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変身ロワイアルその6

438Tomorrow Song ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:06:21 ID:RKdo8Dag0



 グラウンドには、数十人分の人影が揃っていた。

 一時間前、つぼみは自分の決断を家族や周囲に伝えなければならなかった。
 アースラにいる仲間たちが生きていた事、もう一度ベリアルを倒しに行くという事、そうしなければ前に進めないという事──だが、理解を得るのは難しい。

 もうプリキュアになれないが──それでも立ち向かうつぼみを、誰も止めないのか。
 そんなわけはない。
 結果、勿論、激しい反対を受けた。折角、愛娘が帰って来たのに、またどこか遠くへ旅立たさなければならないのだ。今度こそ死ぬかもしれない。いや、その可能性の方がずっと高い。何としてでも止めようとしていた。
 だが、そんなつぼみの決断を、尊重したのは、今、この人影の中心にいる薫子だった。

 彼女と共に説得し、やがて──この終わりのない逃亡生活を終わらせるという意味でも、前向きな意味で、ベリアルを倒すという事を説得して、納得させた。
 つぼみをここで囲ったところで、またいつか、昨日のような襲撃に遭う。このままでは、それを待つだけ──ただ、死ぬまでの時間をつぼみと長く過ごすという意味でしかなくなってしまう。
 そうではなく、ベリアルを倒す事で全て終わらせ、またきっと、この前のように一緒に過ごそうと──そういう意味で、つぼみは殺し合いの場に向かおうというのだ。

「……つぼみ。どうしても行くのね?」

 薫子と、つぼみの両親が心配そうにつぼみを見つめている。
 母に抱かれている赤子──ふたばだけは、自分たちの真上で太陽の光を阻んで影を作る巨大な物体に向けて無邪気に手を伸ばしていた。


 この世の物とは思えない、巨大な戦艦──アースラが、既にこの場にその姿を現していた。


 この世界の、この場所に、転送された来たのだ。つぼみを見つけ出したアースラは、その保護の為に彼女を呼ぶ。
 そこにいる仲間たちとの挨拶を待つくらいの時間は勿論あった。
 アースラの中には、また一緒に迎えてくれる、レイジングハートやヴィヴィオや翔太郎たちがいる。──彼らにまた会えた事は、つぼみにとって、少し嬉しい事でもあった。

「はい。今、一緒にベリアルを倒しに行けるのは私だけですから」

 つぼみ以外の人間も、確かにアースラに乗船する事はできる。
 しかし、それは却ってつぼみの決意を鈍らせる事になるだろう。
 たとえ一緒の場にいなくても、つぼみは一人じゃない。だから、安心して全てを任せて、遠くに旅立てる。

「大丈夫。私には、みなさんがくれた想いがあります。きっと……必ず帰ります」

 つぼみは、クラスメイトたちが自分を迎えてくれるのを見つめた。
 彼らから、つぼみに──一時間で書かれた寄せ書きが渡された。そこには、キュアブロッサムではなく、花咲つぼみとしての彼女へのメッセージがいくつも書かれている。
 卒業するまで一緒にいよう、と。
 その日を楽しみにしている仲間たちがここにいる。

「ふたば、お父さん、お母さん、おばあちゃん。だからまた……元気で会いましょう」

 つぼみは、ふたばの指先に触れ、言った。こんな家族たちが自分にはいる。──今の自分は一人のお姉さんだ。もっと大きくなったふたばと遊びたい。

 つぼみは、来海家や明堂院家の人々がそこに立っているのを見つめた。
 ももかは──両親と一緒にいる。コフレとポプリも、こちらに激励の合図を送っている。
 必ず帰ってこい、と彼女たちが目で訴えている。それは、亡くなってしまった自分の娘たちの為に──。

「みんなの心が希望を失わない限り、プリキュアは諦める事はありません。──私も、変身できなくても、心はプリキュアですから」

 たとえ変身できなくても──つぼみは、行かなければならない。
 アースラで待っている仲間がいる。ここにつぼみを迎えてくれる仲間がいる。
 一人じゃない。
 希望の道を切り開く為に、つぼみは──





「じゃあ、みなさん……行ってきます!!」





【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア! GAME Re;START】


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