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変身ロワイアルその6

396RISING/仮面ライダーたちの世界 ◆gry038wOvE:2015/07/16(木) 02:31:39 ID:W9I5Hun20
 何にせよ、翔太郎には、それはまだ苦く、一度カップを皿の上に置いた。

「……」

 バトル・ロワイアルの映像全てが記録され、同時に中継されていたなど、殺し合いの渦中にあった翔太郎には想像もつかない事実だった。

 あの島から脱出さえすれば全てが終わるような気がしていた。しかし、実際は、そこから先の方が途方もない戦いに繋がっていた。
 翔太郎は、自分の肉体的、精神的な疲労度が半端な物ではないのを自覚している。ここに帰るなり倒れて、十四時間も寝ていた事からもわかる。勤務時間が安定せず、何日も徹夜で張りこむのが珍しくない探偵が、こんなに眠り続けてしまう事など滅多にない話である。翌日からは、今度はあまり眠れない日々が続いた。
 意外にも、三日間、悪夢は見ていない。ただ……。
 現実に映る光景の方は、まさに悪夢のようだった。


 ──相羽ミユキッ! 逃げろ!

 ──ありが、とう……心配して、くれて……やっぱり、君を信じて……本当に、よかった……!

 ──……ははは、久しぶりだな、……死ぬのは……あと、もう少し、……もう少しだけこの音を聞きたかったが……はははははは……


 ……翔太郎があのゲーム中、目にする事のなかった仲間たちの死に様が、街頭モニターのせいで目に入った。照井がどうして死んだのか詳しく知らなかった翔太郎にとっては、ちゃんと知れた事は良かった事かもしれないが、思いの外、堪えた。
 編集映像は、その死に様のみを中心に中継していたが、おそらく意図して挿入されていた「杏子とフェイトとの殺し合いへの共同戦線」を示した映像も、翔太郎の胸をぐっと締め付けた。──この時の杏子は、まだ翔太郎を殺そうとしていたのだ、と。
 忘れかけていた事実である。とはいえ、もうそれは過去の事だ。水に流したいとも思っている。そうでなければ──翔太郎くらいは忘れてしまわなければ、杏子が可哀想だ。
 彼女自身は絶対にその事を忘れないだろうから、翔太郎も安心して彼女の罪を忘れる事ができると思っていた。しかし、それをモニターが妨害する。

 それからまた、翔太郎の頭に照井の死に様がリフレインした。照井の死が無念の死であった事や、やはりユーノやフェイトの死の責任は自分にある事──今の自分なら彼らを救えたのに──は、翔太郎の心に再び傷を負わせてしまう。
 ループしていく映像に頭を抱えていた時、ソウキチが声をかけた。

「エス」

 彼は、ここしばらく、翔太郎を「エス」という偽名で呼ぶ事にしていた。
 翔太郎の名前が割れているので、あまり名前を呼ばないようにしているのだ。隠れ家の中でも徹底してそうしている。もしかすると、自分を翔太郎が慕う別の男だと思わせないよう、あえて、少し距離を置いているのかもしれない。
 ソウキチは、呼んですぐに、翔太郎が留守にしていた間の事を話した。

「ついさっき、お前の知り合いから連絡が来た」
「俺の知り合い?」

 知り合い、というと、決して少なくはないが、この世界には、別に知り合いはいない。
 風都の中でも、イレギュラーズや翔太郎周りの協力者が殆どいないようだ。ソウキチに協力している情報屋も、翔太郎に協力している情報屋とは違った。
 だとすると、一体誰だろうか。

「あらゆる世界を放浪している仮面ライダーだ。前にも会った事がある。……通りすがりの仮面ライダー、とか言っていたな」
「ああ、アイツか……」

 思い当たる知り合いといえば、門矢士──仮面ライダーディケイドである。
 彼ならば、確かにこの世界の人間ではないが、この世界に来る事が出来るはずである。何せ、かつてソウキチに一度会ったのも、彼の力添えがあってこそであったからだ。
 どうせなら顔を合わせたかったのだが、今はこの世界情勢である為に彼も忙しく、他の場所に連絡を入れなければならないのだろう。

 ……彼でも、あの変身ロワイアルの島には来る事ができなかったのだろうか。とにかく、最後まで助けに来る事はなかったのだが、こうして、外の管理世界を旅して、何らかの形でヒーローに協力している事はあるようだった。
 そんな彼は翔太郎の留守中に、ソウキチに連絡をしに来ていたらしい。


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