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変身ロワイアルその6

437Tomorrow Song ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:06:04 ID:RKdo8Dag0

「絶対死んじゃ駄目よ。……えりかの分も、ゆりの分も、いつきちゃんの分も、ゆりの妹の分も……あなたが、あなたが、おばあちゃんになるまで生きなきゃ駄目よ」

 今更こんな事を言うと、掌を返している、と言われるかもしれない。
 だが、ももかは、真っ直ぐにつぼみの瞳を見つめて、気づけば激励した。それは、勢いから出た言葉ではなかったと思う。もし、今言えなかったら、またしばらくしてつぼみにそう声をかけたのかもしれない。
 家族を喪った者を代表して、彼女に言わなければならない言葉なのである。
 そんなももかの言葉に、つぼみは答えた。

「わかってます。──私も、今はふたばのお姉ちゃんですから」

 そう聞いて、ももかはどこか、安心していた。
 一人しかいない兄弟姉妹を喪うのは、誰にとっても辛い。だが、来海ももかにも、月影ゆりにも、月影なのはにも、明堂院さつきにも、この殺し合いの中で、そんな死別は訪れた。
 だから、ここでは──せめて、花咲ふたばと花咲つぼみの姉妹だけは、絶対に離れ離れにはさせてはならないのだ。

 そうだ──それが、ももかがここですべき事だったに違いない。
 ようやく、ももかは、自分が姉としてすべき事を悟った。
 自分が姉であるならば──ここにいる一人の姉の気持ちを理解し、守らなければならないのである。
 それに、今更……ようやく、気づいた。

「そろそろ行きます。……体育館で来海さんが待ってますから、後で顔を出してくださいね」

 その時、丁度、つぼみが立ち上がった。彼女は、そうすると、すぐにももかに背を向け、階段を下りて行ってしまう。
 何気なく言ったが、えりかとももかの両親の話をしてくれたのが、彼女には意外だった。
 それで、堪えきれず、ももかも思わず、立ち上がり、階段の下にいる彼女を見下ろし、呼んだ。

「ねえ、つぼみちゃん!」
「何ですか?」

 振り向き、ももかを見上げたつぼみに対して、彼女は言った。

「──えりかの一番の友達でいてくれて、ありがとう」







 ──翌朝。
 寝起きのつぼみに、オリヴィエが話した。

「つぼみ。美希はこの世界には帰って来ていなかった。……美希の家族にも訊いたけど、まだ帰っていなくて……それで、心配だって」

 オリヴィエは、前日の夜、クローバーストリートまで出ていたらしい。
 それを頼んだのは、他ならぬつぼみであった。彼女を見つけ出せれば、せめて、あの世界から帰った仲間たちを増やしていけると思ったのだ。
 オリヴィエは、確かにその往復で危険な目に遭う事はなかった。

「でも、一つだけ伝えなきゃならない事があるんだ」

 ──それは、彼がクローバーストリートで出会った、高町ヴィヴィオらの乗船するアースラからの情報であった。
 ヴィヴィオの生存は、つぼみも初めて知った意外な事実だ。
 彼女は、別の世界の生還者を探す為にこの世界を一時離脱したが、今日中に明堂学園のグラウンドに来るとの事であった。
 つぼみは、それを聞き、──そこからの事は、自分で決めた。






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