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変身ロワイアルその6

430Tomorrow Song ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:04:00 ID:RKdo8Dag0

 更にそれからまたしばらく経ち、ゆりも結局、死亡した。
 その経緯を見届ける事が出来たのは、理由が知りたかったからだ。
 何故、そうなってしまったのか。──彼女は、本当に自分が知っているゆりなのか?
 そもそも。ゆりが殺し合いに乗る理由など、ももかは全く想定に入れていなかったし、どんな事があっても、えりかを傷つける真似は絶対にしないだろうと、当たり前に思っていた。

 理由を知る事になったのは、エターナルとの戦いの時だ。ショックは無論大きかったが、ももかは、泣きながらも、今度は学校に向かおうとした。
 両親と寄り添い合い、せめて悲しみを埋めたいと、このやり場のない怒りを嘆きたいと。……それを誰かが慰めてくれるだろうと、ももかは自分以外の誰かを求めた。
 一日目は、まだ学校が管理されていない者たちの秘密の基地になっている事は管理者側には発覚しておらず、包囲もなかった時なので、ももかも、そこにあっさり入っていく事が出来ると、思っていた。

「嘘……」

 しかし──結局、彼女は、“悪を拒む”このコッペの結界に、“拒まれて”しまった。

 その時、自分がそこに入れなかった衝撃と共に、「やはり」という、どこか納得した気持ちがあったのを覚えている。
 なぜなら、彼女は、正体不明の憎しみや怒り、途方もない絶望が自分の中で抑えられなくなっているのを自分で知っていたからだ。

 それだけではない。──明堂院いつきがもし、自分を呼ぶえりかに気づけば、もっと長くえりかは生きながらえただろう。だから、彼女の事も憎く感じた。そこにいるのが、自分だったなら、絶対に気づくはずなのに、と思った。
 それから、ダークプリキュアがえりかを気絶させなければ、えりかはゆりと出会う事はなく、もっと生き続けられただろうという事も考えた。
 あるいは、えりかを救いに来る事ができなかったつぼみも、他の参加者たちも。──そんな理不尽に、誰かを憎む気持ちが湧きでてきた。
 それを必死に抑えている一方で、何故か、どこか、加害者のゆりだけは憎み切れなかった。それが最大の理不尽であった。

 それはつまり、親友だったからというフィルターのお陰ではなく、ゆりも、ももかと同じく、「妹」を持つ「姉」であった事を知ったからだった。
 つい先ほど、えりかが喪われた時、ももかは、その存在の大きさを噛みしめたばかりだ。

 ゆりの場合、ももかと性質は違うが、目的には自分の妹を甦らせる事があった。そして、彼女は最終的に、ももかの「妹」を殺害し、やがて、自分自身の「妹」を庇って死ぬ事になったのだった。
 そんなゆりの運命に、どこか共感してしまった時、──彼女には、自分のゆりに対する感情が遂にわからなくなったのである。
 全ての根源である彼女を許し、全く関係ないつぼみやいつきに対する憎しみの方が強まるという不可解な心情は、彼女の中で纏めきれなかった。

 ──どうして、こんな酷い世界になってしまったのか。

 やり場のない怒りは、世界に向けられた。それしかなかった。
 もう、この結界に反発を受けるのは構わない。この憎しみが、悪ならば、どうしようもないに決まっている。
 ただ、せめて、自分がこんな気持ちになった発端である、あの殺し合いの全てを教えてほしい。──どうすれば、全てが元に戻るのか。
 そんな時に、学校には、自分と同じく、結界への反発を受ける小さな少年を目にする事になった。

「あれは……」

 彼は、そこにいた男の子は、ゆりの団地に住んでいた子供らしい。
 ゆりを慕っており、年上のゆりに好意を持っているというませた男の子──はやとくんであった。
 彼女もまた、その人の早すぎた死を受け入れきれず、泣いていた。

 ────世界は、元に戻らないのか。
 ────自分や、この子のような悲しみが続いていくのか。

 昔の小説のように、時を遡る事ができたら良いと思う。
 全てがやり直せたら、ももかは妹や親友の命を取り戻す事ができる。
 その為ならば、ももかは何でもできる。

 ……それは奇しくも、月影ゆりの願いに、かなり似通っていた。
 だからこそ、ゆりを恨む気持ちではなく、むしろ今、強く共感する想いがあるのかもしれない。


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