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変身ロワイアルその6

364崩壊─ゲームオーバー─(10) ◆gry038wOvE:2015/07/12(日) 13:57:39 ID:OT9PV3kg0

(────そうだ、きっと……お前さえ帰ってくれば……俺たちの魂と、絆に勝てる者なんて、誰もいないさ)

 一也の最期の時、見上げている者たちは、強い後悔をしていた。
 ──飛び込んだのが自分だったならば、一也は……。
 だが、もしそれが他の誰かだったなら──誰よりも強い後悔を胸に秘める事になったのは、きっと沖一也だっただろう。
 誰よりも生き、誰よりも戦ってきた自分が真っ先に飛び込み、後の者に託せばいい。



 ……きっと、これが正解だ。



【沖一也@仮面ライダーSPIRITS 死亡】
【残り12人】







 キュアパイン──巴マミの頭上で、沖一也の命が終わった。
 彼の身体は粉々に吹き飛び、仮面ライダーの生きざまは──人間の自由と平和を守り、人間の未来を夢見た男の生きざまは、途絶えたのだ。
 彼がマミにかけた言葉が、ふと彼女の中で蘇った。

 ──君たちも、自分の信じる大切なものの為に戦ってくれ

 一也はきっと、それに殉じたのだ。
 そう、沖一也は……仮面ライダースーパー1は、命さえ賭けられる何かを信じて戦った。
 それが何なのかは、マミは知っている。

(……私が信じる、大切なもの────)

 しかし、マミにとっては何だろう。
 ここにある桃園ラブの遺体。
 ソウルジェムが深い闇の中に沈められた佐倉杏子。 
 消えてしまった孤門一輝や蒼乃美希。
 マミが回収しているが、弱っているアカルン。
 ……マミにとって、この場で、最も大切なものは次々と消えていってしまった。

「諦めるな」

 ──え?
 俯こうとしていたその時、マミの中に、誰かの声が聞こえた。

「諦めるな──!」

 ──孤門さん?
 忘却の海レーテの中に取りこまれたはずの孤門の声が、何故か確かに、マミの耳に聞こえた。これは、頭の中だけで聞こえた声じゃない。

 しかし。
 その言葉の意味を噛みしめた時、それが何故聞こえたか、などどうでもいい事のように思えたのだ。

(……私が守りたいもの……私が信じる大切なもの……)

 自分は、何故ここにいるのかを思い出した。
 かつて、自分がどうしようもない絶望の淵──事故で死にかけていた時に、自分自身が諦めなかったから。
 かつて、自分がソウルジェムの力を使いきって倒れた時──仲間たちが諦めなかったから。

 そうだ。マミも、まだ諦めてはならない。
 蒼乃美希も、佐倉杏子も、決して死んではいない。あの闇の中にいる。
 だから、孤門一輝は迷わずにあそこに飛び込んでいった。彼は諦めなかったのだ。


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