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変身ロワイアルその6

234探偵物語(左翔太郎編) ◆gry038wOvE:2014/11/03(月) 14:26:39 ID:3afmAm6s0
 孤門が、そんな石堀に反論するように口を開いた。

「……そうですね。でも、覆したという事は僕たちにとっては希望です。
 僕たちは相手の意のままに操られる人形ではない。
 ────それが証明できたっていう事に……なりませんか?」
「それも尤もだ。それに、向こうも動揺したかもしれない。
 自分たちが用意したトラップが予期せぬ形で乗り越えられれば、普通少しは焦るもんだ」

 まるで自身も経験があるかのように、石堀が一息に言った。暁がそんな石堀を怪訝そうに見つめた。何か引っかかったようだった。しかし、それはあくまで予感という程度にとどめられて、別にそこから石堀を問いたてる事もなかった。
 孤門が、それを聞いて、今度はマミの方を見た。彼は、この会話の流れからマミに対して何か言っておく事があると思ったのだろう。

「マミちゃん、君が生きている事──。
 ……それがやっぱり、僕たちにとっては希望なんだ。
 役に立つとか立たないとかよりも」
「ええ、わかってます」

 その言葉は、嫌にあっさりしているように聞こえた。彼女はもう少し、今の境遇について悩みを見せていたはずだが、それが今の彼女にはなかった。

「さっき、ずっと桃園さんを見ていて、……魔女になっていた時の記憶が薄らと蘇ったんです」

 名前を出された事で、ラブがマミの方に目をやった。

「私も魔女になっていた間、──いや、魔法少女でも魔女でも人間でもなかった間、少しだけ夢を見ていた気がします」
「……マミさん」
「それは……正義の味方の夢を、桃園さんが果たしてくれているのを、私がずっと見守っている夢です」

 ふと、それを聞いた時にラブには懐かしい感覚が胸に蘇るような感じがした。
 胸の中で何かが解けていく感覚。遠い祖父との思い出を回想するようなノスタルジー。
 ラブは、いつか夢でマミを見た覚えがあった。起きたら忘れられる夢だ。起きたばかりならばその残滓を掬い上げられたかもしれないが、今となっては、ただの懐かしい感覚や既視感に終わってしまう。

 しかし、……きっと、そんな夢を見たのだろう。

「夢の話なんてしても仕方ないんでしょうけど、私は正夢を見たような気分でした。
 そこで、誰かと一緒に桃園さんにエールを送っていて、それで、彼女がこれからも正義の味方であり続ける事を祈っていた気がするんです……。
 おこがましいかもしれないけど、私は……彼女の支えであり続けられたと思うんです」

 それは、自信を持って言える事だった。具体的にどんな戦いをしていたかをはっきり語る事はできないが、マミは夢の中で「真実」を見つめていた気がする。断片的な、キュアピーチの一日の戦いがマミの記憶の中で薄らと形を持っていた。

 そうだ。────ラブも思い出した。

「うん……! そうだ……私も、ほんの少しだけ覚えてます。夢にマミさんや私の友達が出てきて、応援してくれた事。
 だから、きっと祈りは通じたんだと思います。それが私の力になっているのは間違いありません。今も、きっと」

 プリキュア仲間たちや一文字、マミが夢に少し出てきた事を、ラブは少し思い出した。
 それこそが、ラブの胸に響いて来る新しい「愛」の力を生みだしていたのだろう。
 テレパシーや思念という物があるのなら、まさしくそれを受けて、二人が通じ合ったと言える出来事であった。

「……良かった。戦いの役に立つ事じゃなくて、生きる事の意味がわかってくれたんだね」
「そうですね……。私は、やっぱり、少しでも長く生きたいんです。
 死ぬのが怖いって────そう思って、私は魔法少女になったんですから……。
 でも、生きている事でみんなの励みになるなら、そのためにも、もっと真っ直ぐに生きられる」

 マミが魔法少女になったのは、そんな理由だった。交通事故による衝撃と全身の痛み、目の前で燃え尽きる両親、止まない二次災害──あのままだと死ぬ運命だったマミにとって、魔法少女になるという事が唯一生きる手段であり、最後の希望だった。
 彼女にとって、生きているという事の心地よさは何よりの救いだ。


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