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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

1名無しさん:2013/05/30(木) 21:45:38 ID:eKlMnmjk0
このスレは少女漫画のキャラクターによるリレーSS企画、少女漫画キャラバトルロワイアルの本スレです。
クオリティは特に求めません。話に矛盾、間違いがなければOK。
SSを書くのが初めての方も気軽にご参加ください。

企画の性質上残酷な内容を含みますので、閲覧の際には十分ご注意ください。
また、原作のネタバレが多々存在しますのでこちらもご注意ください。

前スレ
少女漫画キャラバトルロワイアル
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1284816080/

【避難所】ttp://jbbs.livedoor.jp/comic/5978/
【まとめWiki】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/
【参加者名簿】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/d/%bb%b2%b2%c3%bc%d4%cc%be%ca%ed
【ルール(書き手ルール含む)】ttp://w.livedoor.jp/girlcomic/d/%a5%eb%a1%bc%a5%eb

2 ◆F9bPzQUFL.:2013/05/30(木) 21:46:55 ID:eKlMnmjk0
仮投下スレにて投下した自作の投下、及び◆o.l氏の代理投下を行います。

3リアリストは現実が見えない ◆F9bPzQUFL.:2013/05/30(木) 21:47:32 ID:eKlMnmjk0
「ふう……ひとまず、動きやすい服装になったか」
若者らしい衣服に身を包み、鏡夜はため息を一つつく。
遊園地から脱出し、たどり着いた先の市街地で、宣言通りに別の服へ着替えていた。
制服では機動性に欠け、身分が公になりやすい――――というのは建前。
本音は鏡を通して自身に着けられている首輪の形状を知るため。
そして仕掛けられているであろう小型カメラを覆うため。
今、鏡夜の首には流浪のヒーローのような、真っ赤なスカーフが巻き付けられている。
「ふにゃー」
「……お前はいいな、緊張感がなくて」
特に何かにおびえるわけでもなく、毛繕いを繰り返す猫を見てぽつりという。
実際、ここまで用心に用心は重ねてみた。
だが誰かに出会うということはなく、すんなりと市街地に来ることが出来た。
殺し合いに招かれている人間は40人、経っている時間はそう長くはない。
これは、幸運と捉えるべきか。

ともかく、当初の目的だった首輪の隠蔽及び形状の確認を行うことは出来た。
キャーの着けている首輪とはまた少し違った、凹凸のないツルツルとした首輪。
手触りと外観だけでは、工具が立ち入れそうな隙間は無いように感じる。
そして何より強力な爆発と、主催の一存による高速応答を可能にするだけの部品が、このサイズに詰め込まれているとは考えにくい。
カメラや盗聴を考えれば、それだけ通信に使う部品も増える。
爆薬が占める領域は、自然に少なくなっていく。
出来る以上のことは無理をしない、下手に手を入れて爆発でもすれば、それこそ終わりだ。
生憎とこんなところで死ぬわけにはいかない。

ならば、隅々まで調べられるような首輪サンプルがあればいいのだが――――

ザッ、と足が止まる。
感じ取ったのは一人分の気配。
初めての人間との遭遇に、鏡夜は気を引き締めていく。
正直者か、熱血漢か、殺戮者か、嘘つきか。
考えられる可能性を全て頭に入れながら、ゆっくりと気配へ近づいていく。

「あっ……」

そうして道の先で出会ったのは、小さな少女だった。
声をかけようと、鏡夜が口を開く。
その瞬間、少女はドサッと倒れ込んでしまった。
緊張の糸が切れたのか、はたまた別の要因か。
ともかく状況を見極める必要がある。
鏡夜は急いで少女に駆け寄り、声をかける。

「大丈夫か!?」

少女の返事は弱く、微かに聞こえる声もうまく聞き取れない。
……これだけ弱っているなら、見捨てるべきか?
邪な考えがよぎるのを、振り払う。
人として正しい道を踏み外すわけには、いかない。
少女の額に手を当て、熱を確かめていく。
表面に浮かんだ汗の先からは、普通の人間の体温が伝わってくる。
手首を掴んで脈を確かめ、流れるように呼吸を確かめていく。

「あ……」

小さな口から漏れ出す弱々しい声が、鏡夜の耳を撫でる。
続く弱々しい吐息が、彼女が生きているという事を示してくれる。

「大丈夫か、おい!」

軽く頬を叩き、少女の気を取り戻そうとしていく。
それだけでは戻らないとみた鏡夜は、支給されていたハンドタオルに水をしみこませ、少女の顔を拭っていく。

4リアリストは現実が見えない ◆F9bPzQUFL.:2013/05/30(木) 21:47:54 ID:eKlMnmjk0
 
「ん……?」
「気がついたか」

ようやく気を取り戻したのか、弱い声と共に少女は目覚めていく。
鏡夜は思わずホッとした表情を浮かべてしまう。

「しかし、君のような少女まで参加させられているとはな……よっぽど悪趣味な催しが好きらしい」

少女は首輪を着けている、それ即ちこの殺し合いの参加者であるという事。
こんな少女でも、巫女の対象にしようとしているのか……?

「あ、あの……」
「ん、ああ。すまない」

考え込みそうになったところに、少女の声が鏡夜を止める。
はっきりと気を取り戻したようで、もじもじと恥ずかしがりながら鏡夜を見つめている。

「私は鳳鏡夜、君の名前は?」

にこやかな表情で、少女の緊張をほぐそうと挨拶していく。

「月……小泉月です」

珍しい名前だな、と感嘆しながらも、鏡夜はさくさくと本題に切り込んでいく。

「君、この殺し合いが始まってから、誰かに出会ったか?」
「いえ、特に……」
「そうか……」

一つ質問を投げかけただけで、月の声は再び震えていく。
本当は首輪についてなど、もっと深い話題に入りたかったが、この様子だとろくに情報は得られないだろう。
尤も、こんな少女に情報を期待する方もどうかしているのかもしれない。
いくら情報がほしいからといって、少し焦りすぎたか……?
ここは一度頭を冷やし、考え直す必要がある。

「あの、よかったら一緒に行きませんか……? 一人は、寂しくて……」

一人で考え込んでいた鏡夜を、月の声が引き戻す。
それは、同行を求める申し出だった。
この殺し合いには幾多もの人間がいる、殺しに躊躇いのない人間も少なくはない。
そんな中で、か弱い少女が誰かに助けを求めるのは当然の行動だろう。

「子供にこんな事を聞くのは酷かも知れないが、自分の身は自分で守れるかい?」
「えっ?」
「生憎、超怪力もないし、超能力も持ってない。
 未知の技術が蔓延している中で、どんな力を持った人間が来るかはわからない。
 君をいざというときに守りきれる自信は、正直言って無い」

そんな彼女に、鏡夜は事実を突きつける。
鳳鏡夜という一人の人間は、見てくれの通り只の人間だ。
人を守る、だとかいう芸当ができる能力など持っているわけがない。
そんな中で、少女を守りながら生き残ることができるか……?
答えは、限りなくノーだ。
そして何より、鏡夜も生き残りたい。
自分が生き残るのに精一杯なのに、他人に割いてやれる余裕など持っている訳がない。
同情や哀れみで身を動かすのは、死に近づくのに等しい。

「安全な場所、があるとは思えないが……ともかく、安全な場所を探して身を隠しておいた方がいいだろう。
 これはいざというときの道具くらいにはなるさ、持っていくといい」

5リアリストは現実が見えない ◆F9bPzQUFL.:2013/05/30(木) 21:48:36 ID:eKlMnmjk0
 
だが、このまま突き飛ばすのもあまりに非情すぎる。
使える道具を何も持っていなそうな少女に、自分の使わない道具を渡す。
拡散型催涙スプレー、大の大人から隙を作るぐらいは出来るだろう。
問題は、彼女がこれを使う余裕があるかどうかだが。
今の鏡夜には、そこまで気にしてやれる余裕も無い。

「あの……ありがとうございます」
「気にしなくていいさ」

月は感謝の言葉を述べ、鏡夜はフフっと笑ってその場を立ち去っていく。
立ち止まっている時間はない、この殺し合いを転覆させるにはまだまだ情報が必要なのだから。

「行くぞ、キャー」
「ふにゃー」

呼びかけられた獣が、のしのしと鏡夜の後を歩いていく。
鏡夜は知らない、気づいていない。
その獣が、自分に降り懸かっていた災厄を振り払ってくれていたことなど。



「クソッ!!」

鏡夜が遠く見えなくなってから、月は市街地の一角のバーで暴れていた。
理由は勿論、鏡夜に自身のアリスが効かなかったから。
誰かを釣るために瞬間移動のアリスストーンで適当に移動し、そこで男の気配を察知したまでは良かった。
出会い頭に気絶したふりをし、体を傍に寄せて首に噛みつくまでは上手く行ったというのに。
そこからいくら力を使っても、鏡夜を操ることが出来なかった。
噛みつくことすら出来なかった浅葱の時とは違い、しっかりと首元に噛みついたというのに。
どれだけ念じようと、どれだけ力を使おうと、鏡夜を思い通りにすることは出来なかった。

正直、その時点でかなり狼狽えていた。
だが、迂闊に不利になる情報を伝えるわけにもいかない。
だから、問いかけには「誰にも会っていない」と答えた。
正直に「浅葱に会った」と言えば、変な状況になるのはわかっているからだ。
「とっても強い頼りになる男の人」と言えば、なぜその元から離れたのか?
「いけ好かない人殺し野郎」と言えば、どうやってそこから逃れることができたのか?
どう伝えようと、怪しい状況になるのは見えている。
ましてや、自分が人殺しに乗っているということを悟られてはいけないのだ。

「だからああいうガキは嫌いなんだよ……」

そこまで考え、ロック割りのウイスキーが注がれたグラスを手でカラン、と鳴らしてから壁に投げつける。
パリン、とガラス特有の小気味の良い音が鳴り響き、店の照明の光に反射してウイスキーが煌めいていく。
結局、いくら考えれど自身のアリスが利かなかった理由はわからなかった。
アリスの寿命が来たわけでもない、アリスの力を盗まれたわけでもない、鏡夜に無効化のアリスが宿されていたわけでもない。
なんだかわからないが、自分の力を阻害された。
その事がひどく彼女の頭に響き、苛つかせている。

「クソッ!」

テーブルをダンッと叩きながら、彼女は新たなグラスにウイスキーを注ぐ。
酔っている場合ではない、そんなことはわかっているから。
飲みもしないウイスキーをグラスに注いでは、壁に投げつけることを繰り返す。
二連続で年下にナメられた苛立ちを、解消するために。

6リアリストは現実が見えない ◆F9bPzQUFL.:2013/05/30(木) 21:49:21 ID:eKlMnmjk0
 
【F-2/北部市街地/午前】
【鳳鏡夜@桜蘭高校ホスト部】
[状態]: 腹黒メガネキャラ、首に噛まれ跡(自覚なし)
[服装]: 桜蘭高校男子制服
[装備]: 眼鏡
[道具]: 基本支給品、キャーの写真と説明書、タオル
[思考] 
基本: 青龍の力は誰にも渡さない
 1: 下記のことを行いつつ、G-4にある祭壇へ向かう。
    ・他の参加者と接触し情報を得る(相手は慎重に選ぶ)
    ・島の中に名簿に記載されていない人間がいないかどうかを調査
 2: 首輪には盗聴器と隠しカメラ、爆弾が内蔵されているという前提で、己の真意を主催に悟られないよう行動する。
 3: 首輪を解除するために、まずは盗聴器とカメラの有無をはっきりさせたい。
 4: 鬼宿、角宿、亢宿は、心宿の仲間かもしれないが、貴重な情報を持っている可能性もあると推測。
 5: ホスト部のメンバーは心配だが、捜そうにも当てが無いので今のところは上記1と並行して捜すに留める。
[備考]
※ハルヒがホスト部に入部したよりは後からの参戦。詳細は後続の書き手氏にお任せします。
※キャーがサーチェスの力を食べられることは説明書に記載されていなかったため把握していません。
※月に噛まれましたが、キャーが無効化しています。

【キャー @ぼくの地球を守って】
[状態]: 元気、鳳鏡夜の支給品
[服装]: 全裸
[道具]:
[思考] 
 1: 鏡夜についていく。
[備考]
※首輪をつけています。参加者がつけている首輪と性能や爆破の条件が同じかどうかは不明です。
※実際の大きさは数センチ程度のはずですが、このロワでは2メートル弱くらいの大きさで支給されています。
※サーチェスの力を食べます。この能力には制限がかかっているかもしれません。
※どうやらアリスの力も食べられるようです。
※キャーが地球語を理解しているかどうかは後続の書き手氏にお任せします。

【小泉月@学園アリス】
[状態]:イライラ、幼女バージョン
[装備]:瞬間移動のアリスストーン@学園アリス
[道具]:基本支給品(ランダムアイテム0〜2)、ガリバー飴(−10歳)×10個
[思考]
基本:最後の一人になる
1:最後の一人になるため行動
2:浅葱との同盟はとりあえず守るが、そのうち出し抜いてやる
3:ガリバー飴がどこかにあれば手に入れたい

7愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:50:06 ID:eKlMnmjk0
 
「足手まといを抱えてたら、俺が危ないだろ?」

意識が途切れる直前に迅八の鼓膜が拾ったのは、あまりにも感情を感じさせない言葉だった。
ぷつんと目の前がブラックアウトし、視界が暗く染まるのと同時に、全身の筋肉が強張っていくのを感じる。
必死にもがいて生を繋ぎ止めようとするも、それはあまりにも無駄な努力というよりなかった。
何せ、呼吸すらろくにできないのだ。咽喉が大きく開かず、唇は弱弱しく震えて声にならない吐息を漏らすだけ。
指先は硬く緊張したまま固定されたかのように動かないし、そもそも全身がじりじりと痺れてまるで思い通りにならない。



(……ああ、また俺が最初に死ぬのかよ)



ふと頭をよぎったのは、あの時とまるで同じ己の境遇に対する、皮肉めいた想いだった。
そんな場合でないのは分かりきっていたが、あまりの不甲斐なさと運の無さに思わず笑い出したくなってしまう。
……俺は俺で、俺はアイツで、アイツは俺で、アイツはアイツ。
自分と彼はあくまでも別個の人格の筈で、けれどある意味では最も近い魂を持った存在だろう。
完全に引き離して考えることも、百パーセント同一視することも、どちらも間違っている。
けれど、よりにもよって彼と同じような最期を迎えなくてもいいではないか――――。
ふははっと、最早動かない口唇が、最後の力を振り絞るようにして自嘲の笑みを形作った。


何度夢に見たか分からない、前世での光景を今になってまた思い出す。
星間戦争によって母星が塵芥と化した後、自分達は筆舌に尽くしがたい程の激論を交わした。
「地球に降りるべきではないか」「いや、このまま己の任務を遂行すべきだ」
「帰るべき星も無いのに、正論を言うな」「いっそ、皆で手を繋いで自害でもした方がましだ――――」。
意見の違う者同士で酷くいがみ合い罵り合い、時には掴み合いの喧嘩にまで発展したこともある。
なにせあの温厚な木蓮ですら、バケツを振りかぶって繻子蘭に泥水を浴びせかける始末だったのだから。

けれどその結論を出す前に、神は彼らに罰を与えたのだ。

基地内で発生した病原体は瞬く間に数と範囲を増殖させていき、どれほど手を講じようとも対抗策は見つからなかった。
母星が消滅している状況では、限られた資源と機具のみでワクチンを精製することなど到底不可能であったし、
かといって新種の病原菌を保有した身体では、今更地球へと降下することも出来ない。
八方塞がりになった七人は、ただただ怯えと悲しみの中で、己の死を待つことしかできなかった。
一日でも長く生き延びたいという想いと、いっそ早くこの恐怖を終わらせてほしいという歪んだ欲求。
矛盾した感情を抱えながら日々を過ごす彼らは、皆一様に精神が摩耗していた。


――――そして、死者を決める悪趣味なルーレットが最初に選んだのが、玉蘭だった。

8愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:51:04 ID:eKlMnmjk0
 

発病を知らされた時、酷く恐ろしかったのを覚えている。
己が死ぬことそのものよりも、愛する人を残して、一人で先に逝かねばならないことが。
彼女と自分は互いに思い合う無二の恋人同士でも何でもなく、単なるこちらの片思いでしかなかったけれど、
それでも、あの心優しい女性が共に過ごした仲間の一人を失って、平静でいられるとは到底思えなかった。
せめて、不安に苛まれる彼女の隣に、最期の瞬間まで寄り添っていてあげたかった。
「俺が君と共に居る」「ずっとそばに居るから恐がらないで」と、そう言って彼女に笑いかけたかったのに――――。
けれどそんなささやかな願いは呆気なく霧消して、現実の玉蘭は何一つ確かなものを残せないまま、
次第に弱っていく身体を寝台の上で掻き抱きながら、徐々に眼前へと差し迫る己の死に怯え苦しんでいるだけだった。

嗚呼と声も上げずに天を仰ぎ、己の星回りの悪さを嘆く。

なにせ、結局自分は、またあいつに頼らねばならないのだ。
本当ならこんなことは口がひん曲がったって言いたくないし、言われる側の当人も御同様だろう。
だがいくら腹立たしく不本意な頼み事であろうと、他にそれをお願いできる相手はいないのだ。
前世では最大のライバルで友人で、卑怯な手で彼から愛する女性を奪っていった憎むべき恋敵。
そして今生では、生意気で少しも可愛げがなくて、本性隠してこそこそ裏工作ばっかりしてやがる最低最悪なクソガキ。
けれど悔しいことに、誰かに彼女を委ねなければならないとしたら、それは一人しかいないから。



(輪……、お前が坂口さんを守るんだ)



そう心中で訴えて、それにしてもと迅八は吐息した。
こんなことになるのなら、もっと早く思いを伝えておけばよかった。
自分の中へと転生した玉蘭の恋心は、結局、実るどころか蕾にすらなることなく枯れ果ててしまったのだ。
まったく、これでは玉蘭も浮かばれないことだろう。
来世の己の駄目さ加減に、忸怩たる思いで呆れ返っているかもしれない。
玉砕覚悟で告白していれば、こんなやりきれなさを抱いたまま人生の幕を引くこともなかったのに、と。

けれどそれでも一方で、迅八には確証があった。
それは「もしかしたら」などという希望や願望ではなく、必ずやそうなるはずだという確信。



(……俺は生まれ変わっても、きっともう一度君を好きになる。
 この命が失われても、来世で君と逢えるのを待っているから――――)



玉蘭の恋が迅八の中で蘇ったように、迅八のこの感情もまた、何時か何処かで再び芽吹く。
一度目は「木蓮」、二度目は「木蓮ヲ愛ス」、そして三度目は「木蓮ヲ永遠ニ愛ス」
彼が一生を賭けて誓った恋に、俺もまた殉じよう。
彼が胸を焦がした木蓮と、自分が思いを寄せた彼女はあくまでも別の女性だけれど。
それでもきっと、この魂が朽ち果てぬ限り永遠に、俺は、俺達は、君に心を奪われる運命なのだろうから。



     ○     ○     ○

9愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:51:25 ID:eKlMnmjk0
 


「……っ!?」

頭の奥底の辺りが、冷たい刃のような痛みをキィンと訴える。
それと同時に誰かの言葉が脳裏を走り去った気がして、その薄気味の悪い感覚に吐き出したくなった。
槐を前世に持つ一成がいるのならば、テレパスを送信された可能性もあるだろうが、
少なくとも名簿を見る限り、彼はこの場には存在していない。
恐らく、単に気を張りすぎて少々過敏になっているだけなのだろう。
そう己に言い聞かせ平静を保とうと努めるも、輪の精神は既に限界を超える間際寸前にまで追い込まれていた。
当たり前だ。輪は、この殺し合いの中で自分が勝者になることに対して、絶対的な自信を持っていた。
自身のサーチェスならばよほどのことがない限り敵は無いと、ある意味では楽観視さえしていたと言える。
それでも決して慢心するというわけではなく、アリス能力者とやらには最大限の警戒を怠らないつもりだった。
少女に知っている限りの情報を引き出させ、それをもとに今後の計画を練り直そうと想定していた。
けれど唐突に訪れたのは、あまりにも予測不可能な現実で――――。

「……守る?」

今しがた輪の中を駆け抜けていった言葉の残骸が、折れた矢のように突き刺さる。
ただの幻聴でしかないはずのそれは、しかし輪の心を抉り取るには十分に足るものだった。

「……、そんな、そんなことが出来るわけないだろう!!?」

叫ぶ己の声すら憎い。細く甲高い声は完全に子供のそれで、声変わりすらまだなことを指し示している。
小さすぎる両掌を見つめ、細すぎる脚で狂ったように地団太を踏む。
成人男性の手にかかれば簡単に捻り潰せてしまいそうな小さな体躯は、孤独に過ごした九年間の体現だ。

「この身体で……! サーチェスもない状況で!! 
 こんな……、何もできない子供の身体で……、オレにどうしろっていうんだよ!!!」

自問自答するも答えなど出るわけがなく、頭がおかしくなりそうだった。
己が絶対的な強者であるという自信の源であった彼の武器、サーチェス。
それを強奪された今、輪には最早、何も残っていないといっても過言ではなかった。
あくまで平均的な小学生レベルの体力しかないこの身体で正面から大人とやりあっても、勝てるわけがないのだ。
かといって、従順でいたいけな子供の振りをして隙を狙うにしても、リスクは大きい。
どんな方法を使ったかは分からないが、先程の男は輪の目的も能力も、ムーンネームすら把握していた。
次に出会った参加者が、また輪の正体を見抜いていないとは限らないだろう。

茫然と見開かれた瞳から、涙がぽたりと一雫だけ零れ落ちた。
泣いている暇など無いというのに、一度崩れ落ちかけた膝には力が入らないままで、無為に時間ばかりが過ぎていく。
立ち上らなければいけない、歩き出さなければいけないと、頭では理解している。
けれど「今の自分が闇雲に動いたところで、一体何ができるのか」と、一度そう考え始めてしまうともう駄目なのだ。
底無し沼のように深い思考の泥に足を取られたまま、諦めとしか言えない感情が全身を黒く支配する。
怯えが四肢へと蔦のように絡みつき、輪から冷静さと戦う気力を少し、また少しと確実に掠め取っていく。

「ありす、オレは一体どうすればいい? どうすれば君を……」

10愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:51:36 ID:eKlMnmjk0
虚空へ問いかけたところで、小枝を踏み折るようなか細い音が鳴り響いたのを耳聡く聞き留めた。
彼女の笑顔を思い出し、狂気に染め抜かれそうな精神を必死にこちら側へ繋ぎ止める。
痙攣しかけるほどに震える指先でデイパックへと手を伸ばし、武骨な金属の塊をそっと取り出した。
サーチェスに万全の信頼を置いていた最前まで、支給された慣れない武器などまるで使うつもりは無かった。
しかし今の自分にとっては、掌中のこれが唯一ともいえる生命線だ。
子供の手に余る大きさのそれはずっしりとした重量感で、人の命を刈り取る道具としての重みを感じさせてくれる。
手にしたそれを眼前に構えると、ガサガサと揺れ動いている茂みの辺りへ躊躇なく照準を合わせた。
誰かがこちらに接近しているのは明白で、少なくとも体格から、それが亜梨子でないことだけは確定的だった。

「…………っ、くぁっ……っ!!」

引き金に掛けられた指先を何の感慨もなく引けば、肩が千切れそうなほどの凄まじい衝撃が自分にまで襲い掛かる。
予想を遥かに超えた激痛に苦悶の表情を作りながらも、手にした武器を離すことだけはしない。
掌に握られているのは、44マグナム。
映画「ダーティーハリー」で使われたことでも有名なこの大型拳銃は、
本来、大型獣を狩猟する際に、ライフルの代わりとして用いられるほどの、凶悪な殺傷力を持つ銃器である。
ガンマニアなら垂涎ものの一品ではあるが、生憎、現在の持ち主にその手の趣味は無い。
そして残念なことに、輪には銃に対しての興味も執着もなければ、知識すら全くと言っていいほどに無かった。
44マグナムは、確かに標的に当たりさえすればその破壊力は物凄い。
しかし一方でその高すぎる威力が災いし、慣れない射手が撃てば、それこそ上体が仰け反るほどの反動を受けてしまう。
子供の輪であれば、下手すれば細腕がねじ切れてもおかしくないだろう。
そのうえ一度撃てば、体勢を立て直し、次弾を照準・発射するまでに、かなりの時間的なロスも生じる代物だ。
少なくとも、獲物の全貌すら見えていない状態で無闇やたらな威嚇射撃に使うような銃では決してない。

だが、肩口ごと吹っ飛びそうな痛みすらも、今の輪を止める障害にはなりえなかった。
脳内を占めるのはただ一つ、亜梨子を守らねばという想いだけで、それ以外の一切が消え失せていた。


「ありすを守るんだ……! オレが……、今度こそオレが!!!」



     ○     ○     ○



轟音と同時に、突然、真横に茂っていた枝葉が弾け飛んだ。
飛び散った木々の破片が肩へと強かにぶつかり、唐突な痛みに眉を顰める。

(な……っ、何だ一体!?)

予想だにしなかったいきなりの攻撃に驚きながら、姿勢を低くして生い茂った下草へ身を隠す。
硝煙と土埃が薄く立ち込める草原は視界が悪く、こちらからは敵の姿を確認できない。
とはいえそれは、恐らく相手についても同じことだろう。
もしも自分が視認できているのなら、もっと的確に狙いを定めたうえでの射撃が行なえたはずだ。
環はそう判断すると、向こうに気取られない様じりじりと歩を後ろへ戻した。
敵前逃亡など恥ずべきことではあるが、しかし問答無用で拳銃を撃ってくる相手などどうしようもない。
このまま草叢伝いにこの場を離れなければ、ホスト部の皆と再会することすら出来ずにお陀仏だ。
僅かずつながらも確実に左右の足を動かして、一歩、また一歩と相手から距離をとる。
出来るだけ音を立てないように、相手に位置を気取られないよう慎重に、との思考とは裏腹に、
混乱と焦燥でぐるぐると回り続ける心の方は、早く早くと全身を急いて、すぐにでも全力で駆け出させようとする。
大声を上げて走り出したくなる欲求を押し殺し、震える身体に鞭打って、冷静になれと己に言い聞かせた。

11愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:51:49 ID:eKlMnmjk0
 
――――――けれど。

環の推測は決してそう外れていなかった。選択した戦略も、さほど悪いものではなかったはずだ。
相手が自分の正確な居場所を把握できていなかったのは明白だったし、
だからこそ、無理に戦闘を考えず逃げに徹しさえすれば、茂みの中に居るこちらに勝算があったのだ。
予想外だったのは、相手が環の思う以上に冷静さを失しており、無茶を覚悟で強引に草の中へ飛び込んできたこと。
そして何より、眼前に現れたのが、環が思い描いていた殺人者とは百八十度正反対の外見だったことだ。

「…………なっ、子供!?」

環の前に佇む彼は、まだ小学校低学年くらいであろう小柄な少年だった。

「まさか……」
「子供は人を殺さないって思ってるの?」

くすりと何処か自嘲的な笑みを唇の端に浮かべると、少年は環に銃口を向けた。
見ていて馬鹿馬鹿しくなるくらい、現実味のない光景だ。
年端もいかない幼い少年に拳銃を突きつけられているなど、冗談にもなりはしない。

「待て!なぜこんなことをする!あんな主催者の言うことを鵜呑みにするのか!?
 仮にこの場の全員を殺したからといって、本当に君一人が生き残り助けてもらえる根拠など――――」
「…………は?」

投げつけたのは、説得とさえ言えないただ感情が発露されただけの言葉だった。
しかしそれは意外なことに、環が想像した以上に相手を揺るがせた結果となったらしい。
射抜かれるほどの鋭利さを湛えた双眸がこちらを睨みつけると共に、血反吐を吐くような言葉が空を裂く。

「生き残る? 助けてもらう!? ……っ、は、ははははははははは!!!!!!!
 こんな命なんてどうでもいいさ。そんなもの、いくらでも犠牲に出来る。 
 だからありす、代わりに君を……、オレは今度こそ君を……っ、ありす!!」

その叫びに、環は理解する。
少年が殺し合いに乗ったのは、彼自身が最後の一人になるためではないのだと。
彼の言う『ありす』という女性が、何者なのかは分からない。
母親か姉や妹か友人か、或いはちょっとマセてはいるが恋人なのかもしれない。
だが少なくとも彼女が、少年にとって何よりも大切な存在なのだということだけは分かる。
それは、彼にあの小さな手で銃を取り、人殺しの禁忌に手を染める事を誓わせるほどに。


――――だが、それは間違った決意以外の何物でもない。


「……少年、君の言うありす姫とやらは、君がこんなことをして喜ぶような人なのか?」
「…………っ」
「君が人を殺せば、きっと彼女は泣く。女性を泣かせるのは男として最低の行いだ」

環にとって、女性はすべからず笑わせるべく存在だ。
須王の家へ引き取られ日本に移住することが決定した後、母は泣いてばかりいた。
「離れ離れになるなんて」と涙を流して環を抱きしめる母親の顔は、今でも鮮明に覚えている。
だから環は、女性の涙が嫌いだった。全ての女性には、いつも笑顔でいてほしかった。

桜蘭高校所属、須王環。ホスト部創設者兼部長にして自称キング。仇名は「殿」。
彼の掲げる最大の理想にして、部の運営方針は――――――――。



「女性には、常に笑っていて貰わねばならない。それが男(ホスト)の役目だ!!!」

12愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:52:06 ID:eKlMnmjk0
「…………っ、うるさい!! お前に何が分かるっ!!!」

激昂と同時に引き金へと掛けられた指先が一息に引かれ、耳をつんざく爆音が再び辺りを占めた。
瞬間、左肩に感じた肉を焦がすような熱のあまりの熱さに、すぐさま意識を奪われそうになる。
しかし、ここで倒れるわけにはいかない。唇を血が出るほど噛みしめて、痛みで強制的に思考を覚醒させる。
スタングレネード――――。激しい音と光を撒き散らし、周囲の人間の聴覚や視覚を麻痺させる品だ。
相手が銃を撃つのとほぼ同じ瞬間を狙って、環もまた、懐から取り出した支給品を相手へと投げつけていた。
まだ明るいこの時間、それも屋外ではさほどの効力はないだろうが、一瞬ひるませ隙を作ることくらいはできる。
……そうだ。このチャンスを無駄にしてはいけない。子供相手に少々情けないが、今度こそ完全に逃げ延びねば。
痛む肩を掌で抑え、だくだくと溢れる鮮血に眩暈を憶えながら、草原を抜けるためただただ走り去る。
このまま逃げ切って建物の多い市街地まで辿り着くことが出来れば、と決死の思いで願いながら。



……だが撃たれた箇所から止め処なく血が溢れだしている現状で、全速力での疾走をそんなにも続けられるはずがない。
目は霞んで前すらろくに見えないし、足は疲労と痛みでふらつき始めた。体力も限界に近い。

「うぉおっ!」
「きゃぁ!?」

角を曲がり、スピードを緩めかけようとしたところで、出会い頭に誰かとぶつかってしまう。
そのままバランスを崩して二人まとめて倒れ込むが、そこは流石の須王環である。
こんな場面であってすら、一瞬で相手の背中側へと回りこんで自分がクッション代わりになる始末。
そして勿論、指名率7割を誇る部内一の人気ホストは、いつも通りの営業も欠かさない。

「申し訳ないね、姫。少々慌てていたもので……。
 おっと、それにしても、もしかして俺は、気づかないうちに天国へと召されてしまったのかな」
「は?」


「いや。まさか天使が実在するとは、思わなかったものだから」

13愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:52:20 ID:eKlMnmjk0
【C-3/市街地/午前】

 【須王環@桜蘭高校ホスト部】
 [状態]: 左肩に銃創
 [服装]:桜蘭高校制服
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、スタングレネード×2(デイバックの中)、不明支給品(0〜2、未確認?)
 [基本行動方針]: 主催屋の居場所を突き止め、説得(接客)して殺し合いを止める。 
 [思考]おお、お客様第一号発見だ!
  0: 仲間を集める、ホスト部員を優先して探す。
1:少年(輪)から距離をとる。肩の手当て
  2: 殺し合いに対する恐怖。特にホスト部員が死んでしまったりしたら、どうしたらいいかわからないほどの恐怖。
 
 [備考]
  ※参戦時期はハルヒ入部より後です。その他の細かな時期は、のちの書き手さんにお任せします。


【本郷唯@ふしぎ遊戯】
[状態]:健康
[装備]:モンキーレンチ、しんさんのMTB@ハチミツとクローバー
[道具]:基本支給品
[思考]……え?何これ、ギャグ?
基本:惑わない、殺し合いを止める
  1:とりあえず環と会話?
[備考]
※本編終了後より参戦



【C-3/草原/午前】

【小林輪@ぼくの地球を守って】
[状態]: 通常、サーチェスなし(?)、擦り傷
[装備]:44マグナム、弾薬
[道具]:基本支給品(ランダム支給品0〜2個)
[思考]
基本:亜梨子のために、他の参加者を殺害する
1:例えサーチェスが無くても、別の方法で他の参加者を殺害する。
2:亜梨子のために、他の参加者を殺害する(?)
3:能力者の存在にもっと注意し、情報収集を怠らないようにする
[備考]
※盗みのアリスによってサーチェスが抜き取られました。
 柚香のアリスのように完全に抜き去られたどうかは、不明です。

14名無しさん:2013/05/30(木) 21:54:27 ID:eKlMnmjk0
以上で投下、及び代理投下終了です。

>愛を謳うより笑みを与えろ!
死に際のテレパシー、それを受け取った輪には既に力は無く……
環、かっこいいなあ。マイペースなんだけど、それがいい。

15名無しさん:2013/05/31(金) 22:16:05 ID:e7Q1yt3E0
投下乙です

鏡夜は命拾いしたなあ
キャーがアリスの力も喰えるのが今後どう転ぶかあ…

最初と比べて輪の心に綻びが生れた…かな?
環はぶれないなあ。いい対主催として今後に期待

16矛盾とパラドックス ◆F9bPzQUFL.:2013/06/21(金) 00:05:12 ID:5ansCEog0

「ふぃ〜、食った食った……」
爪楊枝を器用に扱い、げふりと一息をつく。
一応、花も恥じらう現役女子高校生ではあるのだが、今の彼女を見ても恥じる花など無いだろう。
しかし彼女は、目の前にあった料理を全て平らげて、満足そうな表情を浮かべている。
その姿に軽くどころか思いっきり引いている男には、目もくれず。
そして、さも当然かのように欠伸を一つこぼし、衝撃的な言葉を吐く。
「食べたら眠たくなっちゃったな……」
この台詞からわずか数秒、そこには机に突っ伏して寝ている夕城美朱の姿があった。
「……大したお嬢ちゃんだ」
終始その姿を見ていた田村は、食事が終われば話しかけることができるだろうか等と考えていた。
けれど、そんな考えなどとうに失せ、美朱の堂々たる姿と立ち回りに、ただ感嘆することしかできなかった。



「……うにゃ」
目を擦り、起きあがる。
見慣れないテーブル、整った内装に派手なシャンデリア。
あまり賢くない美朱でも、ここが自分の家ではないということぐらいは分かる。
ようやく警戒心を抱き、あたりを見渡す彼女の鼻に、またもやいい匂いが届く。
こんがりと焼けた生地の匂い、間違いなくホットケーキのもの。
とろっ、と溶けているであろうバターの香りが、美朱の腹を鳴らしてしまう。
「おおっ、起きたかい」
すると、その香りを運んでくるように一人の男が現れた。
兄や魏に負けないほどの背丈、ビシっと決まった角刈り、そして柔和な顔。
現れた男を見て、美朱は。
「……誰?」
当然の反応を返し、男をズッコけさせた。

「ええ〜っ!? 殺し合い!?」
美朱は口いっぱいにホットケーキを頬張りながら、田村から聞いた話に驚愕の表情を浮かべる。
ようやく目覚めた、ということで自己紹介をするという念願が叶った田村は、まず予測していた事態へと対応していた。
予測していた事態、それは"美朱が何も把握していない"という事。
ものの見事にそれはドンピシャで、さっきのさっきまで寝ていて何も覚えていないというのだ。
あの食べっぷりも、寝ぼけの一環なのだろうか。
ちょっとゾッとしながらも、田村はわかりやすく美朱に現状を砕いて説明していたのだ。
「心宿……」
事情を語る田村の口から出た一つの名に、美朱は表情を強ばらせる。
かつての敵、そして討ち取ったはずの敵。
それが蘇り、このような悪趣味極まりない催しを開いている。
理解できない気持ちでいっぱいだが、今美朱が悩んでもどうとなるわけではない。
特に、唯も巻き込まれていることに関しては。
「知っているのかい?」
ようやくそれらしいリアクションを見せた美朱に、田村は静かに問いかけていく。
「まあ……」
「教えてくれるかい、心宿とかいう奴のことを」
つらつらと記憶の糸を辿り、美朱は田村に伝えていく。
その一つ一つが思い出を蘇らせ、美朱の心に光と闇を落としていく。
辛いことが沢山あった、けれども楽しい、今でも心の支えになっている旅の話を。
ゆっくりと掻い摘むように、一つずつ喋っていく。

17矛盾とパラドックス ◆F9bPzQUFL.:2013/06/21(金) 00:05:56 ID:5ansCEog0

「……するってーと、その青竜の巫女を生け贄にして青竜を呼んで、なんでも願いを叶えようって言うんだな?」
「うん、でも……」
「青竜の巫女は、死ぬ」
田村は聞いた話をしっかりと理解し、美朱に確認を取っていく。
その問いかけに答える美朱の表情は、明らかに曇っていた。
「……きっと、唯ちゃんとあたしに仕返ししようと思ってるんだよ」
唯は土壇場で心宿の事を裏切ったと言っても良く、そして心宿本人を美朱が殺した。
厳密に言えば違う、とはいえざっくりと言ってしまえばそうだ。
この殺し合いに鬼宿がいるのも、仕返しの一環に違いない。
亢宿はともかく、角宿は間違いなく心宿からの刺客だろう。
心宿は自分たちに絶望を与え、苦しめようとしているのだ。
「……でも、おかしいよな。美朱ちゃんの話の通りなら、青竜の巫女はもう決まってるじゃないか。
 なんで心宿はわざわざ"青竜の巫女を選ぶ"なんて言ったんだ?
 それに単なる仕返しなら、隣にいたアキトって子が何のためにいるのかが全くわからない」
深く落ち込みそうになっていた美朱の心を、田村の言葉が呼び止める。
そう、美朱の考え通りだったとしても、心宿の行動には不可解な点がある。
蘇ったのならば自分一人で復讐をすればいいのに、協力者を募る理由が読めない。
そもそも、無関係な人間を巻き込んでいるということも不可解だ。
青竜の巫女を新たに選出するとしても、男性をなぜ巻き込んでいるのか?
「謎だらけ、か……」
柄にもなくシリアスモードで思考を繰り広げてみたが、さっぱり分かる気配はない。
何にせよ、手がかりが少なすぎる。
「……偽物? まさか」
ふと思いついた突拍子もない考え。
それをアリにしてしまうのならば、本当に何でもアリになってしまう。
考えても考えても不可解な点ばかり浮き上がり、何も進展しない。
「……今はそれを考えるべきじゃないか」
頭を振るい、考えを落としていく。
ものを考えられる余裕には限りがあるのだから、余計なものを入れるわけには行かない。
「ところで、田村さんはどうするんですか?」
そして、美朱は田村に"これから"を問う。
眠りこけていたらしい自分のせいで足止めされていたと言っても過言ではない田村には、何か別の目的があったはずだ。
美朱は、それを正直に問いかけていく。
「俺は……探したい子がいるから、その子を探しに行くよ」
「じゃあ、あたしも連れてってくれませんか?」
偶然にも、美朱と同じ事を考えていた。
会いたい人がいる、探すべき人がいる。
だから、その人に会いに行く。単純かつシンプルな理由だ。
「……大丈夫かい?」
「こう見えても現役朱雀の巫女! そんじょそこらの修羅場には負けませんよ!」
パッと見は普通の女子高生、特に運動などをやっていたわけでもない。
けれど、美朱は普通の女子高生とは違う。
どれだけ辛いことも、どれだけ痛いことも、自分で乗り越えてきた。
時には死の淵に立たされても、めげることなく前を向いてきた。
だから、今回だって大丈夫。
そんな自信が、彼女にはある。
「じゃ、行きましょ!」
万が一のためのトンカチを片手に握り、美朱は前を向く。

18矛盾とパラドックス ◆F9bPzQUFL.:2013/06/21(金) 00:06:07 ID:5ansCEog0



――――名簿に載っていた名前は「宿南 魏」ではなく「鬼宿」だった。    それは、つまりどう言うことか。
      考えれば分かる、けれど考えたくはない。

      夕城美朱の愛する魏は、ここにはいない。
      そんな真実を、名簿はただ一方的に告げている。
      巻き込まれなくて良かったと考えるべきなのだろう。

      けれど、美朱はそう考えることができなかった。

      人が人を殺すかもしれない、殺し合いという場所。

      悪夢のような場所で、一番頼りたい人が、一番大好きな人がいないなんて。

      ……耐えられるかどうか、分からないから。



だから今のうちに明るく振る舞っておこう。
どうしようもなく寂しくなる前に。
どうしようもなく泣きたくなる前に。

ああ、隠そうとしているのかもしれない。
分かっている、そんなことぐらい。
けれど――――

寂しいという気持ちは、ごまかせない。

【G-8/ホテル、食堂/昼】
【夕城美朱@ふしぎ遊戯】
[状態]:健康
[装備]:トンカチ
[道具]:基本支給品(食料なし)、不明支給品(0〜2)
[思考]
基本:打倒心宿
1:唯と合流
2:鬼宿に会う……?
[備考]
※参戦時期は二部以降です

【田村一登@ぼくの地球を守って】
[状態]:健康
[装備]:出刃包丁(現地調達品)
[道具]:基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考]
基本:一刻も早く笠間春彦と合流、護衛
[備考]
※参戦時期は蓮妙寺爆発後、輪の見舞いに行く前です。

19 ◆F9bPzQUFL.:2013/06/21(金) 00:06:20 ID:5ansCEog0
投下終了です

20名無しさん:2013/06/21(金) 20:19:34 ID:MK7Z/cec0
投下乙です!
美朱があいかわらずすぎるwww
喰って寝てまた喰ってとか、もう少し緊張感を持ってくれwww
名簿の名前が転生後でなく鬼宿なのに反応したのは、なるほど!と思いました。
深く考えてなかったけど、確かに美朱からしたらあくまでも別人なんだよなぁ。目から鱗。
でもあいつ、鬼宿どころか洗脳時期での参戦という…。
春ちゃんも既に死んでるし、今は良コンビになりそうな感じだけど、前途多難だ…。

21口ずさむのは白の呪文 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/02(火) 21:33:23 ID:Qtfoc0EA0
ごうごうとおとをたてて、もりがもえる。
けれど、おんなのこはうみをみていました。
うみはあおくて、きれいで、すんでいました。

「いつかみんなでうみにいこうね」

それをいったのはだれだったでしょうか。
けっきょく、みんなでうみをみることはかなわなくなりました。
それぞれが、それぞれのみちを、あゆんだから。

そして、これからも。
それはかなうことはないでしょう。
だって、おんなのこは。

いまからひとを、ともだちを「  」のだから。



どれだけ泣いていただろうか、気がつけばこの砂浜で横になってしまうくらいには、疲れていたのか。
いや、疲れていたのではない。
あくまで疲れていたのは心で、体力的に疲れていたのではない。
分かってはいるが、体はどっしりと重い。
服に付いた砂を払い、すっと立ち上がる。
後ろを向けば、森が燃えている。

「……そっか」

あゆみは、その火事から感じ取る。
空は火事が起きるほどの晴天ではないし、空気もそこまで乾燥しているわけではない。
つまり、自然発生した火災ではなく、人間の手で火がつけられた火事なのだと分かる。
なぜ、わざわざ火をつけるのか。
それは簡単な話で、人を「  」ためだ。
人を殺そうとしている、誰かがいる。
誰かが、人を殺そうとしている。
ここは人を殺さないといけない、殺さないと生き残れない場所。
悪いことでも何でもなく、生きるためにはそれしかないというだけ。
誰もがやっている、当たり前のこと。

怖くはない、だって私もこれから人を「  」んだから。

決意と共に、振り向く。
手に握りしめた鉄の塊が、少しだけ重みを増したような気がするのを、必死にごまかしていく。
これから、これを使って人を「  」。
もう戻れない、戻らない。

決めたことだから、もう決めたことだから。

そのためには、"みんな"だって――――

22口ずさむのは白の呪文 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/02(火) 21:34:02 ID:Qtfoc0EA0
 
「よっ」

そのとき、誰かに声をかけられる。
びくり、と体を振るわせながら声のした方を向く。
その瞬間、声が出なくなる。
全身が震え、嫌な汗が滲み出し、熱という熱が逃げていく。
頭が真っ白になる、なにも考えたくない、なにも考えたくない。

目の前に、真山巧が居るなんて。

ふと気づけば、"いつものように"蹴りを繰り出していた。

真山は、それを避けることはしない。
肩に振り下ろされるギロチンのような踵を、まっすぐと受け止める。

「落ち着け、あゆみ」

真山の声があゆみの頭の中に響く。
なぜだろう、今決めたのに、どんな姿になっても「  」って決めたのに。
揺れる、揺れる、柱がぐらぐらと揺れて、折れてしまいそうになる。
やっぱり、こんな姿は見られたくない。
真山の中の私は、人殺しというヴィジョンであってほしくないから。

もう一度、逃げよう。

そう決めて、脱兎の如く駆け出そうとしたあゆみの足を、真山の言葉が縫い止める。

「俺もだ、あゆみ」

ぴたり、足に五寸釘が刺さったかのように、ぴくりとも動かなくなる。
見られたくない、逃げ出したい、消え去りたい。
けれど、その言葉の続きが気になってしまう。

真山が自分に告げようとしていることを、聞きたい。

「俺も、人殺しだ」
「え――――」

再び、言葉を失う。
言われてから、気づく。
先ほど隣にいたはずの、心優しそうな少年の姿が、無い。
お世辞にも頭が良い方とは言いにくいあゆみでも、それがどういうこと課ぐらいは分かる。
ぐっと涙をこらえ、真山の方に向き直る。
彼がこれから、何を言おうとしているのか。
わかっているけれど、それに正面から向き合いたいから。

「俺、決めたんだ」

真山の口が動く。
分かり切っている言葉を、放つために。

「……俺が戻らないと、ダメなんだ」

予想通りの言葉が真山の口から零れる。
知っている、もうずっとずっと知っている。
彼が見ているのは"わたし"じゃなくて、"あの人"だと言うことを。
そんなことぐらい、分かっていた。
けれど、やっぱり改めて口に出して突きつけられると。
弱い自分には、何も出来ない。

「……そっか」

黙って、受け入れる。
分かっていた事実(まやまのきもち)と、知らなかった事実(まやまのこと)を。
同時に心の整理がついた気がして、あゆみは吹っ切れた表情を浮かべる。

「そ、だよね」

そして、涙を拭って笑う。
悩まなくて良い、今まで通りでいいんだから。
こんな簡単なことに、どうしてもっと早く気づけなかったのか。
気づいてしまえば、何もかもが簡単なことに変わる。
だから、真山に言おう。

私の真実(きもち)を。

「ねえ真山、聞いて。私はね」

23口ずさむのは白の呪文 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/02(火) 21:34:28 ID:Qtfoc0EA0



ばんっ。



どんっ、と何かに突き飛ばされた。
誰に? と問うまでもない。
それが出来るのはたった一人しかいないのだから。
そして、それが出来るたった一人の人間は。
自分の目の前で、豊満な胸のあたりから綺麗な赤い花を咲かせて。
自分が地面に倒れ込むのとほぼ同時に、後ろに倒れた。

「あゆみ!!」

急いで駆け寄る。
助からないということは分かっているのに。
いや、助ける気など無いというのに。
大きなあゆみの体を、真山はゆっくりと持ち上げる。

「あ……」

目が、合う。
今にも何処かへ行ってしまいそうな弱々しい声を出しながら、あゆみは真山を見つめる。
その表情はぼんやりとしていて、よく分からない。

「まや、ま」

名前を、呼ぶ。

「よかっ……た」

それから、にっこりと笑う。
なぜかなんて、考えなくても痛いほどに分かる。
彼女が考えることは、いつも透けて見えて。
それ故に、真山は突き放すことしか出来なかったのだから。

「あた、し。ま、やま、に」

知っている、続く言葉が何なのか。
けれど、止める声も、手も、何もない。
止めたところで、どうしようもない。

何も、変わらない。

「いき、てて、ほしい、んだ」

言わなくても分かる、と怒鳴ってやりたかった。
でなければ、あの時"撃つ"なんて選択肢を取らなかったはずだ。
知っているからこそ、ここに来たというのに。

「まや、ま、は、りかさ、んのところ、いくから」

彼女自身が一番よく知っていて、それでも受け止めたくはないとずっと拒んでいた現実。
それが、彼女の口からゆっくりと語られていく。
真山巧は、山田あゆみのことを見てくれない。
だから――――

「いきてて、くれるよ、ね?」

だからこそ、真山巧は生きてくれるのだろう。
どうやっても、どんな手段に躍り出ても、生き残ろうとするのだろう。
だから、伝えたいことがある。

「だか、ら……やまだ、あゆみは。
 まやま、たく、みのなか、の、あゆみは。
 きれいな、まま、で、いたい、な」

真山巧に生きていてほしいと願った。
だからこそ、山田あゆみは道を踏み外した。
真山巧に生きていてほしいから、人を殺そうと思った。

けれど、現実は少し違って。
真山巧にとって一番大切な人のために、真山巧も道を踏み外していた。
その思いは、どんな何よりも強い。
それは、山田あゆみという一人の人間が一番よく知っている。
真山巧は、どんな手を使っても生き残るだろう。
山田あゆみが、手を汚そうが汚すまいが、関係なく。

それに気づいてから、わき上がったのは。
真山巧の中の山田あゆみという人物像だった。
自分が死ぬとしても、彼の思いでの中で"人殺し"として生き続けるのは耐えられないから。

わがままかもしれない、けれど一生で最後のわがままだから聞いてほしい。
山田あゆみは、一人の平凡な女学生であったと、思っていてほしい。

「あーっ……」

そして、最後にきもちをぶつける。

「うれしか、った。まやま、きてく、れて。
 はじめて、だった、から、とって、も、うれし、か」

今まで理香に向き続けていた気持ちが、初めてあゆみに向けられたのだから。
中身や、真山の考えなんてものは、別にどうでもよくて。
真山が自分を見てくれた、ということが何よりもうれしかった。

「まやま?」

だから、彼女は告げる。

「好きだよ」

まっすぐと真山巧の目を見て、ふふっと笑って。

そのまま、眠りについた。

24口ずさむのは白の呪文 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/02(火) 21:37:11 ID:Qtfoc0EA0



「勝者の余裕……ですか?」
あゆみが息を引き取ったとほぼ同時に、真山は静かに告げる。
言葉の向く先は、真山の後頭部に銃を突きつけている男。
あゆみが撃たれた時点で遠距離に強い武器を持っていなかった真山は、おとなしくする事を決めた。
下手に刃向かって命を落としてはいけないからだ。
「……若者には、青春くらい満喫させたいからね」
「随分と言ってくれるじゃないですか」
銃を突きつける男が、真山に淡々と告げる。
けれど、当の真山は違うことを考えている。
読みが当たっているなら、この状況は"生き延びたも同然"なのだから。
「誰か、守りたい人でもいるんですか?」
「――――ッ」
突きつけられていた銃口が、真山の髪を少しだけ撫でる。
その反応に当たりを確信した真山は、自分の話に男を持ち込んでいく。
「人殺しを満喫する狂人なら、とっくのとうに死んでいるはずの人間が生きている。
 つまり、殺人に躊躇いがあって、でも殺人をしなきゃいけない、そんなところでしょ?」
「……君には関係ないだろう」
「ええ、関係ないです。けれどそれによる貴方の行動が、俺に関係してくる」
ここまで来れば、勝ったも同然だ。
なぜなら、真山巧が今からするのは命乞いではなく――――

「……俺と組みませんか」

同行の提案だから。

疑問を示すかのように、もう一度銃口が揺れたのと同時に、真山は立て続けに喋り続ける。

「超能力とか平気で使ってくる連中がいるこの中で、一人で全員殺すのは骨が折れると思うんです。
 だから、二人で組んで、それで人間を減らしましょうよ」

仲間、といえば聞こえは良い。
要するに徒党を組んで人を減らす、そういった提案を持ちかける。

「……最後は?」
「男らしく決闘でもしましょう」

人が減りきったら、最後は二人で戦う。
思いの強い方が勝ち、単純な話だ。

「……なるほど、よし、その話乗ったよ。
 僕もどうしても守りたいものがある」
「話が分かる人で助かりました」

頭に当てられていた銃口が引いたのを確認し、真山はハハッとわらう。
自分とほぼ同じ考え、誰かを守りたい、誰かのところに行きたい。
けれど、自分一人に超常的な力があるわけでもない。
そんな人間がほしいのは、何であれ力だ。
それを蹴るわけがない、といった真山の予想は見事に的中した。

こうして、真山巧は"生き残るための手札"を切った。
人殺しとして振る舞うことになろうと、別にかまわない。
それはそれで、最後の一人になればいいのだから。

「俺、真山巧って言います」
「相模玲、だよ」

差し出された真山の手に反応して、玲も手を差し出す。
そして、互いに放つ一言。

「よろしく」

その手は、偽りの誓い。
その顔は、偽りの仮面。
その心は――――

互いに、ただ一人を想う。

【山田あゆみ@ハチミツとクローバー 死亡】
【残り33人】

【E-8/砂浜/昼】
【真山巧@ハチミツとクローバー】
[状態]:健康
[装備]:グロック26@現実、予備弾薬(9mmパラベラム弾)
[道具]:基本支給品一式、毒薬、ランダムアイテム1〜5個
[基本行動方針]:どんな手を使ってでも生き残る方法を探す
[思考]原田理花の所に戻る、なんとしてでも。
1:相模玲と協力、人を減らす。
2:自身の命が危なくない範囲で脱出が可能ならば、それに乗る。

【相模玲@こどものおもちゃ】
[状態]:健康
[装備]:ワルサーPP@現実
[道具]:基本支給品、不明支給品(0〜2)
[思考]
基本:倉田紗南の護衛、最終的には優勝させる。
1:真山と協力し、人を減らす。
2:できれば積極的に殺していく。が、深追いはしない。
3:紗南の友達は一先ず保留。

----
以上で投下終了です。
ここ、けっこう行数書けるンですね……

25名無しさん:2013/07/02(火) 21:56:19 ID:SQwxZ3z20
投下乙です!
ああああ山田が、山田が真山を庇って……orz
死ぬ瞬間まで好きな人の無事を願う山田が、健気天使過ぎて胸が痛い;;
でも、最後に自分の気持ちを伝えられて、好きな人に看取られて逝けただけ幸せなのかもしれません
そして、そんな山田の想いを背負って最後の一人を目指す真山と、
同じく大切な人のために殺し合いに乗る玲君のコンビも今後が気になる…。
真っ直ぐな中高生の若造たちとは違う、酸いも甘いも知った社会人だからこそ非道になれる二人という感じ。

あああしかしとにもかくにも山田……orz

26名無しさん:2013/07/02(火) 22:14:45 ID:JtFjvRb.0
乙ですー

あゆぅぅぅ!!!
真山の本当の想い人は理香さんで自分じゃない、
でも最期に少しでも自分を見てもらえた、というあゆのまっすぐな片思いが悲しい
真山は自分の力で生きてくれると吹っ切れてからのあゆの心理変化が丁寧だった
そして真山&玲、と似た所のある同士でコンビ結成…!
真山の言う通り能力者が多い中では不利だけどこの組み合わせは手強そう

27 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/05(金) 00:18:39 ID:BduNxm8I0
すいません、>>22のあゆみ呼びは改めて読み返すとしっくりこないので、「山田」に変更させていただきます。
>>23はそのままで。

では投下します。

28正面衝突 ◆F9bPzQUFL.:2013/07/05(金) 00:19:34 ID:BduNxm8I0
「……まあ、今までの話はあくまで仮説。深く考えないでくれ」
話を一通り終えた後、綾女は少し疲れた表情で一息つく。
男が巫女である、なんてぶっ飛ぶにもぶっ飛びすぎた仮説。
耳を貸す価値すらない、そう思っていたのに。
そこから続いた"草摩"の話は、更紗の心を捕まえて離さなかった。
血の呪い、宿命、それを統べるもの。
宿命、モノはちがえど更紗を狂わせ、導いたもの。
宿命で出会った人もいるし、宿命のせいで心をボロボロにしてしまったこともある。
綾女たちも、そんな宿命と戦っていたんだろうか。
「慊人は……」
ひとつ、綾女の話を聞いて引っかかるところを、問う。
「慊人は、由希くんを恨んでいるんですか?」
「……それは違う、と断言したいけれどね。
 タイム・パラドクスとアナザーワールドクロスなんて夢物語が現実に起こっている以上、
 あの慊人が大変な時期から連れて来られている可能性がある」
過去を語る綾女の表情に、先ほどと同じような"影"が出来る。
由希、弟、一人の肉親。
それを無視し続けてきたと微かに語った彼は、今となってもそれを後悔している。
今、取り繕って弟と関わりを持っても、過去の断絶、知っていての無視を忘れることは出来ない。
弟(ほんにん)が気にしていないと幾ら言っても、兄(じぶん)には深く深く傷跡が残っているのだ。
そんな"影"を顔に写しながら、綾女は当主のことを語る。
「慊人は由希を独り占めにしていた、由希の自由も、選択も、すべて慊人が握っていたんだ。
 由希が黙って従っている内は、慊人も上機嫌だった。
 けれど……あれは、由希が手から離れ始めた頃の慊人にそっくりだ」
宿命による自由の喪失。
それを一番に受けていたのが、綾女の弟である由希だという。
……束縛する者は、それが手に入らないと分かると途端に弱くなる。
傷つけて、傷つけて、自分のモノにしようとする。
既に自分の手からは離れていて、もう手に入らないと分かっているのに。
束縛する者は、それに気づかない。
だから、無理にでも手に入れようとした……?
「……あれはボクが知っている"彼"だけど、ボクが知っている"彼女"ではない」
綾女は遠くを見つめ、静かに呟く。
草摩慊人という一人の人間は、劇的に変わったのだという。
宿命の終結、それによる解放と喪失、その先の未来と人生。
それに向き合うことで、"彼"から"彼女"へと変わった。
けれど、この場所にいるのは、"彼"だと綾女は言う。
わからない、わからない、思考が闇の迷宮へと入り込んでいく……。


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