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変身ロワイアルその6

282崩壊─ゲームオーバー─(3) ◆gry038wOvE:2014/12/31(水) 18:00:46 ID:ezDSmj8g0

 “アンノウンハンド”。

 こうして、この場でこれ以上出てくるとは思いもしなかったその言葉に、孤門一輝と左翔太郎が戦慄する。桃園ラブや沖一也も知る言葉だ。
 孤門の住む世界を裏で暗躍する存在だと言われていたのがアンノウンハンドである。
 ダークメフィストの再来を考えれば、勿論、どこかにいるのは確実だが、それは主催者側である可能性も否めなかったし、味方内にそれらしい者は全く見かけられなかった。
 いや、しかし──石堀こそが、そうだったのだ。

「──石堀さん!? それは一体、どういう……」
「残念だが、ここはお前たちの墓場にさせてもらう。主催陣の打倒なんかに俺はハナから興味はなかったんでね。俺がやりたいのは、今から行う“復活の儀”の方さ」

 そう言うと、石堀は懐を弄った。
 そして、彼は薄く笑った。

「“復活の儀”……? 一体、何を言って……」
「フッ。──孤門」

 次の瞬間、石堀の懐から現れたコルト・パイソンの銃身。狙いを定める様子もなく、ただ感覚で、その銃口が孤門の顔面に弾丸を撃ち込むに最適な場所まで腕を置いたのだ。
 孤門は、同僚の突然の裏切りに、もはや冷静な判断力を失っていた。その口径が己を殺す為の兵器が射出される筒であると忘れていたかもしれない。

「……おつかれさん」

 右手を伸ばし、照準を合わせる事もなく、──通常なら絶対に命中がありえないそんな状態で、石堀は躊躇なく、その引き金に指をかけた。ここまで、銃を取りだしてから二分の一秒。
 一欠片の躊躇もなく引かれた引き金は、孤門の眉間を目掛け、発砲を開始する。

「危ないっ!!」

 孤門の体が大きく傾く。真横から体重をかけて抱きついた者がいたのだ。
 涼邑零である。零が真横から孤門の体を押し倒し、辛うじて弾丸は彼らの背後を抜けていく形になった。孤門の全身が覆い尽くされ、地面に激突する。
 弾丸は零のタックルよりもずっと凶悪だが、当たらなければ効力を発揮しない。
 これで本来ならば安心であるはずだった。



 しかし、見ればその弾道の先にいるのは、────蒼乃美希であった。

「ああっ!!」
「……!!」

 孤門、零、美希。三人の時間が止まる。

 孤門は、己がそこに留まっていれば良かったと思っただろう。

 零は、自分の不覚を呪っただろう。

 美希は、神にでも祈っただろうか。

 銃声が、運命を分ける。次の一瞬が全てを審判する。──はずであった。

「!!」

 美希の視界はブラックアウトしない。
 弾丸が体のどこかに当たったという事もなく、弾丸が辿り着く前にしては妙に時間がかかったような気がした。
 零も、疑問に思った。
 今、もしや弾丸など飛んでいなかったのではないか……零も、石堀の手の動きで判断していたが、弾丸らしき物は目で捉えていないし、銃声を耳で聞いていないのである。

「……妙に銃身が軽いと思えば……予め弾丸を抜いておいたのか。やるじゃないか、暁」

 脇目で起き上がろうとしていたシャンゼリオンを、石堀が一瞥した。
 石堀が危険だとわかっている時分、暁も一応、荷物の確認の際に石堀が確認を済ませた装備をこっそりスッて、弾丸を抜いておく対策は行ったのだ。コルト・パイソンもKar98kも、石堀の装備していた銃器の中身は全て空である。


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