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変身ロワイアルその6
10
:
崩れ落ちた教会の真横で
◆gry038wOvE
:2014/08/07(木) 11:40:04 ID:V1L9C12Q0
孤門一輝が運転するシトロエン2CVの中にも、当然脂目マンプクの放送は響いた。
放送内容によれば、なんでもゴ・ガドル・バはあの時点で確かに死亡したらしい。それについては安心して良いらしく、冴島鋼牙や結城丈二といった犠牲者には申し訳なく思いながらも、ガドルの死を彼は、少しくらいは喜んだ。これ以上、自分や周囲が犠牲になる状況は防げる事になる。
ガドルが死んだならば、ドウコクが仲間になった現状では、危険になるのはあかねだけだ。
残すところ、十四名。──そう、それを聞いたまでは良かった。
「十人……」
正午までに残り人数を十人まで減らさなければならない、という条件が伝えられた。
この条件が、孤門たちにとって最悪なのである。
実は条件そのものが孤門たちの精神に及ぼす影響はそこまではない。ここまで築かれた信頼関係を崩壊させようという気はさして無いからだ。孤門たちの多くは、相互的に犠牲を強いたりする人物ではない。
だが、唯一の問題は血祭ドウコクである。
志葉屋敷に置いてきたドウコクが、果たしてこの条件に乗らないでいてくれるかが孤門たちにはわからない。──いや、むしろ、乗る可能性の方が高いだろう。
あの時点でドウコクを仲間に引き入れたとはいっても、こうした条件が提示された時にドウコクがどう行動するのかは想定の範囲外なのだ。これまでドウコクが自分たちを何度も襲撃してきた記憶は嘘をつかない。
ドウコクが求めるのは効率の良い帰還方法である。そして、その理念に基づいて最も効率的なのかを考え、結果的に仲間になったのが彼だ。この状況下、敵側の条件で勝利を得ようとする確率も否めない。
引き返す、という手段も孤門にはある。
だが、孤門はこのまま引き返す気はなかった。アクセルを緩めず、車は真っ直ぐ前に走っていく。窓は外の景色を置き去りにした。
「ラブちゃん、沖さんに連絡を頼む。ドウコクが暴れていないか、少し心配だ」
真横からラブの名前を呼んだ。
孤門はフロントガラスの向こうを見ていた。向こうには、倒壊した建物の姿が見えた。おそらく、それは教会だ。道路沿いにある施設は、他にない。
崩落した建物の横を走っていると、まるで地震やビースト災害の現場に来ている気分である。人里離れたこの平原に、教会が一つ、支柱を失い傾いていた。
こんな状況では、地に落ちた十字架が何かを暗示しているようにも見えて恐ろしい。
「それなら、引き返したら……」
「悪いけど、今から引き返す余裕はない。こっちもなるべく六時間以内で決着をつけなきゃならないんだ」
シトロエンが走る最中、二人は不安を抱えていた。
引き返さないのには理由がある。
今から引き返したとしても明らかに手遅れなのだ。ここまでの道のりを考えればわかる。何十分かかけて走って来た道なのだ。引き返すのには同等の時間がかかり、その間に物事の決着がつく余地がある。
一也ならば、説得するか、防衛するかのどちらかに成功できるかもしれない。──それに賭けるしか手はないのだ。
残り十名まで減らす、というのは案外難しくない話であるのは少し問題だ。
ここまでの死亡人数を考えれば、六時間に減る人数として妥当でもある。
ドウコクも満身創痍であるが、こちらも同様だ。多くの参加者は傷を抱え、負担を背負い、更に頭の上から疲労と汗を被っているような状態である。隙を突けば脆く崩れるのはお互い様だ。有利なのは、最初から非人にして、科学でも埋められないような圧倒的な身体能力を持っているドウコクだろう。
たった十人が生き残れるとしても、彼らガイアセイバーズは十二人いる。それに加えて、あかねやさやか、マミも助けたいという欲が張っている状況なのが実情だ。
目的全てを果たすと、どう考えてもマイナスが生じてしまう。
それでも彼らは、救える限り全員で生還する必要がある。この殺し合いの黒幕だって捕まえなければならない。────残り六時間で、すべて解決して脱出するのだ。
その為には、まず、それぞれが今すべき事をして、冴島邸に全員で集合するのがベストな手段である。
孤門たちは、すぐに教会の横を通りすぎ、その先へ進んでいく事になった。
◇
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