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変身ロワイアルその6

429Tomorrow Song ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:03:38 ID:RKdo8Dag0
 それは──二人で「友」「情」の二文字が書かれたTシャツを着て写真を撮るほどの親友・月影ゆりだった。ももかと普通に接する事ができる友人は彼女だけであり、ゆりにとってもももかは唯一無二の友人なのだ。

 彼女は、管理はされていなかった。少なくとも、服装は普段のファッションモデルらしい、お洒落なももかのままであるし、はっきりとした意思がある。
 服飾に拘りのある彼女があんな恰好をするわけもなく、相も変わらず、シンプルながら恰好のつく服を無作為に選んでいる。
 しかし、そこにいるのがいつものももかと同じだとは思っていなかった。

「えりかのお姉さん……?」

 薫子、ななみ、なおみ、としこ、るみこの五人も、息を飲んだ。
 銃を突きつけられたのが初めての者もここにはいたので、小さく悲鳴が漏れる。それを見て、ももかは少しだけ、嫌そうな表情をしていた。
 それが、微かに、ももかが本心から悪しき行動に走ろうとしているわけではないのを感じさせ、却ってそこにいる者を辛くさせた。

 この有名なファッションモデルが「えりかの姉」、という事は既に知っている。会った事もある。──だからこそ、何も言い返せない壁がある。
 彼女がどんな想いをしているのかは、ここにいる全員が一度想像し、考えるのが嫌になって辞めた物でもある。
 そして、彼女がこれまで現れなかった理由を何度も考えて、その度に更に恐ろしい想像をした。──不謹慎だが、生きていた事に驚いている者もいるかもしれない。だが、彼女は、自殺を選ぶ性格ではない。

「その銃……本物なんですか……? どうして──」

 つぼみは、おそるおそる訊いた。
 この日本で、一体どこで銃が調達できるのだろう。──だが、その銃口から感じる不思議な緊張感は、あの殺し合いに続いているような気がした。
 つぼみ以外は、誰も疑問を持っていないところを見ると、管理国家は、もしかすると数日で銃を流通させたのかもしれない。

 どうして、と訊いたのは迂闊だった。
 理由はわかりきっているではないか。

「──ええ。ごめんなさい。悪いけど、これが最後のチャンスなの」

 ももかは、指先を強張らせて、言った。







 来海ももかは、元々、この学校に、家族や町の人々と共に立てこもろうとしていた。えりかやゆりたちが殺し合いを行う──というアナウンスは、殺し合いの準備期間であった一週間前の時点で行われていた為である。
 各地では、既に反対するデモが起こっていたが、“管理”の力や武力によって全て鎮圧され、反対者は次々に黒い服に身を包み、意思をなくした。
 だから、直接交渉は無駄と考え、彼女たちはしばらく、黙って、反抗の機会を伺うしかなかったのである。

 その後、学校に立てこもる計画が来海家にも伝達されたが、その時、ももかは、両親を先に学校に行かせ、自分自身は殺し合いが始まるその瞬間まで、えりかの部屋で彼女の無事を祈る事にしていた。
 両親より、少し遅れて行こうと思っていた。

 開始早々に、自分の妹や親友がプリキュアであった事を知ったももかは、驚いた一方で、それで少し安心を覚えていた部分があった。
 えりかが気絶した際には心配もしたが、えりかとゆりが開始数時間後に合流した時には、ももかは、自分の祈りが届いたのだと思って、一人ではしゃぎ、喜んでいた。
 ……この時はまだ、甘い考えがあったのだろう。
 つぼみ、いつきも生きており、このまま行けば彼女たちが脱出するだろうと思っていた。
 いや、ハートキャッチプリキュアの敗北など彼女にとってはありえない事だった。
 どんな奇跡も起こしてくれるだろうと……。

 ──しかし、その直後に、えりかは、他ならぬ月影ゆりによって殺害され、ももかは絶句する事になった。


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