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変身ロワイアルその6
422
:
HEART GOES ON
◆gry038wOvE
:2015/07/21(火) 01:00:56 ID:RKdo8Dag0
実際に校舎に立てこもる事になったこの二日間、比較的小柄な男子生徒が外に食料や備品を調達する為に使っていたが、彼らも片道で音をあげ、往復して帰らなければならない時には少し躊躇もしていた。
しかし、つぼみも、家族や知り合いに会いたければ他に道はない。
「……わかりました。ここを行きます」
……オリヴィエが折角作ってくれた抜け道だ。
たとえ環境が多少悪くとも、ここを通る事で家族や友達にまた会う事が出来る──そんな希望への道なのだ。
つぼみは、多少のデメリットを踏まえても、ここを通るべきであった。
「ただ……オリヴィエ。一つだけ良いですか?」
だが、この暗い道を通る前に、つぼみはオリヴィエに一つ言いたい事があった。オリヴィエが、なんとなく要件を察して、振り向いた。
「さっきから少し、険しい顔をしていますけど……やっぱり、男爵の事を考えていたんですか? だとすれば、私は言わなければならない事があります」
それはオリヴィエにとって、予想通りの質問だった。
オリヴィエは、元々サラマンダー男爵と共に旅をしている身だった。しかし、ある日、突然サラマンダー男爵は彼の前から姿を消し、再び目にした時には、管理世界のモニターで、殺し合いの放送を人々に向けて発していたのである。
……それを知ったオリヴィエのショックは並の物ではなかっただろう。
少し躊躇った後、オリヴィエは、自ずと湧き出る怒りを噛み殺そうとしながら言った。
「……ボクは、もう男爵はあんな事はしないと思ってた。でも、それは違ったんだ。父さんだと思って慕っていたのに……なのに……あんな人はもう、父さんなんかじゃない!」
だが、やはり、怒りは爆発した。
生まれた時から親のなかったオリヴィエに最初に出来た父親だったのだ──サラマンダー男爵は。
ずっと欲しがっていた父親であり、彼もまた、オリヴィエと一緒にいる時、だんだんと丸くなっていったと思っていた。確かにかつて、プリキュアと戦った事はあるが、もう誰かに牙を向ける事はないと、オリヴィエはずっと思っていた。
しかし、つぼみは、そんなオリヴィエを、少し落ち着いてから、諭した。
「──それは……違いますよ、オリヴィエ。この街は戦いの映像を中継していたのかもしれませんが……実は私は中継されていない所で、男爵に会って、本当の事を聞いたんです」
「え……?」
「……さやかを救いに行った時の事でした」
オリヴィエは意外そうにつぼみを見つめた。
確かに、つぼみは一時的にモニターでの中継ができない空間に引き込まれ、そこで何をしていたのかは明かされる事がなかった。
そこでつぼみはサラマンダー男爵と会っていたのだという。
「男爵は、私たちと同じく、巻き込まれたうちの一人でした。男爵はあなたの前から、自ら姿を消したのではなく、私たちと同じように、無理やり連れて来られたんです。そして、男爵は……オリヴィエ、あなたを守り、あなたとずっと暮らし続ける為に、意思と無関係に加担させられていただけなんです!」
それを知り、オリヴィエは、呆然とし、やがて項垂れた。
オリヴィエは、男爵をもう親だと思わないと──そう思う事にしていた。
しかし、現実には、まだ微かに、男爵への信頼が残っていたのかもしれない。
今、その微かな想いが強まっている。つぼみは、たとえ誰かの為でも平気で嘘をつけるような人間ではないと思っていたから、なおさらだった。
「そんな……」
「男爵がいなかったら、さやかを……一時的にでも救う事は出来なかったと思います! 私たちに協力して、私の命を助けてもくれました! だから……──もし、また会う事ができたら、ちゃんと向き合って、仲直りをするべきだと思います」
つぼみがそう言った時、オリヴィエの脳裏にある告知がフラッシュバックした。
そうだ……彼女は知らないのだ、とオリヴィエは思う。
それは、彼女の視点ではまだ知られていない話であった。
「そう、だったんだ……」
「ええ。だから、男爵を信じて、また会った時に仲直りしましょう!」
「……でも、つぼみ。それは無理だよ」
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