は大きく、いかに世界の危機とはいっても、安易に契約をさせてみせようとは思わなかった。
杏子は、強い口調で繰り返す。
「それだけは、させないッ!」
はっきり言って──杏子に大事なのは、世界よりもその世界の端っこに存在する友人の存在である。
勿論、今は世界も大事だ。しかし、その中にあの友人たちがいないならば、もう、世界などという物はいらない。そう思っている。
出来る事なら、これ以上巻き込む事さえさせたくないと思うくらいだ。
「……まあ、それでも構わないよ。魔法少女としての彼女たちの素養もよくわからないしね。どっちにしろ、その程度の力が加わった所で、焼け石に水さ。それに、僕たちは、異世界と繋がった事で、あらゆる便利な道具を得る事が出来たんだ。そうだね、ある意味、それは怪我の功名といえるかもしれない……たとえば、コレだよ」
そうして珍しく簡単に契約を取りやめにすると、キュゥべえは、何やらピンク色の小さなペンライトのような物を取りだした。
一見ファンシーなキュゥべえによく似合っているように見えて、その実態を知るとかなり似合っていないように見えてしまう物だ。
思わず杏子は、このペンライトも、黒いセールスマンとかが売る怪しいアイテムなのではないかと勘ぐってしまった。
とはいえ、どこか拍子抜けしているのも事実で、きょとんとした表情で訊き返した。
「なんだそれ?」
「いやぁ、本当に良い物を手に入れたよ。希望を絶望に転じるエネルギーでエントロピーを回収する方が簡単だったから、逆に絶望を希望に変える手段はこれまで効率が悪くて、不必要だったんだ。でも、他の世界にはその効率の良い手段があった。もしかしたら、ベリアルを倒した後、この道具を使えば、宇宙の寿命の問題を大分先延ばしにできるかもしれない」
「……だから、何だよそれ。ぐだぐだ喋ってないで要点を説明しろ」
だんだんとキュゥべえの長い説明に苛立ってきた杏子も堪忍袋の緒が切れる直前であった。いつも妙に理屈っぽく、杏子の肌にはあまり合わない。
元々、人間というのは二分以上の長い話を聞くには向かない生物なのだ。中でも杏子は一分で既に限度を感じる質の人間である。
そのあらゆる意味で張りつめられた空気を察してか、キュゥべえがそのアイテムの名を告げた。
「──これは、ミラクルライトさ!」
どこか誇らしげにキュゥべえはミラクルライトなる小さなライトを掲げる。
杏子は、唖然とした表情でそんな様子を見ていた。
「ミラクル、ライト……?」
──“ミラクル”つまり“奇跡”。随分と彼に似合わない言葉に感じる。
……いや、キュゥべえの事だ。何か言葉のロジックが入っている筈だ。やがて“魔女”になるから“魔法少女”だとかそういうロジックを入れて詐欺に引っかけようとしている可能性が否めない。
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