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変身ロワイアルその6

395RISING/仮面ライダーたちの世界 ◆gry038wOvE:2015/07/16(木) 02:31:22 ID:W9I5Hun20

 カンナギは、どこか愉快そうに、そう命令する。
 ──これが、あの殺し合いの最低の仕組みを物語っていた。
 確かに、あの離島から脱出し、翔太郎たちは晴れて自由の身になったのだが、それは安全の保障を約束したというわけではなかった。今度は生還者を元の世界で殺害しようというのである。

 なんと卑怯な約束だろう。
 普通は殺し合いが終わったらそれで全てハッピーエンドではないか? 生き残った者には安心が与えられ、すべては終わるのではないか?
 ──その“先”で、生還者を殺そうなどとは、少し主催者としてフェアではないのではないか? と。

 しかし、彼らの“フェア”という常識は通用しない。常に、ルールを破る者が世界で優位になっている。──最低の仕組み。
 目的が殺し合いそのものではなく、それを中継する事で得られる絶望や悲しみである事を知ると、やはり、生還者も生かしてはおけないのだろう。その為ならば、手段を厭わないようだ。

「何人がかりでも構いません。庇う者は殺しても罪には問いません。ただ、彼らを見つけた場合、速やかに我々に連絡するか、撃退できる場合は撃退してください。尚、彼らを捕えた者には、幹部待遇と生活保障などの優遇が成され、──」

 参加者同士の殺し合いの後は、生還者を追い詰める鬼ごっこを始めようという話である。
 管理されてしまった人間は、半ば盲目的にこれを信じるだろうし、翔太郎を追いかけるに違いない。
 財団Xの手の物だけではなく、この街中──いや、あらゆる異世界を含めた全パラレルワールドの人間が全て、翔太郎たちと敵対すると思っていいだろう。

(だが、暁……三日ともあいつの名前は呼ばれていないな。……何故なんだ?)

 しかし──、涼村暁の名前が呼ばれなかったのは気がかりであった。
 孤門一輝が既に人形に封印されて宇宙空間を彷徨っている事や、巴マミがレーテから帰還しないままだった事は既に、変身ロワイアルを再編集した映像を見て(今のカンナギのアナウンスと共に、一日中モニターで流れている)知っていたが、暁は共に生還したはずではないだろうか……。
 まさか、既に捕えられてしまっているのだろうか? ──だとすれば、逆を言えばこの美日間、暁以外誰も捕まっていないという事なのだが、不安の種は尽きない。






 それから、翔太郎は、ソウキチの作った隠れ家に戻り、一息ついていた。風都内には、彼の「幼馴染」が用意している隠れ家が幾つも存在するらしく、ここも裏路地のマンホールを模した出入り口と繋がっている。
 鳴海探偵事務所の数倍すっきりとしているが、相変わらずコーヒーメーカーや幾つかの帽子が目につく。あとは、質素で黴の生えた生活用具やトレーニング器具などがあるだけで、ソウキチの趣味に関わる物が思いのほか、少ない。
 この一室にも、カビ臭さと共に、コーヒー豆の匂いが充満していた。ソウキチは、上着を脱いで、淡々とコーヒーを淹れている。

「疲れたろ、飲め」

 ソウキチが、すっと、翔太郎にコーヒーを差し出した。砂糖やミルクのような不純物は横に置かれていない。この状況下、ソウキチは自分のブレンドしたコーヒーを淹れるその習慣だけは欠かさないようだった。それによって落ち着きを保っている。
 冷静沈着な男であった。三日とも、少なくとも一杯のコーヒーを翔太郎に差し出す。毎回、それは翔太郎の中に心労がある時だった。

「ああ、ありがとう、おやっさん」
「おやっさんじゃない。確かに俺は異世界のお前の師匠かもしれないが……俺は違う。ソウキチでいい」
「……っつっても、全く同じ顔だから、おやっさんとしか呼べねえよ」

 そう悪態をつくように返しながら、コーヒーに口をつける翔太郎であった。三日間毎日こんなやり取りをしているが、これからも呼称を変える予定はない。この世界のソウキチが元の世界の壮吉とそう変わらない事は翔太郎もこの三日間で理解している。
 ただ、コーヒーの味は、どうやら現在実験中の物らしく、翔太郎が飲んだ事のある懐かしい味とは少しばかり趣向が違っていた。もしかすると、物資に限りがあるせいで、譲れない拘りが実現できなくなっているのかもしれない。


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