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変身ロワイアルその6

367崩壊─ゲームオーバー─(10) ◆gry038wOvE:2015/07/12(日) 13:58:37 ID:OT9PV3kg0
 そうだ──。

「駄目だ……闇に飲み込まれたら駄目だ……ッ!!」

 自分もかつて、闇に飲み込まれそうになった事はある。──しかし、人間にはそれを乗り越える力がある。
 誰にだって、──孤門にも、美希にも。
 だから、彼は、美希に声をかける。

「君の優しさが、僕たちを支えてくれた……!」

 美希は孤門に優しさをくれた。
 ここにいた仲間たちの優しさが、孤門を支えてきた。
 挫けそうになった事がないと言ったら嘘になる。何度だってあった。何度も、この殺し合いの中で死を覚悟し、諦めそうになった時だってあった。
 しかし、美希たちが見せる優しさが、──いつでも誰かを労わり、誰かを助けようとする気持ちが、孤門に希望をくれた。
 孤門も優しくしてくれた。

「君の強さが、僕たちを勇気づけてくれた……!」

 孤門は、美希たちの強さに何度も助けられた。
 それは、ただのパワーの強さじゃない。
 前向きで、ただ真っ直ぐに、自分に負けない完璧な強さが彼女たちにはあった。
 孤門を助けてきた強さが、絆が──ここにある。

「憎しみは乗り越えられる……! 人はどんな絶望の淵に囚われても、そこからきっと抜け出せる……!」

 声は絶対に美希に届いている。
 何か、強い闇の力が、美希の意識の中で、それを拒もうとしているのだ。
 それを振り払う方法は一つ。

「君は独りで戦ってるわけじゃない……!」

 ────孤門が、もっと大きな声で叫ぶだけだ。








「──────諦めるなァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!」






 ───諦めるな。

 時を越え、世界を越え、深い恐怖の闇の障壁も超えて、その声が彼女に聞こえた時──、美希の瞼が自然と開いた。
 その言葉が胸に響くのを拒むようにしていた何かが、一瞬で晴れたのだ。
 美希の心が、その言葉に反応した。


「……孤門、さん……」


 ──帰りたい。

 そうだ……彼らとともに戦いたい。
 たとえ、ラブも祈里もせつなも杏子もいない、絶望に満ちた世界だとしても──。

 まだ、私にはたくさんの仲間がいる。
 まだ、私には叶えたい夢がある。
 まだ、私には待ってくれている人がいる。

 ──こんな所にいるべきじゃない。
 ──みんなで一緒に生きて帰りたい。

「────くっ!!」」

 目を覚ました美希は、手を伸ばそうとした。
 孤門に縋る為に。彼に支えてもらう為に。──彼と、彼らと支え合う為に。


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