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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

28幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:05:11 ID:kmCFpsoc


 殺される直前、南空ナオミは逃げる準備を整えていた。
 結花を発見するまでに、ゾロアークの特性、イリュージョンを知ったのだ。
 そしていざというときは自分に化けたゾロアークが引きつけているうちに逃げ出し、再起を図る。
 口笛から連なる作戦は、最後の手段であった。
 手持ちの戦闘道具を失うのは惜しいが、戦闘能力のある人物を三人相手取るのは分が悪い。
 だから最後の手を使った。ナオミはポケモンを意志のない道具としか見ていないためだ。
 それが、間違いであった。
 ナオミはゾロアークの生い立ちを知らない。
 Nに心を許すまで、特性『イリュージョン』により人に追い詰められ、傷ついてきた。
 アカギたちによってモンスターボールに手を加えられなければ、ナオミはおろか、他の人間に心を許すはずがない。
 だからこそ、自由を与えて敵をひきつけるように指示したのは、彼女の過ちだ。
 ゾロアークは結花に追い詰められた振りをしながらも、巧みに攻撃位置を誘導していたのだ。
 少しずつ、確実に、反意を抱いていると悟られず。
 南空ナオミを殺すため、機会を伺っていた。
 ゆえに結花の攻撃の間合いを測りながらも、限界まで引きつけてから跳んだのだ。
 結果、結花の刃はナオミの首に届いた。
 それを死ぬ直前、彼女は悟った。
 だけど、ゾロアークを恨む心はなかった。
 こうなって当然、裁きが下ったのだと納得したのだ。
 デスノートに人の行動は操れても、心は操れない。
 レイ・イワマツを殺された復讐に、関係ない月の恋人を巻き込んで、また六十人近くの人たちに犠牲を強いた。
 結局そう考えが行き着いたのは、彼女の心が憎悪に染まった証拠である。
 ゆえにこの結末は、キラは報いを受けるべきという彼女の理屈に照らし合わせると、必ずたどり着く答えだった。


 今起こった現実の光景に、誰一人反応出来なかった。
 確かに彼女は結花を殺そうとしたが、だからと言って殺すつもりはなかった。
 どうして、という疑問が頭の中でぐるぐる回る。
『あのポケモンに注意をしてください!』
 しゃべるステッキが何かを叫んでいる。意味が頭に入らない。
 ボーっと見つめていると、黒い狼は灰の中から赤と白のボールを拾い、脱兎のごとく逃げ出していった。
 誰も追いかけようとはしない。結花もどうすればいいかわからなかった。
『気にする必要はありません。これは不幸な事故です。あのポケモンが動いた先に人がいるなど、誰も判断が不可能な状況でした。
それに、殺害をあのポケモンが誘導している節が……』
「サファイア、そこまで」
『……申し訳ありません』
 なぜステッキが謝るのか、結花はわからなかった。
 人を殺したのは確かな事実なのに、ステッキは悪くないないのに。
「美遊……ちゃん? でしたか?」
「はい」
「園田さんに伝えてください。私に……殺されないようにしてください。探さないでください、と」
 美遊は目を丸くした。冷静な印象だったが、意外と表情豊かのようだ。
「あなたたちも、私から離れてください。私は……私は、人殺しのバケモノですから……」
 返事を聞かず、結花はその場から必死に離れた。
 何も聞きたくない。見たくない。
『この会場に呼ばれた中で、“悪い人”を退治してきて欲しいんです』
 意図せず、あの女性の言う通りに動いてしまった。
 ただあの子を守りたい。自分を助けようとする子どもだけは、死なせてはいけない。
 そう思っただけなのに、運命は許さなかった。
 きっと無様な結末が汚れた怪物にはお似合いだろう。
 結花は涙が流れているのも気づかず、ただ自分の知っている人たちから逃げ出した。


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