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変身ロワイアルその6
424
:
HEART GOES ON
◆gry038wOvE
:2015/07/21(火) 01:01:32 ID:RKdo8Dag0
体育館の隅で、自分たちが愛娘にそんな事をできなかった悲しみか、えりかの両親といつきの両親と兄が、今、こちらをちらりと一瞥した後、目を伏し、寄り添いあうようにして咽び泣いていた。
二つの家族は、ほとんど同じ反応を見せていた。
ゆりの母やえりかの姉の姿は──ここにはない。
自分の周りに人が寄ってくるたびに、つぼみは内心で少し暗くなった。両親が何かをつぼみに言い続けているが、それは涙声で聞き取れないし、何も考えられないつぼみの耳には入らなかった。
そうだ。
彼らも決して心から喜んでいるわけではない。
確かに、つぼみが生きて帰ってきた事は非常に喜ばしい事だと思っているが──、それでも、誰も本当の笑顔という物は見せていなかった。あくまで、今狙われている一人が生きていて、安心したような、ほっとしたような気持ちである。
──たとえ、つぼみは生きていても、この学校に通っていたえりか、いつき、ゆりの三人は死んでいる事は変わらないからだ。
そして、この世界の状況も何も変わらない。
この荒んだ世界の中、ただ一つだけマシな出来事が起きただけでしかないのだ。
「……お父さん、お母さん」
それでも。とにかく──えりかやいつきが両親を呼ぶ事が出来なかった現実があるにしても、今、つぼみは、どんな配慮も欠かして、そう返さざるを得なかった。
何か言い続けていた両親が、黙った。
二人の両親がたとえそれを見て、自分たちもそうであればと思い傷つくとしても、まずは目の前の二人と、自分自身の為だけに……そんな言葉を口にせざるを得なかった。
「ただいま……。心配かけて、ごめんなさ……」
そして、言いきる前に、つぼみは気を失い、倒れてしまった。
その時、えりかやいつきの家族も心配そうに、慌ててこちらに駆け寄ったのを目にする。
──自分の娘は死んでしまったが、それでも彼らが花咲の家に嫉妬を振りまく事はなく、ただ一身に、つぼみが自分の娘と同じ運命を辿らないよう、心から心配していたのだ。
◆
つぼみが目覚めると、夜がやって来ていたようだった。
誰かが運んだのか、つぼみは今、保健室のベッドの上である。起き上がると、保健室には、祖母の花咲薫子、鶴崎先生、それから主にファッション部の何人かの女子生徒と、保健室の先生──それから、シプレ、コフレ、ポプリだけがいる。
基本的に、妖精以外は男子禁制といった感じであった。
つぼみが目を覚ますと、女子生徒たちが少し落ち着きなく騒ぎ出したが、それを鶴崎と薫子が諌めた。
「おばあちゃん……シプレ……鶴崎先生……それに、みんなも……」
つぼみは今になって少し元気を取り戻していた。やや胃が凭れるような気持ち悪い感覚もあったが、こんな者はあの殺し合いで目を覚ます度に感じていた物である。ここしばらく、慣れきっていた。
気づけば、これまで使っていた服が体操服に着替えさせられている。男子禁制になっている理由はそれでわかった。
ただ、つぼみの髪を洗うまでをする事はなく、やっぱり頭部はまだ汗や土に塗れている。
「つぼみぃーっ! 良かったですぅ!」
「……シプレ」
つぼみの胸に飛びついて来たのは、小さな妖精だった。
このバトルロワイアルにおいて、つぼみと一緒に連れて来られる事がなかった妖精だ。
この妖精の名は、シプレ。──仲間の妖精に配慮したが、耐えられなかったのだろう。
「コフレ……ポプリ……」
──えりかのパートナーのコフレと、いつきのパートナーのポプリを目にした時の感覚は、先ほど、えりかの両親やいつきの両親の様子が目に映った時と同じだった。
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