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少女漫画キャラバトルロワイアル 第二巻

9愛を謳うより笑みを与えろ!(代理) ◇o.lVkW7N.A:2013/05/30(木) 21:51:25 ID:eKlMnmjk0
 


「……っ!?」

頭の奥底の辺りが、冷たい刃のような痛みをキィンと訴える。
それと同時に誰かの言葉が脳裏を走り去った気がして、その薄気味の悪い感覚に吐き出したくなった。
槐を前世に持つ一成がいるのならば、テレパスを送信された可能性もあるだろうが、
少なくとも名簿を見る限り、彼はこの場には存在していない。
恐らく、単に気を張りすぎて少々過敏になっているだけなのだろう。
そう己に言い聞かせ平静を保とうと努めるも、輪の精神は既に限界を超える間際寸前にまで追い込まれていた。
当たり前だ。輪は、この殺し合いの中で自分が勝者になることに対して、絶対的な自信を持っていた。
自身のサーチェスならばよほどのことがない限り敵は無いと、ある意味では楽観視さえしていたと言える。
それでも決して慢心するというわけではなく、アリス能力者とやらには最大限の警戒を怠らないつもりだった。
少女に知っている限りの情報を引き出させ、それをもとに今後の計画を練り直そうと想定していた。
けれど唐突に訪れたのは、あまりにも予測不可能な現実で――――。

「……守る?」

今しがた輪の中を駆け抜けていった言葉の残骸が、折れた矢のように突き刺さる。
ただの幻聴でしかないはずのそれは、しかし輪の心を抉り取るには十分に足るものだった。

「……、そんな、そんなことが出来るわけないだろう!!?」

叫ぶ己の声すら憎い。細く甲高い声は完全に子供のそれで、声変わりすらまだなことを指し示している。
小さすぎる両掌を見つめ、細すぎる脚で狂ったように地団太を踏む。
成人男性の手にかかれば簡単に捻り潰せてしまいそうな小さな体躯は、孤独に過ごした九年間の体現だ。

「この身体で……! サーチェスもない状況で!! 
 こんな……、何もできない子供の身体で……、オレにどうしろっていうんだよ!!!」

自問自答するも答えなど出るわけがなく、頭がおかしくなりそうだった。
己が絶対的な強者であるという自信の源であった彼の武器、サーチェス。
それを強奪された今、輪には最早、何も残っていないといっても過言ではなかった。
あくまで平均的な小学生レベルの体力しかないこの身体で正面から大人とやりあっても、勝てるわけがないのだ。
かといって、従順でいたいけな子供の振りをして隙を狙うにしても、リスクは大きい。
どんな方法を使ったかは分からないが、先程の男は輪の目的も能力も、ムーンネームすら把握していた。
次に出会った参加者が、また輪の正体を見抜いていないとは限らないだろう。

茫然と見開かれた瞳から、涙がぽたりと一雫だけ零れ落ちた。
泣いている暇など無いというのに、一度崩れ落ちかけた膝には力が入らないままで、無為に時間ばかりが過ぎていく。
立ち上らなければいけない、歩き出さなければいけないと、頭では理解している。
けれど「今の自分が闇雲に動いたところで、一体何ができるのか」と、一度そう考え始めてしまうともう駄目なのだ。
底無し沼のように深い思考の泥に足を取られたまま、諦めとしか言えない感情が全身を黒く支配する。
怯えが四肢へと蔦のように絡みつき、輪から冷静さと戦う気力を少し、また少しと確実に掠め取っていく。

「ありす、オレは一体どうすればいい? どうすれば君を……」


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