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変身ロワイアルその6
31
:
切札
◆gry038wOvE
:2014/08/07(木) 12:02:33 ID:V1L9C12Q0
一也が翔太郎の悲鳴に申し訳なく思いながらも、力任せにその凶暴な刃を台に向けて押していく。肉が削げ落ち、骨に当たる。骨の周りを削いでいき、その柔らかい部位を翔太郎の体から外していく。
その後、少し出っ張った骨をこの刃でまた削っていかなければならない。
骨を刺激しても充分に痛みは伝う。翔太郎の叫び声はまたも伝う。
「やめろォォォォォォォッ!!!!! うわ、うわあああああああああああああッッッッ!!!!!!!!」
結城と翔太郎は身長も体格もほぼ変わらず、二人ともおおよそ成人男性平均程度で差はない腕の太さだ。長ささえ調整すれば、適合する可能性は高い。アタッチメント自体、元々は結城丈二が装着する予定ではなかった物を流用しているくらいなので、太さに関しては、おおよそ調整が効く。
「さて、次は、神経を繋ぐ。歯を食いしばれ」
しかし、一也は機械的に言うしかなかった。
あまり優しい言葉をかける物ではない。自分自身も集中力を削がないよう、あくまで冷徹な機械として黙々と作業をする。あまり人間の悲鳴を聞きたいとは思わないが、本当に仕方がない事をしなければ仕方がない状況なので仕方がないし、まあとにかく仕方がない事なのだ。決して一也の趣味ではない。
とにかく、発する言葉は、その工程の説明だけだ。自分が今何をされているのかを理解しながらであれば、翔太郎としても次への関心が湧くはずである。それが最低限の話。しかし、それが頭に入っているとは思えなかった。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーッッッ…………!!!!!!!!!!!!!!!!!」
たかだか十分が数時間とさえ感じる強烈な痛みに支配されている。翔太郎時間では、とっくに五時間経っていてもおかしくないのではないかという気がしてくる。
しかも進んでいる実感というのが薄く、ピンセットなどで神経と神経を繋げる作業は目で見るだけでも気持ち悪い。痛いという以上に、自分の体に新たなパーツが増えていく気味の悪さが嫌だった。
吐きそうになる感覚を何とか払拭しようとしていた。意識を消し去りたい気持ちも生まれる。しかし、今はこの意識は消せない。
頭の上に汗が溜まるような感覚。天井を見て、天井の向こうに喉の奥から、この痛みを伝えていく。声が枯れ始める。
「ッッッ…………!!!!!!!!!!!!!!!!!」
今日のいずれの戦いにも勝る身体的な痛みだ。それはあるいは、ドウコクに胸骨を折られた時よりも遥かに痛みが激しい。
ガドルに吹っ飛ばされた瞬間の、一瞬の感覚とは桁違いに、──精密な作業は、その一つ一つが長い痛みを伴う。
ただ、フィリップや照井などの仲間たちを喪った心の痛みに比べればずっとマシであり、フェイトやユーノが受けた痛みよりは生ぬるい物であろうと思い、彼は耐えていた。
『それに杏子……お前が魔女になったとしても何も心配はするな……
お前が人々に絶望を振りまき泣かせる前に……俺がお前を殺してやる』
そうだ。────不意に翔太郎は、一つの約束を思い出した。
あの約束を忘れてはならない。
痛みを感じているのは、自分や死んだ人間たちだけじゃない。
(……あいつも……)
抜け殻になった翔太郎を、冷たい瞳で見つめた杏子。
その瞳が不意に翔太郎の脳裏を掠め、一瞬、翔太郎は痛みを忘れた。
杏子がああして怒ったのも無理はない。
翔太郎は、約束さえ忘れて杏子の心を傷つけていた。────これも一つの罪ではないか。
「くっ……!」
神経はまだ繋がれているのだろうか。
翔太郎の腕に、一つ、一つ。コードが繋がれ、翔太郎に新たな腕を取り付けようとする。
これがあれば、また戦える。一人の男の戦いの記録が、今度は翔太郎に繋がっていく。
小指が、少し動いたが、作業中なので叱責された。
◇
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