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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

7愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:50:06 ID:eKlMnmjk0
 
「足手まといを抱えてたら、俺が危ないだろ?」

意識が途切れる直前に迅八の鼓膜が拾ったのは、あまりにも感情を感じさせない言葉だった。
ぷつんと目の前がブラックアウトし、視界が暗く染まるのと同時に、全身の筋肉が強張っていくのを感じる。
必死にもがいて生を繋ぎ止めようとするも、それはあまりにも無駄な努力というよりなかった。
何せ、呼吸すらろくにできないのだ。咽喉が大きく開かず、唇は弱弱しく震えて声にならない吐息を漏らすだけ。
指先は硬く緊張したまま固定されたかのように動かないし、そもそも全身がじりじりと痺れてまるで思い通りにならない。



(……ああ、また俺が最初に死ぬのかよ)



ふと頭をよぎったのは、あの時とまるで同じ己の境遇に対する、皮肉めいた想いだった。
そんな場合でないのは分かりきっていたが、あまりの不甲斐なさと運の無さに思わず笑い出したくなってしまう。
……俺は俺で、俺はアイツで、アイツは俺で、アイツはアイツ。
自分と彼はあくまでも別個の人格の筈で、けれどある意味では最も近い魂を持った存在だろう。
完全に引き離して考えることも、百パーセント同一視することも、どちらも間違っている。
けれど、よりにもよって彼と同じような最期を迎えなくてもいいではないか――――。
ふははっと、最早動かない口唇が、最後の力を振り絞るようにして自嘲の笑みを形作った。


何度夢に見たか分からない、前世での光景を今になってまた思い出す。
星間戦争によって母星が塵芥と化した後、自分達は筆舌に尽くしがたい程の激論を交わした。
「地球に降りるべきではないか」「いや、このまま己の任務を遂行すべきだ」
「帰るべき星も無いのに、正論を言うな」「いっそ、皆で手を繋いで自害でもした方がましだ――――」。
意見の違う者同士で酷くいがみ合い罵り合い、時には掴み合いの喧嘩にまで発展したこともある。
なにせあの温厚な木蓮ですら、バケツを振りかぶって繻子蘭に泥水を浴びせかける始末だったのだから。

けれどその結論を出す前に、神は彼らに罰を与えたのだ。

基地内で発生した病原体は瞬く間に数と範囲を増殖させていき、どれほど手を講じようとも対抗策は見つからなかった。
母星が消滅している状況では、限られた資源と機具のみでワクチンを精製することなど到底不可能であったし、
かといって新種の病原菌を保有した身体では、今更地球へと降下することも出来ない。
八方塞がりになった七人は、ただただ怯えと悲しみの中で、己の死を待つことしかできなかった。
一日でも長く生き延びたいという想いと、いっそ早くこの恐怖を終わらせてほしいという歪んだ欲求。
矛盾した感情を抱えながら日々を過ごす彼らは、皆一様に精神が摩耗していた。


――――そして、死者を決める悪趣味なルーレットが最初に選んだのが、玉蘭だった。


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