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変身ロワイアルその6

433Tomorrow Song ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:04:57 ID:RKdo8Dag0

「くっ……!」

 一方、ももかは、震える人差し指を引き金に向けて少し力を込めた。
 つぼみと無関係な彼女たちを撃つ事はできない。──だが、威嚇すれば、せめて、退いてくれるはずだと。
 当たらないように、一発でも撃ってみせようとしたのだが──それも、今は躊躇している。
 指先が動かない。
 言葉が出ない。
 何故、自分は彼女たちを撃とうとしているのか──その理由を、一瞬だけ忘れかけた。

「いたッ! 花咲つぼみだ!」
「他にも何人かいるぞ!!」
「殺害許可もある、やってしまえ!」

 しかし、その時、遂に財団Xたちもこの裏庭を見つけ出し、声が響いた。

 想いの外、早い──とももかは思った。早いというだけではなく、その言葉は、ももかの予想以上に物騒であった。
 とらえる事ではなく、殺す事が目的になっている。──勿論、捕えた後に処刑が行われるのは想定していたが、それでも。
 彼らは、マスカレイド・ドーパントへと変身し、人間には敵わない圧倒的な力でねじ伏せようとする。キュアブロッサムに変身してかかってくると予想しているからに違いない。

「まずい……っ!」

 戦慄する彼女たち──。

「──つぼみは絶対、私たちが守る!」

 マスカレイドたちが近づいて来る。
 銃に囲まれたというだけではなく、こうして怪人たちに命まで狙われている……。
 つぼみの周囲で、本来命を狙われていないはずの同級生たちも、もしかしたら巻き添えを食うのでは、と、ももかは恐怖した。

「──絶対!!」

 マスカレイドたちがこちらに手が届きそうな所まで近づいて来る。
 ももかの背中からやって来る、三体のマスカレイドの集団──。
 どうすればいい……。

「殺せーッ!」

 と、その叫びが聞こえた時。


「──駄目ぇぇっ!」


 咄嗟に、ももかの銃が、音と煙を立てる事になった。
 その銃口が向けられていたのは、つぼみたちの方ではなく、彼女の後ろから迫って来ていたマスカレイドたちの方だ。
 マスカレイドたちの動きが、一瞬だけ止まる。

 ──あくまで、突発的な事象である。
 マスカレイドが、つぼみたちを攻撃しようとする未来が見えた時、それに対する反発や不快感がももかの中に生まれた。だから、それより前にマスカレイドを撃退しようとしたのだ。
 やはり、人の命を奪うだけの踏ん切りは彼女にはつけられなかった。
 そのつもりであったが、つぼみの命を奪う事は、ももかにはどうあっても無理だ。ゆりも本当は、直前に戦いを経て、少し高揚した精神状態だからこそ、あんな風な事ができたのかもしれない。

「ももかさんっ!」

 女子高生の彼女には反動が大きく、後ろに大きく吹き飛ばす事になる。彼女の身体は、耐えきれずにつぼみたちの方へと倒れてくる。
 呆然としていたなおみを軽く押しのけて前に出て、つぼみはももかの肩を支えた。
 ──銃弾は、マスカレイドの方へと向かっていくが、それが掠め取る事さえもなく、全く見当はずれのところへ飛び去っていった。
 いずれにせよ、マスカレイドたちは銃弾の一発くらいなら何とか耐えられるドーパントだ。彼らは、ももかの銃撃に構わず、またつぼみのもとに向かって来ようとしていた。


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