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変身ロワイアルその6

398RISING/仮面ライダーたちの世界 ◆gry038wOvE:2015/07/16(木) 02:32:17 ID:W9I5Hun20
 勿論、この賭けには負けるかもしれない。負ければ、この若い芽が失われ、ソウキチは一生後悔する事になる。
 しかし、彼の伝えた残りの情報を全て教え、背中を押してやるしかなかった。
 こんな覚悟を見せられてしまっては──。
 ソウキチは、口を開く。

「──奴は本当に通りすがっただけだが、時空管理局の『アースラ』という時空移動船がいずれ、この世界に迎えに来る。奴が手配してくれるらしい。……とにかく、今はここでそれを待て」

 ディケイドが、『アースラ』とのコネクトを持っていると聞き、翔太郎も少し驚いていた。翔太郎も、時空管理局の存在はユーノやヴィヴィオ、アインハルトといった魔導師の世界の住民から既に聞いている。
 本当にどこの世界にも知り合いのいる男だ。

 つまり、もう間もなく、この世界とは──ソウキチとは、お別れという事らしい。
 久々に会えたこの男と別れる事になるのは、翔太郎にとっても少し心が寂しくはある。
 ソウキチはどうだろうか、と少し思った。彼は寂しがるだろうか。──いや、そんなわけはないか。
 いや……、あるいは、もしかすれば……。
 ……まあ、いずれにせよ、この別れが永遠の別れとは限らない。また、今こうして再会できているように、また会う事があるかもしれない。そう思った。

「……それから、もう一つ伝言と、プレゼントもある。……奴も、多くの世界でお前やお前の仲間を探していたみたいだな」

 言って、ソウキチは、何枚もの写真を取りだした。
 ふと我に返って、翔太郎はそれを受け取る。

 見れば、ピントがずれており、人や物の位置関係が完全に狂っている合成写真のような写真だった。しかし、翔太郎は、士がそんな絶望的に下手な写真を、何の細工もなしに撮れてしまう男であったのを思い出した。──これは、彼が世界で撮り続けた写真という事である。
 何故、そんな物を今、渡したのだろう。……そう思って、翔太郎はちゃんと写真を見た。

「──仮面ライダーは戦い続けている、どの世界でも、どんな時代になっても……と。これが通りすがりの仮面ライダーからの伝言だ」

 その写真には、あらゆる世界で戦う仮面ライダーたちの姿や、よく見知った人たちの姿が映し出されていたのだった。







 とある仮面ライダーの世界。

 ──己の中に巨大な欲望を秘め、パンツの旗を片手に遠い国の砂漠を放浪する男がいた。

 男は両手いっぱいに抱え込んだある強い欲望を、いつか実現する為に日々を生きている。
 たとえば、そう……かつて、平和になった未来で必ず会うと約束した友が、彼にはいた。その友との再会が、今の彼の持つ巨大な欲望の内の一つだ。
 そして、この数日に関しては、この支配をひっくり返し、この世界を自由にするのもまた、彼の器の中にある巨大な欲望の一つであった──。

 彼の迷い込んだ砂漠には、この絶対的支配に逆らおうとしている信徒たちがいる。
 ベリアルの管理に屈する事は、彼らの信仰に反する事であり、それに反乱して彼らは大声で管理への反対を訴え、叫んでいる。それに対してのベリアル傘下の人間たちは、この世界に現れた怪物たちの模造品をけしかける事で、反乱分子を黙らせようとしていた。

 ヤミー。──人間の欲望から生まれる怪物たち。既に世界にはいないはずの存在だが、財団Xがそのコピーを作りだしたらしい。
 人間たちにとって、その異形の怪物は脅威であり、信徒たちも恐れおののいて退こうとする。まだ立ち向かおうとする信心の深い者もいる。
 そんな彼らの命を守りたい──それもまた、彼の一つの強い欲だ。人はどこまでも欲する生き物だが、彼は常に誰かの為の欲を持ち続けていた。
 楽をして助かる命はこの世にはない。──欲望を叶えるには、それ相応の覚悟と努力が必要になる。
 だから。

「──あいつが待ってるこの世界を、お前たちに支配させるわけにはいかないな」


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