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変身ロワイアルその6
371
:
崩壊─ゲームオーバー─(10)
◆gry038wOvE
:2015/07/12(日) 13:59:52 ID:OT9PV3kg0
マミがおそるおそる、自らの手の中にある杏子のソウルジェムを覗くと、そこには、レーテの内部に蓄積された恐怖のエネルギーが外部から杏子のソウルジェムを侵そうとして、ソウルジェムを濁らせていく姿があった。
真っ赤な宝石の中に、周囲の暗い闇が、今も確かに侵入している。
ここまでの戦いでは、こんなにまで濁らなかったはずだ。本当に間もなく、ソウルジェムは完全に濁り切ってしまう。
『マミさん、杏子ちゃんを渡して』
だから、まどかは言った。──まだ、杏子のソウルジェムは濁ってはいないが、このままでは彼女が魔女化の条件を満たしてしまう事は、時間の問題であると言える。
その条件を満たした時、彼女たちは魔女化を防ぐと同時に、未知の世界に連れて行ってしまう。
だが──
「諦めるな!」
──マミはそれを拒否した。
「──いいえ、絶対に渡さないわ。私たちには、佐倉さんが必要なの。彼女はこんなところで死ぬべきじゃない……だから、絶対に守ってみせる!」
諦めない。
最後まで、杏子の命を諦めるわけにはいかない。
マミのその意志は、頑なだった。
まどか、さやか、ほむらの三人が何を囁いたとしても、杏子は渡せない。
杏子のソウルジェムを守るマミの目に、眩しい光が広がっていった。思わず、マミも微かにその瞳を閉ざそうとしてしまうほど、朝日のように眩しい光が……。
「光……」
──そうだ、光がある。
蒼乃美希と、孤門一輝の間で発動したウルトラマンの光が、レーテの闇を少しずつ飲み込んでいるのだ。あれが、恐怖と絶望の想いが封じ込められたマイナスエネルギーを正反対の力に返還している。
ソウルジェムを穢しているのは、この周囲の異常なマイナスエネルギーだ。──では、この闇の中で二人が作りだしたプラスエネルギーの中で、もしかすれば浄化される事があるのではないか。
──保証はない。一か、八かだ。
しかし、マミの中には、今、他の術はなかった。
あの光がソウルジェムを、マミはまだ光源には果てしなく遠い所にいる。あそこまでソウルジェムを運ぶ事はできない。見上げるほど遠い所だ。投げて届くだろうか。途中で彼女たちが妨害するかもしれない。
様々な気持ちが、マミを一瞬だけ躊躇させる。
それでも──、孤門たちを、そして、自分を──信じ、祈る。
「────コネクト!!」
マミは、その光に向けて杏子のソウルジェムを投げた。──マミの手から遠ざかっていく、杏子のソウルジェムは、確かに収束していこうとする光に近づいていった。
遠く、マミの視界でこの光の中で消えていく杏子のソウルジェム。──マミは、まどかは、さやかは、ほむらは、それを見上げていた。
外の世界に≪コネクト≫しようとする世界へ、──。
「届いて……っ!」
真っ赤なそれが、光と重なって、可視できなくなってしまう。
光は閉ざされていく。
光が収束して、孤門と美希の身体が、レーテの外に帰っていくのであった。
その光はマミにとっても出口に違いなかったが、ああして杏子がこの中を彷徨ってしまっていれば、彼女は本当に、永久にこの闇の中に閉ざされてしまったのだ。
そして、杏子のソウルジェムが、孤門と美希たちのもとで元の世界に導かれる。
──杏子のソウルジェムの濁りが本当に消えたのかは確認できなかった。
『……それでいいんだよ、マミさん……わかってた、杏子ちゃんを救ってくれるって』
──まどかは言った。
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