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変身ロワイアルその6

426HEART GOES ON ◆gry038wOvE:2015/07/21(火) 01:02:12 ID:RKdo8Dag0
 その言葉を聞いた刹那、つぼみの心には、落雷のような衝撃が落ちてきた。

 ──時間が止まる。

 プリキュアである限り、戦い続けなければ運命にある。そこから解放されるというのに、何故か、どうしてか……ショックを受けている自分がいた。
 彼女は、慌てて、ココロパフュームとプリキュアの種を探した。誰かが着替えさせている以上、どこかで誰かがこの近くのどこかに置いたのだ。
 周りを見回して探しているつぼみの前に、シプレが寄って来る。彼女が、探し物を持ってきてくれたらしい。

「つぼみ……ごめんなさいですぅ」

 確かに、シプレはプリキュアの種を、両手で抱えて持っていた。
 だが、シプレの持つプリキュアの種には、真ん中から真っ直ぐに亀裂が入っているのだった。それは、もはや壊れかけで、いつ崩れてもおかしくない砂の団子のようにさえ見えた。

「あっ……!」

 ピキッ、と。
 今、はっきり、そこから音が鳴った。
 そして、それは、次の瞬間、プリキュアの種は、彼女たち全員の目の前で砕けた。
 砕け散ったプリキュアの種が、つぼみの纏う白いベッドの上に落ちたのを、全員、ただ呆然と眺めていた。──「プリキュアになれない“かもしれない”」ではなくなった。

「私は……もう、プリキュアに……」

 このプリキュアの種とココロパフュームが、妖精たちと、来海えりかと、明堂院いつきと、月影ゆりと──そして、あのバトルロワイアルを共に乗り越えてきた仲間たちとの絆の証でもあったのだ。
 その後、しばらくして、沈黙の中、つぼみは震えた。
 今、ベリアルたちに命を狙われている──。そんな中でもつぼみを守り、彼女の心に安心を齎していたのもまた、自分自身の持つプリキュアの力だったのだ。

「わたし……わたし……」

 つぼみが、両手で肩を抱いて震えた。そんな彼女の震える腕を温めるように、クラスメイトたちが寄り添った。

「私……怖いです……!! もう、戦いたくなんかないのに……っ!! でも戦わなきゃいけなく……それでも……プリキュアになれないなんて……っ!!」

 ……初めて、キュアブロッサムとしての自分の心強さに気づいた時だった。自ずと涙が出た。ここから先の戦いを拒絶したい気持ちになった。
 プリキュアに守られていたのは、ここにいる人々ではなく、誰よりも“自分自身”であったのかもしれない、と、つぼみは思った。
 そして、その事を誰よりも知っている薫子が、流石に見かねて、──自分の立場さえも、捨て、一人の孫を持つ祖母として、告げた。

「つぼみ……でも、もし、怖かったら、もう戦わなくたっていいのよ。おばあちゃんが、ここにいるみんなが、きっと、あなたを守ってあげる……」

 それが、最強のプリキュアの弱さだった。
 それから、つぼみは何を返す事もなく、翌日まで、自分がこれからどうすべきなのか悩んだまま、そこで夜を明かす事になった。
 ファッション部の仲間は、家族のもとではなく、その夜だけはつぼみのもとで休んだ。
 夜には何度か、その家族たちが顔を出し、つぼみも少しずつ話したが、空元気の笑顔を返すばかりで、あまり良い時間を過ごせたとは言えなかった。






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