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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

1 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:17:06 ID:hUjGYcYM
『バトル・ロワイアル』パロディリレーSS企画『パラレルワールド・バトルロワイアル』のスレッドです。
企画上、グロテスクな表現、版権キャラクターの死亡などの要素が含まれております。
これらの要素が苦手な方は、くれぐれもご注意ください。

前スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1309963600/

【外部サイト】
パラレルワールド・バトルロワイアルまとめwiki
http://www45.atwiki.jp/pararowa/
パラレルワールド・バトルロワイアル専用したらば掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/14757/

2 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:20:08 ID:CfQCyc0o
【参加者一覧】

5/5【仮面ライダー555】
 ○乾巧/○草加雅人/○長田結花/○村上峡児/○北崎
3/4【仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
 ○木場勇治/○園田真理/○海堂直也/●菊池啓太郎
3/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】
 ●ルルーシュ・ランペルージ/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/●篠崎咲世子
6/6【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
 ○ナナリー・ランペルージ/○アリス/○ゼロ/○ロロ・ヴィ・ブリタニア/○マオ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア
3/4【DEATH NOTE(漫画)】
 ○夜神月/○ニア/○メロ/●松田桃太
3/4【デスノート(映画)】
 ○L/●弥海砂/○夜神総一郎/○南空ナオミ
5/5【Fate/stay night】
 ○衛宮士郎/○間桐桜/○セイバーオルタ/○バーサーカー/○藤村大河
5/6【Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
 ○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○美遊・エーデルフェルト/○クロエ・フォン・アインツベルン
 ●遠坂凛/○ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト/○バゼット・フラガ・マクレミッツ
5/5【ポケットモンスター(ゲーム)】
 ○シロナ/○N/○ゲーチス/○オーキド博士/○サカキ
3/5【ポケットモンスター(アニメ)】
 ●サトシ/●ヒカリ/○タケシ/○ニャース/○ミュウツー
4/4【魔法少女まどか☆マギカ】
 ○鹿目まどか/○暁美ほむら/○美樹さやか/○佐倉杏子
3/4【魔法少女おりこ☆マギカ】
 ○美国織莉子/○呉キリカ/●千歳ゆま/○巴マミ

【残り48/57名】 (○=生存 ●=死亡)

3 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:20:29 ID:CfQCyc0o
【基本ルール】
 『儀式』(バトル・ロワイアル)の参加者(以下『プレイヤー』と表記)は57名。
 『プレイヤー』全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が『勝者』となる。
 『勝者』には、『どのような願いでもひとつだけ叶えることが出来る権利』が与えられる。
 制限時間は無制限。『プレイヤー』が最後の一人になるか、全員死亡するまで『儀式』は続行される。
 『プレイヤー』が全員死亡した場合は、『勝者なし』(ゲームオーバー)となる。
 『儀式』開始時、『プレイヤー』はテレポートによってMAP上にバラバラに配置される。
 『儀式』中は『プレイヤー』の行動に関する制限は特になく、後述する『術式』が発動する条件に触れなければ、どのような行動をとることも許される。

【プレイヤーの持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品などは没収されている。
 ただし、義手など身体と一体化していたり、生命維持に関わる武器や装置(魔法少女のソウルジェムなど)はその限りではない。
 また、財布、時計、携帯電話など『ポケットに入る程度のサイズの日用品や雑貨』は没収されていない。
 上記の品々の中に仕込まれた武器類(夜神月の腕時計に仕組まれたデスノートの切れ端など)は没収されている。
 携帯電話やポケギアは常に圏外。ただし、後述する『ランダム支給品』として支給されたものなどは通話可能な可能性がある。

【デイパックと支給品について】
 『プレイヤー』は全員、以下の品がデイパックに入った状態で支給されている。
  ・デイパック … 普通の何の仕掛けもないデイパック。肩掛け式。結構大きい。
  ・水 … 1リットル入りペットボトルに入ったミネラルウォーター。2本。計2リットル。
  ・食料 … ただのパン。6個。大体1日(3食)分。大きさやパンの種類は後続の書き手次第。
  ・懐中電灯 … ただの懐中電灯。単一電池2本使用。
  ・名簿 … 『プレイヤー』の名前が50音順で載っている名簿。載っているのは名前のみ。
  ・地図 … 『儀式』の舞台の地図。
  ・デバイス … 自身がいるエリアを表示してくれる小型デジタルツール。外見はポケウォーカーに似ている。
  ・筆記用具 … 普通の鉛筆・ペンが数本と消しゴム1個。大学ノート1冊。
  ・ランダム支給品 … 『プレイヤー』のデイパックの中にランダムに支給される品。最小で1つ、最大3つ。
 『ランダム支給品』は銃火器、剣などの武器から各作品世界の品、日用品まで様々な物がランダムで入っている。
 ただし、デイパックの余剰部分に少々強引に詰め込まれているため、サイズの大きいものは中身がはみ出ていて丸見えであったり、最初からデイパックの外に出た状態で支給される。

4 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:20:53 ID:CfQCyc0o
【舞台】
 http://download2.getuploader.com/g/ParallelWorld_BattleRoyal/20/pararowaMAP.jpg

【禁止領域】
 定時放送終了の2時間後、3時間後、4時間後に1エリアずつ進入禁止エリアである『禁止領域』が生まれる。
 『禁止領域』は『儀式』が終了するまで解除されない。
 『禁止領域』に30秒以上留まり続けてしまうと、後述する『術式』が発動する。ただし、29秒以内ならエリア内への侵入、エリア内の通行といった行動も可能。
 『プレイヤー』が『禁止領域』に踏み込むと、身体の先端部(指先など)から青白い炎が生じ、時間が経過する毎に炎の勢いは強くなる。
 29秒以内に『禁止領域』から脱出することができれば、脱出と同時に炎は消える。
 長時間及び連続して『禁止領域』へ侵入した場合、炎が生じた場所が灰化するなどの外傷を負う可能性がある。

【定時放送】
 一日6時間毎、計4回、主催者側から定時放送が行われる。
 放送が行われる時間は0:00、6:00、12:00、18:00。
 内容は、前回放送終了後から放送開始までの約6時間中に発生した『脱落者』(死亡者)の発表と、放送終了2時間後、3時間後、4時間後に『禁止領域』となるエリアの発表。

【呪術式について】
 『プレイヤー』は全員、『魔女の口づけ』を参考に生み出された呪術式(以下『術式』と表記)を身体に刻み込まれている。
 『術式』が発動した『プレイヤー』は、身体中から青白い炎を発し、やがて灰となり『完全なる消滅』を迎える。要するに死亡する。
 青白い炎は、術式が発動した『プレイヤー』の身体以外のものや他者には燃え移らない。
 『術式』が発動する条件は以下の3つ
  ・『儀式』の舞台の外へ出る
  ・24時間『プレイヤー』から『脱落者』(死亡者)が一人も出ない。この場合、『プレイヤー』全員の『術式』が発動し、『プレイヤー』は全員死亡する
  ・『禁止領域』に30秒以上留まる
 『術式』は『プレイヤー』の首元にタトゥー状に常に浮かび上がっている。
 『術式』は常に『プレイヤー』の生死を判断しており、死亡した『プレイヤー』の肉体からは『術式』は消滅する。
 主催側はこれによって、『プレイヤー』の生死と詳細な現在位置を把握している。

5 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:21:20 ID:CfQCyc0o
【能力制限】
 一部『プレイヤー』や一部『ランダム支給品』には、何らかの要因によって能力を制限されている。
 一部『プレイヤー』や一部『ランダム支給品』が持つ能力には、使用そのものが禁止されている(要するに使用できない)ものが存在する。
 一部『ランダム支給品』は、能力面以外にも制限が科せられている。

 大まかな目安は以下のとおり

  ◆禁止
   オルフェノクの「使徒再生」による他参加者のオルフェノク化
   サーヴァントの霊体化
   ソウルジェムのグリーフシード化(穢れが浄化しきれなくなると砕け散る)
   C.C.の他者にギアスを発現させる能力
   暁美ほむらの時間遡行能力

  ◆ある程度のレベルまで制限
   オルフェノクの怪人態時の各種身体能力
   ゼロの各種身体能力
   サーヴァントの各種身体能力
   一部ポケモンの各種身体能力
   各種ギアス
   ポケモンの使用する技(主に威力面)
   各種回復能力(全快までに時間がかかるようにする)
   ナナリー、アリス(コードギアス取得後)、ゼロ、ロロ(悪夢版)のナイトメアフレーム召喚

 ※あくまでも目安のため、最終的な制限レベルなどについては各書き手の裁量に委ねられる。
  また、ロワ本編中において能力制限が解除される展開となった場合は、これら制限は消滅する。
  詳細な制限の内容などについては以下の項目を参照。
  http://www45.atwiki.jp/pararowa/pages/86.html

6 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:21:41 ID:CfQCyc0o
【書き手ルール】
 書き手は事前に、予約専用スレにおいてトリップ付きで予約または投下宣言を行うこと。トリップのない予約、投下宣言は無効。
 予約、投下宣言についての詳細は予約専用スレ参照。
 作品の最後には生存しているキャラクターの状態表を以下のテンプレートを元に記してください。

【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
【(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
[状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
[装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
[道具]:(キャラクターがデイパックの中に仕舞っている物の名前)
[思考・状況]
基本:(基本的な方針、または最終的な目的)
1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)
[備考]
※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)

【作中での時間帯表記】(0:00スタート)
 [00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
 [06:00-07:59 >朝]  [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
 [12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
 [18:00-19:59 >夜]  [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]

【修正・破棄に関してのルール】
 本スレに投下した作品が、矛盾点や注意を受けた場合、書き手はそれを受けて修正作業に入ることができます。
 修正要望を出す場合、内容は具体的に。「気に入らない」「つまらない」などの暴言は受け付けられません。
 問題点への「指摘」は名無しでも可能ですが、話し合いが必要な「要求」は書き手のみが可能です。
 既に進行している(続きが予約または投下されている)パートを扱った作品に対して修正要望を出すことはできません。
 (ただし、対象となる作品の続きが、同一書き手による自己リレーであった場合はその限りではありません)
 議論となったパートは、協議が終わるまで「凍結」となります。「凍結」中は、そのパートを進行させることはできません。
 議論開始から二日(48時間)以上経過しても作品を投下した書き手から結論が出されなかった場合、作品はNGとなります。
 修正を二回繰り返しても問題が解決されなかった場合、「修正不可」と判断され、作品はNGとなります。

7 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:23:01 ID:ExHGcG.2
これより、セイバー、バゼットを投下します。

8対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:24:53 ID:ExHGcG.2



 破壊された出入り口を超え、この距離からでも感じ取れる禍々しい魔力を目標に足を進める。
 決して駆けるようなまねはしない。敵戦力は未知数。ほんの僅かな体力さえも無駄には出来ない。
 事前情報こそ得ているが、そんなモノは当てにならない。実際の戦闘では、相手が情報にない魔術、能力、礼装を保有していた例などざらにある。
 ましてやこの『儀式』とやらの状況下、相手が“宝具”を持っていない可能性さえある。
 そうなるとそうなるとこちらも“切り札”を使えない可能性がある訳だが―――

「それならむしろ好都合。いかな英霊と言えど、宝具がなければただの強敵だ」

 英霊との戦いで最も恐ろしいのはその“宝具”だ。
 伝説にまで謳われた武具は、それだけで条理を覆す“奇跡”を保有する。

 例えば極光を以って境面界を両断したという“エクスカリバー”。

 例えば因果を逆転させ、必ず心臓を穿ったと云う“ゲイボルク”。

 例えば“後より出でて先に断つもの”の二つ名を持つ、我が家系に伝わる“フラガラック”

 これらの“宝具”は正しく発動されれば、お互いの力量に関係なく担い手の勝利が決まる。
 いかに担い手が弱く、いかに対象が強くとも。

 それこそが英霊を英霊たらしめるシンボル。英雄を伝説へと至らせる“貴き幻想”だ。

 故にこそ、“宝具”を持たない英霊などおそるるに足りない。
 無論、英霊自身の戦闘能力は侮れるものではない。
 だが、この身は既に二体の黒化英霊を倒した実績がある。
 その経験を以ってすれば、セイバーがたとえどれ程の性能を持っていようと、互角の戦いに持ち込む事も可能だろう。


        ◆


 僅かに空いた扉の隙間から室内を索敵する。
 部屋はほどほどに広く、戦闘を行うには十分な領域がある。
 家具は一般的な物で、魔術的要素を付加されてはいないようだ。
 特別注視する物はなにもない、大人数が集うための部屋のようだった。

 その中央に、“敵”はいた。

 ……黒い。
 それが、標的であるセイバーの第一印象だった。
 その身を包む重厚な鎧は元より、体から溢れ出る膨大な魔力が濃霧となってセイバーを覆い、まるで黒い恒星のような印象を与える。
 その手に握られた黄金の剣だけが、黒色の中の異物として目立っている。


 セイバーはこちらに気付いているのかいないのか、入り口から背を向けている。
 罠の可能性もあるが、その隙を突かない理由はない。
 深く、ゆっくりと、静かに息を吸い込み、

「フッ――――!!」
 一撃で扉を、その止め具ごと粉砕。セイバーへと殴り飛ばす。
 その影に隠れ、追従するように一足でセイバーへと肉薄する。

 対象の行動予測。一手目の取捨選択。
 次に取るべき私の行動は―――

「なっ………!?」

 後先を考えない、その場凌ぎの無様な回避だった。
 高品質な絨毯の上を転げ回り、近場の調度品を投擲することで次撃を牽制する。

「ぐっ…………!?」

9対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:26:10 ID:ExHGcG.2
 吹き飛ばされた。
 牽制は牽制としての用を成さず剣士に攻め入られ、そのまま弾き飛ばされた。

「づっ……!」
 守りは間に合った。戦闘の続行に支障はない。
 セイバーの追撃はない。部屋の端まで下がり、体勢を立て直す。


 ――――想定外。いや、迎撃されたこと自体は想定内だった。
 だがセイバーは、私がそうすることがわかっていたかのように、囮にした扉ごと私を斬り伏せに来た。
 しかも狙いは正確。扉に隠れて見えないはずの私の頭部を、寸分の狂いもなく狙っていた。

「くっ………」

 なんて間抜け。
 先手を取っていながら僅か一手で後手に回ってしまった。
 もはや戦いのアドバンテージはあちら側だ。
 どうにかして情勢をこちら側に持って来なくては――――

「その程度の実力で私を殺しに来たか、魔術師(メイガス)」
「――――――!」

 喋った。自我がある!
 それはつまり、クラスカードで呼ばれた英霊ではない?
 ……いや。人間自身を媒介にして召喚した例もある。それを確かめるのは対象を倒してからで十分だ。

「その程度とは聞き捨てなりませんね。この身は封印指定執行者。凡百の魔術師とは錬度が違います。
 現に、あなた同様英霊の力を持つモノ。ランサーとアーチャーの二体を既に撃破しています」
「はっ、笑わせるな魔術師。アーチャーもランサーも貴様如きに討たれるようなサーヴァントではない」

 サーヴァント? 聞いたことがある。
 確かクラスカードが出現した冬木の街で、幾度か行われたと云う儀式。その名は―――

「聖杯戦争!」

 だとすれば、眼前にいるのはセイバーのサーヴァント! 紛れもない本物の英霊!!

「なるほど。道理で自我があるはずだ!」
「自我? その言い方からすると、貴様が戦ったというアーチャーとランサーには自我がなかったのか」
「その通りです」
「――――――、ク」

 その冷淡な表情から、僅かに嘲笑が漏れる。

「何がおかしい、セイバーのサーヴァント」
「なに、貴様があまりにも愚かなのでな。
 まさか意志のない人形を倒したぐらいで粋がっていたとはな」
「自意識の有無など些細な違いでしょう。自我があろうがなかろうが、同じ英霊には違いない。その性能に変わりはありません」
「ほう? ならば試してみるか?」
「試すまでもありません。私はあなたを倒し、クラスカード回収の任務を遂行する。これは決定事項です」

 両の拳を強く打ち鳴らす。
 ルーンの刻まれた手袋をはめた拳は、金属がぶつかり合うような音を立てた。

 任務に変わりはない。
 眼前のセイバーを打倒し、名簿にあったバーサーカーも撃破し、クラスカードを回収する。
 例外はアーチャーのカードを持つクロエ・フォン・アインツベルンだが、これはその時の状況で判断する。


 だが疑問は残る。
 眼前の剣士はセイバーのサーヴァントだ。それは間違いない。
 サーヴァントはマスターの召喚によって呼ばれるモノ。その存在の維持はマスターの魔力によって行われる。
 つまりマスターがいなければ、存在するだけで魔力を消費し消滅する。
 この問題はクラスカードを依り代にしてしまえば解決される。
 だが、私の知る冬木の街で“聖杯戦争は起こっていない”。
 ならばあのサーヴァントはいつ、どこから呼ばれたと言うのか。

10対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:27:16 ID:ExHGcG.2
「私も舐められたものだ。
 喜べ、一時戯れてやる。―――そして我が力、その身を以って思い知れ!」
 セイバーが剣を構え、床を踏み砕いて突進する。
 考えるのは後だ。
 今は何より、眼前の敵を粉砕する。


 踏み込む。
 振り下ろされる剣閃を掻い潜り、その重厚な鎧ごとセイバーの胴めがけて渾身の右ストレートを打ち込んだ。

「ッ――――!」

 それを防がれた。
 時速八十キロを誇る私の右ストレートは、いとも容易くセイバーの左手に受け止められた。
 またも読まれていた。
 それで確信する。この敵に生半可な奇襲やカウンターは通じない。
 一撃を加えるには、真正面から叩き潰す必要がある。

 一瞬の間。
 渾身のカウンターを防がれた私と、その小柄な体躯ゆえに衝撃を殺し切れなかったセイバー。
 その僅かな差は、この状況を作り出したセイバーに傾いた。

「雑だな。しかも軽い!」

 掴まれた拳を起点に、力任せに私の体が持ち上げられる。
 そのまま急降下、今やリングのマットと化した、柔らかい筈の絨毯へ叩きつけられる。

 それを防ぐ。
 激突の寸前に体を捻り拘束を外し、四肢を全て使って衝撃を殺し切る。
 すぐにその場から飛び退く。
 閃く一撃。前髪を数本切り裂かれた。

 だがセイバーの攻撃は終わらない。
 壁際に詰められた私に向かって突撃し、背後の壁ごと両断してくる。

「グ、づ…………ッ」

 それをどうにか凌ぐ。
 壁ごと断ち切るのは流石に剣閃が鈍るのか、セイバーの猛攻をどうにか潜り抜け、部屋の中央へと躍り出る。

 追撃してくるセイバー。
 それを尻目に拳を振り上げ、一撃。部屋の床を粉砕し、足場を崩す。
 直後に浮遊感。床は完全に崩落し、下階との吹き抜けとなる。

 舞い上がる粉塵を煙幕に、より狭い廊下へと抜け出す。
 当然セイバーも追ってくるが、こちらの狙いを悟ったのか、廊下へ出ると同時に足を止める。

 お互いの距離は二十メートルほど。
 狭い廊下は一直線に伸びており、敵に全身か後退しか許さない。
 壁を壊せば道は開けるが、そんな隙を逃すつもりはない。
 更に、無手のこちらとは違い、あちらは長剣。
 剣は振るう度に壁に当たり、その速度を落とさざるを得ない。

 敵が後退するならよし。
 攻守は入れ替わり、今度はこちらが攻める番となる。
 前進するならそれもよし。
 鈍った剣筋なら、カウンターを入れる余地も十分にある。
 セイバーがどちらを取ったとしてもすぐに行動できるよう、拳を構える。

 だがセイバーは、そのどちらでもない行動をとった。

11対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:28:02 ID:ExHGcG.2
「ぬるいな。やはりこの程度か」

 セイバーがそう呟くと同時に、剣に黒色の魔力が渦巻く。

 “宝具”―――ではない。ラックは反応していない。
 ならばこの攻撃は―――遠距離攻撃!

「そら、躱して見せろ!」

 放たれる黒刃。
 魔力と剣圧によって繰り出されたそれは、天井床壁面を斬り抉りながら飛翔する。

「…………ッ!」

 敵の攻撃を鈍らせるための作戦が仇になった。
 作戦とは真逆に、狭い廊下は私の回避空間を殺いでいる。

「どうした? この程度の攻撃、容易く防いで見せろ。
 アーチャーの弓はより強く、より正確だったぞ」
「――――ッ!」

 躱しきれなかった黒刃に、刃の側面から一撃する。
 イリヤスフィールのソレとは違う、より強靭でより鋭角な刃は、砕けることなく私を弾き飛ばす。

「グ、ァッ………!」

 想定外すぎる。
 魔術や礼装でなく遠隔攻撃が出来る剣士など聞いたことがない。
 剣技自体も桁違いだ。追い込むどころどころか、互角にすらなっていない。

 彼我の距離はプラス十メートル。
 合わせて三十メートルのその距離は、お互いの実力差を表しているように見えた。

「立つがよい。まだ終わりではないぞ」

 セイバーから膨大な魔力が溢れる。
 剣は腰だめ、突きの形に構えられている。
 その体からは、重厚な鎧が取り払われていた。

「まさか―――!」

 即座に立ち上がり、構える。
 絶好のカウンターの好機。だが同時に、セイバーが放つ必殺の一撃のはずだ。

 ……だが、やはりまだラックは反応しない。

「行くぞ―――散るがいい!」

 ドン、と言う音とともにセイバーが突進する。
 重厚な鎧に要していた魔力さえも『魔力放出』に動員される。
 さらに狭い廊下が銃身となり、弾丸であるセイバーをより加速させる。

 お互いの距離は三十メートル。
 それをセイバーは、僅か三歩で踏破した。

「――――――ッ!」

 カウンターもなにもない。ただ自らの存命の為に、必死に敵の一撃を回避する。

「、ガハッ…………!」

 それは成功。
 だがセイバーが掠めた衝撃だけで、より後方へと弾き飛ばされる。

「そら、次だ!」
「っ…………!」

 後ろからセイバーの声。
 すぐさま跳ね起き、放たれた剣閃の回避に徹する。

 なぜこんなにも早く後ろに迫れたのかと思えば、セイバーの後方の壁が大きく凹んでいた。
 どうやらセイバーは、廊下の端の壁を足場に停止、方向転換したらしい。

「遅い。この程度も凌げぬのか? もっと足掻いて見せろ。
 ランサーの槍はより鋭く、より疾かったぞ」

 疾風怒濤と振るわれる剣閃。
 刺突を基本としたそれは、確かにランサーの槍を思わせる。
 だが速度、精度は及ばずとも、一撃の威力はそれ以上だ。

12対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:30:06 ID:ExHGcG.2
「ガ、ッ…………!」

 剣劇を捌ききれず、弾き飛ばされる。
 吹き飛ばされた私の体は、廊下の壁を粉砕し、その奥の室内へと叩き込まれる。

「、ッ…………!」

 ……これがセイバーのサーヴァント。これが本物の英霊。
 私が相手にした黒化英霊とは、そもそもの質が違う……!

「物足りぬ、立て。それともそのまま朽ちるか?」

 セイバーが部屋へと入ってくる。
 その体には、魔力の霧が集うように結晶化し、漆黒の鎧を新たに作り上げる。
 その様を見て更なる驚愕を味わう。
 あれだけの魔力放出を行いながら、セイバーのその膨大な魔力は、まったく陰りを見せていない。
 眼前のサーヴァントは、一体どれほどの魔力を蓄積させていると言うのか。

「万策尽きたか。全く……手応えのない。身の程を誤ったな」

 未だに膝をついたままの私を見て、失望したようにセイバーが言った。
 返す言葉もない。
 私から仕掛けておきながら、結局私は最後まで攻勢に出る事が許されず、セイバーの猛攻に翻弄されるしかなかった。

「自我がなくとも性能は変わらない。そう言ったな、魔術師。
 確かにその通りだ。自我があろうとなかろうと、肉体の能力はそう変わらん」

 壁の残骸を踏み砕きながら、セイバーが前進する。
 それに圧されるように、私も僅かに後退する。

「だが勘違いをするな。
 そもそも英雄とは、己が生き様を貫いた果てに成るものだ。肉体の性能など、その結果付いてきた物に過ぎん。
 故に、自我のない英霊など本物に及ぶべくもない。それを侮るなど、片腹痛いわ」

 セイバーがさらに歩を進める。
 私の体もさらに後退するが、背後の壁に阻まれる。

「無意味な勝負だった。確かに魔術師にしては鍛えられているが、それだけだ。名を覚える価値もない。
 共に時間を無駄にしたな」

 逃げ道を失くした私に、セイバーが剣を突き付ける。
 その刃から逃れる術はない。
 フラガラックは通常状態でも使用できるが、セイバーは確実に避けるだろう。
 それ以前に、発動の準備に入られた段階で気付かれる。

「くっ……」

 方法を。
 どうにかして、生き延びる方法を考えなければ……!

「祈れ。少しは楽になろう」

 セイバーのサーヴァントはそう言って、私に何の感情も向ける事なく、その剣を、この胸に突き出した。

「ッ……“後より出でて先に断つもの(アンサラー)”―――!」

 それを死に物狂いで躱し、ラックを発動させる。
 魔力を内包する鉄球が、切り裂かれ血の噴き出す左腕を砲台に、紫電を帯びて装填される。

「宝具……!」
 それを見てセイバーが警戒し、僅かに後退して剣に魔力を籠める。

 それでもなお、必勝の条件は発生しない……ッ!

 苦肉の策。
 生き延びる為の最後の一手を切る。

「くらえ……!」

 跳ね上がる鉄球。振り被られる鉄拳。
 眼前へと弾き飛ばされたそれへと向けて、渾身の右ストレートを叩き込む。

「――――我がフラガラック! ……じゃない球!」
「なっ………!?」

 ビリヤードの如く打ち出される砲丸投げの球。
 真正の宝具であるラックに注視していたセイバーは、その別方向からの奇襲に対処しきれない。
 だが、それを覆すのが剣の英霊。

 砲丸を躱すのが不可能と即座に判断し、剣での迎撃に切り替え、それを間に合わせる。
 振り抜かれた剣は違わず砲丸の軌道を遮り、見事に砲丸を両断した。
 両断して……しまった。

「ガッ………!」

 二つに切り裂かれた砲丸は、その勢いのままにセイバーへと飛来し、新たに作られたヘルムに覆われた頭部に直撃した。

13対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:30:57 ID:ExHGcG.2
 これを好機と、全力で駆け出す。
 セイバーにではない。あのサーヴァントならたとえ、今の状態からでも迎撃して見せるだろう。
 走るのは部屋に備え付けられた、外に繋がる窓へと向かってだ。

「ッ、貴様……!」
 それを見咎め、思わぬ反撃に激怒したセイバーは剣に魔力を纏わせ、一閃する。

 窓を体で叩き割り、空中に飛び出す。
 同時に体を捻り、迫る黒刃に相対する。
 魔術回路を限界まで回し、右腕に渾身の力を籠め、限界まで振りかぶる。


 生きるか死ぬか。
 生き延びるために、迫りくる死に最後の一撃を叩き込む――――!


        ◇


 崩壊した窓から地面を見下ろす。
 死体はない。
 完全に蒸発した可能性もあるが、手応えはなかった。

「……逃したか」

 それだけを呟いて、自身も跳び下りる。
 そのまま危なげなく着地し、足を進める。


 未だに鈍痛が残る頭部をさする。
 あの時、セイバー自身は砲丸を両断するのでなく、弾くか打ち砕くつもりだった。
 とっさの判断であった事と、慣れ親しんだ剣と似ているが違う剣の違和感に、失敗してしまったのだ。

 この魔剣は選定の剣によく似ている。
 似ている分だけ、その差異が齟齬となる。
 その結果、魔術師を取り逃がしてしまった。

 砲丸の威力にヘルムは砕けたものの、ダメージはない。
 だが、次も似たようなことにならないとは限らない。
 やはり、エクスカリバーの捜索は急務だろう。


 それはともかく、これからどうするか。
 対策本部はもう調べ尽くした。
 キラと呼ばれる犯罪者に関する資料があっただけで、有益な物はなにもなかった。
 先の魔術師も含め、全くの無駄足だったのが腹立たしい。

「む………」

 ふと、小腹がすいたと思い、ハンバーガーの入っていた紙袋をあさる。
 人間、空腹だと苛立ちやすいものだ。
 が、中身はない。
 どうやら既に食べ尽くしていたらしい。

「……ふん」

 紙袋を投げ捨てる。
 期待してしまった分苛立ちがさらに溜まった。

 そこでふと思い出したことがあり、地図を広げる。

 目を落としたのは【F-7】の衛宮邸。
 そこに書かれた衛宮邸が自分の知る衛宮邸なら、もしかしたら何かしらの食料があるかもしれないと思ったのだ。
 それに場所は町村。つまり参加者達が立ち寄る可能性が高い。

「決りだな」

 目的地が決まり、迷いなく北東に歩みを進める。
 心なしか早足なのは、決して食べ物の為ではない……ハズだ。


【G-5/キラ対策本部前/一日目 早朝】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、黒化、魔力消費(微小)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所。さしあたっては、【F-7】の衛宮邸に向かってみる
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:次に士郎たちに合った時は、聖杯の器(イリヤ)を貰い受ける(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています

14対決〜英雄の真髄 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:31:37 ID:ExHGcG.2


        ◇


 未だ血の流れる左腕を右手で止血しながら走る。

「私としたことが、とんだ失態だ……!」

 失態も失態、大失態だ。
 事前情報は当てにならないと解っていながら、自身の経験という情報を当てにしてしまった。
 その結果がこのざまだ。

「指は……動く。骨にも異常はなさそうだ。
 しかし、これでは当分、戦闘に支障が出ますね。
 ……いや、腕が繋がっているだけ良しとしましょう」

 あの時。セイバーの止めの一撃を躱した時。
 避け切れなかった刺突は私の左腕を大きく抉った。
 しかもその直後、囮に使ったラックの砲台にしたため、更に悪化させてしまった。

 幸い腕の神経は問題ないようだし、ラックも消費せずに済んだ。
 これは不幸中の幸いと言う奴だろう。

「しかし、セイバー相手でこれでは、バーサーカーと相対した時が思いやられる」

 セイバーより厄介と聞くバーサーカーだ。
 セイバーにすら相手に成らないようでは、バーサーカーを倒すなど夢のまた夢だろう。

「戦力が入りますね」

 自分一人ではどうにもならない。
 誰か、セイバーを追い詰める事の出来るだけの力を持った人物、または武装が必要だ。
 目ぼしい人物としては、カレイドステッキを持つイリヤスフィール達だろう。
 一度はクラスカードを全て封印した経験を持つ彼女たちなら、サーヴァントを相手にしてもどうにかなるかもしれない。

 問題は。
 一度は彼女達を、自分が圧倒したと言うことだが。
 自分にラックを使わせたように、他にクラスカードがあればどうにかなるだろう。

 もっとも。

「それよりもまず、この腕を止血しなければ」

 未だに血を流し続ける左腕。
 これを完全に止血しなければ、どうする事も出来ない。

 どこか安全に処置できる場所を目指し、駆け足を止める事なく、冬木大橋へと足を踏み入れた。


【H-5/冬木大橋前/一日目 早朝】

【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身裂傷、左腕重傷(骨、神経は繋がっている)、疲労(中)
[装備]:ルーンを刻んだ手袋
[道具]:基本支給品、逆光剣フラガラック×3@プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:何としてでも生き残る。手段は今の所模索中
1:取り合えず撤退。傷の治療をする
2:セイバーを追い詰めれるだけの人員、戦力を探す
3:とりあえず会場を回ってみる
4:障害となる人物、危険と思しき人物は排除する
5:安全とみなした人物、有用な人物にはニアの存在と計画を教える
6:呉キリカには借りをつくった
[備考]
※3巻の戦闘終了後より参戦。
※「死痛の隷属」は解呪済みです。
※キリカから、セイバーの存在と、マントの男(ロロ・ヴィ・ブリタニア)の情報を教わりました。
※呉キリカを、『殺し合いに乗っていない参加者』と認識しました。
※セイバーやバーサーカーは、クラスカードを核にしていると推測しています。

15 ◆UOJEIq.Rys:2011/09/24(土) 17:35:48 ID:ExHGcG.2
以上で投下を終了します。
フラガラックの数については、まとめwikiで個数が書かれていなかったので、ホロウと同じ三個とさせていただきました。

他に何か意見や、修正すべき点などがありましたらお願いします。

16名無しさん:2011/09/24(土) 18:50:57 ID:6WXhb266
投下乙です。大恩人が大故人に、と思いきやの大奮闘とは。「……じゃない球!」には不覚にもw
黒セイバーも黒仮面族(?)なだけあってやっぱ威厳あるなぁ、腹ペコだけど。

17名無しさん:2011/09/24(土) 21:05:11 ID:LUJM8PEU
大恩人が大故人にならなかった。やったね!黒セイ強ぇ…バゼット、否ダメットさん超頑張れ。
投下乙です。

18名無しさん:2011/09/24(土) 21:30:37 ID:r0Zxvecs
投下乙です!
バゼットさん、何とか生き残れたな……
セイバーは相変わらず強いなぁ、彼女の快進撃はまだまだ止まりそうにないかも

19名無しさん:2011/09/24(土) 22:21:06 ID:7IrYiN7E
投下乙です
バゼットさん生き残ったな、運がいいのか悪いのかw不幸中の幸いという言葉を作った人天才だな
フラガラックは対主催でも重要だし消費しなかったのは本当に良かったな

20名無しさん:2011/09/24(土) 22:34:30 ID:EOu.zzoQ
投下乙です
ダメット生還したかw
あとはニアがどう対処するか・・・

それにしても
>……いや、腕が繋がっているだけ良しとしましょう
原作と比べるとなんとも皮肉w

21名無しさん:2011/09/25(日) 00:20:20 ID:ynKEKjuM
>>1
スレ立て乙ですー。

>>15
投下乙ですー。
うわー、セイバー強……唯一本編より強いとまで言われるプリズマダメットでもこうか、これはヤバイ。
しかし球ってw そりゃ充分に恐ろしい武器になるだろうけどさw
あとフラガラックは前スレ>>946だと2個になってますね。 wikiには無かったか。

22名無しさん:2011/09/25(日) 18:25:46 ID:yqAfp.Jw
投下乙です

意志の無い英霊と一緒にしてた時点でアウトだわ。死んでてもおかしくなかったが生き延びたか
さすがに単独ではもうどうにもできないから仲間を募ろうと…こいつにそれが可能だろうかw
黒セイバーは食い物から士郎邸かw

23 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:02:35 ID:kmCFpsoc
美遊・エーデルフェルト、ロロ・ランペルージ、長田結花、南空ナオミ投下します

24幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:03:45 ID:kmCFpsoc


 長田結花は不幸な少女である。
 両親は物心が付く前に亡くなり、彼女を引き取った養父母によって虐待を受けていた。
 義理の妹は学校ですら彼女を追い詰め、雪のふる日に化け物となった。
 力を得た長田結花は、果たして幸せだっただろうか。
 その問は否である。
 人を守りたいと告げる木場に同調する一方で、かつての不幸の象徴である人物たちは始末してきた。
 胸の内に抱える二面性に悩みながらも、バケモノの力を振るい、追い立てられ、余裕を失っていった。
 オルフェノクとなっても彼女は昔と何ら変わらなかった。
 彼女を愛してくれる者はいない。
 そう思い込むことが、彼女を不幸へと追いやっていたと気づかずに。



 月が傾き、夜に紫が混ざりはじめたころ、ロロは同行者である少女に振り向いた。
 肩に掛かるか掛からないか程度に髪をまとめた、冷たい美貌を持つ十歳程度の女の子である。
「そろそろ行こうか、美遊」
「はい。ですけど、体の方はもういいんですか?」
「大丈夫。服も乾いてきたし、風邪も引いていないから問題はないよ。君が向かいたかった友達の家に向かおうか」
 美遊は首を縦に振る。ロロの目的はもう一人の自分を始末し、あわよくば入れ替わることに変わった。
 しかし、もう一人の自分を探すなど、現状では不可能である。
 ならば彼女の信頼を深め、始末する準備を整えるのが先決だ。
 情報、武器、地形の把握。
 やるべきことは多い。ロロは荷物をまとめつつも、冷静に思考を続けた。
 そんな時だ。
『誰か近づいています』
 カレイドサファイアの忠告に身構える。美遊はとっくに準備をすませ、杖を握りしめていた。
 敵か、味方か。
 懐中電灯の光を消して、橋にかかる薄れ始めた闇を睨み続けた。
 ほどなくして、人影が浮かび上がる。背の低さからして女性だろうか。
 ロロは油断なく構えていたが、急に隣の美遊が警戒を解く。
「美遊……?」
「サファイア、もしかして……」
『はい。真理様が教えてくれました、長田結花様と特徴が一致しています』
 サファイアが言い終えた瞬間、長田結花と推察された人物ははっきりと姿を見せた。
 遠目から見ても、彼女は負傷をしているのがわかった。
 服はところどころ敗れ、露出した肌は血で赤く染まっていた。
 息遣いは荒く、危うい足取りだ。
「大丈夫ですか?」
 美遊が冷静に尋ねると、相手の肩がびくっと震える。
 結花らしき女性は何かに怯えているのか、少し後退った。
「あの、長田結花さんで間違いありませんか? わたしは美遊・エーデルフェルトと申します」
「どうして……?」
「真理さんからあなたのことを聞きました。わたしは味方ですので、今はあなたの傷の手当てをさせてください」
 美遊は相手を刺激しないように説明を終え、近づいていく。
 ロロは黙って成り行きを見ていた。下手に口を挟んで事態をこじれさせる訳にはいかないからだ。
 一方、真理と聞いた瞬間に結花がわずかに安堵するが、それでも数歩後ろに下がる。

25幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:04:10 ID:kmCFpsoc
「長田さん……?」
「近寄らないでください! わ、私は……私は……」
 彼女の顔に何かの影が映る。ロロは気のせいかと目を瞬き、結花の顔を覗き込みなおした。
 儚げで綺麗な女性の顔だ。見間違いか、とロロは首をかしげる。
 一方美遊は何かを理解したように頷いた。
「大丈夫です。真理さんから話を聞いたとき、その可能性も考慮していました」
「……園田さんから。でも、ごめんなさい。私は……もう……」
 結花は悲痛な顔を浮かべると、一瞬にして姿を変える。
 白い鉄仮面を被ったような、伝説上の生物ハルピュイアを彷彿させる外見だ。
 彼女は泣いているかのような掛け声と共に、自分たちの頭上を飛び越えた。
 あまりの事態にロロは混乱しかけるが、どうにか踏ん張る。
 ここでうろたえるようでは、兄のお荷物でしかないからだ。
「美遊、あれは……」
「オルフェノクでしょう。サファイア、真理さんが知っていた可能性は?」
『ほぼ確定かと。彼女のオルフェノクに対する説明は『人類を追い詰めた怪物』なのに、優しすぎましたからね』
 美遊も同意らしい。ロロはあれがオルフェノクか、と認識しながら告げる。
「彼女が味方なら、追いかけないとまずいことになる」
「ええ、あの方向は……」
 顔を歪めた彼女を視界の端に、ロロは荷物を担ぐ。
 彼女の決意は決まっているだろう。それにオルフェノクの情報は集められるだけ集めたほうが、ルルーシュと合流したときに都合がいい。
「なら早く追いつこうか」
『……よろしいのですか?』
「もとより危険は承知さ」
 ロロがサファイアに答えると、美遊は頭を下げた。


 結花は変身を解きながら、近くの木にもたれかかった。
 気が強く、自分とは正反対の園田真理。美遊は彼女と出会ったといった。
 正直彼女に会いたくなかった。
 自分はバケモノだ。それだけならまだしも、自分は人を殺してきたし、また殺してしまった。
 乾巧がオルフェノクである事実を真理が受け止めたのは知っている。
 だけど、結花は巧とは違う。
 人を殺すことを明らかに楽しんだ。その報いが回ってきたのだ。
 警察に追われ、捕らえられそうになった。
 デルタと遭遇し、ルシファーズハンマーを受けた。
 きっと裁かれるべきなのだろう。そう自分の命を諦めかけていた。
 瞬間、狼のような遠吠えが響き渡る。
 同時に急に現れた黒い狼に体を切り裂かれた。
 結花は地面を転がり、襲撃者を見つめる。
 二足歩行の黒い狼にしか見えない。血のように赤いたてがみが風になびく。
 ああ、きっと天罰だ。自分にふさわしい最後がきたのだと、結花は覚悟をする。

「砲射(シュート)!!」

 なのに、決意を光が砕いた。
 紫のドレスに黒いスカート。露出の大きい背中をマントで隠し、玩具のようなステッキを携える少女が自分の前に立つ。
「ケガはありませんか?」
 美遊という名の少女が、助けに入ったのだと理解した。

26幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:04:31 ID:kmCFpsoc


 黒い狼は着弾する前に跳躍し、魔法弾を避けていた。
 軽やかな体捌きはオルフェノクでも追いつけるかどうか。
 結花はそんなことをぼんやりと思いながら、美遊に視線を移した。
 低く唸る獣を前にしても、彼女は落ち着いている。
 なぜ、という疑問がまず結花に浮かんだ。
 自分は死ななければならない。そして薄汚いバケモノだと彼女に見せたはずだ。
 なのに、助けてくれた。
「どうして……?」
 疑問が言葉となり、こぼれ出る。
 美遊は敵を見据えながら、ステッキをゆっくりと胸の前に持ち上げた。
「わたしの一番大事な友だちなら、絶対あなたを助けに向かいますから」
『来ますよ、美遊様』
 杖が喋った瞬間、結花は腕を掴まれて離れさせられた。
 美遊が放った光と似たものを、黒い狼が放ったのだ。
 いや、まだ両腕に光を溜めている。結花たちは知らないが、あれはポケモンの技の一つ「きあいだま」である。
「長田さん、一つ質問しますが、あれはオルフェノクなんですか?」
「……違うと、思います」
 結花の返答を美遊は吟味するかのように頷いた。
 黒い狼と距離を取り、結花を降ろす。小さな女の子なのに、すごい力だった。
「ならあれはおそらく……」
『タケシ様の世界からきた生物、ポケモンだと思われます。
彼のポケモン、ピンプクかウソッキーという可能性もありますが、いかがいたしますか?』
「なるべく傷つけないようにする」
 美遊はステッキと会話しながら、戦闘態勢を整えていた。
 ポケモンとか世界とか結花には理解できなかったが、相手を捕らえる気であるのは理解した。
 黒い狼が爪をたてながら襲いかかる。
 美遊は一直線に迎撃に向かった。獣の太い腕と少女の細腕がぶつかり合う。
 彼女は見た目以上の力を持っているが、それでも人外の相手と正面からぶつかるのは不利だ。
 実際、あっさりと弾き返された。結花はそんな不利な戦い方を選んだ理由に勘づいている。
 オルフェノクである、バケモノである結花自身を守るためだ。
 どうして、なんのために。
 頭が混乱しながらも、結花は美優の戦いから目が離せなかった。


 南空ナオミは現状が好ましくないことに歯噛みする。
 一人で六十人近くの人間を始末できるとは思っていない。
 最終目的は元の欧名美術館に戻り、夜神月がキラであることを世間に思い知らせ、婚約者の無念を晴らすことだ。
 だからこそ交渉できる相手は交渉し、自らの目的を隠しながら行動を共にして、隙を突いて殺そうと考えていた。
 そんな彼女の前に、いかにも『殺してください』と言わんばかりの少女が目に入ったのだ。
 やや短絡的だが、減らせるうちに減らしておきたいと思うのが人情。
 彼女の肩書きからすると信じられないほど、あっさりと始末することを決めたのだ。
 ゾロアークの性能も確かめたかった、という打算もあったため、相手を襲う手段は獣自身に委ねた。
 ただ一つ、作戦を秘めさせて。
 誤算だったのは、あの少女が一人ではなかったことと、子どもがゾロアークと渡りあえることか。
 ナオミの目付きが険しくなる。
 まだ顔は見られていない。ゾロアークを退かせ、しばらく時間が経った頃に何食わぬ顔をして合流するという手もありだ。
 頃合いを見計らうべきか、と撤退の合図を送る準備をした直後だ。
 後頭部に硬い感触を感じたのは。
「動くな」
 若い男の声だった。不覚だ。
「私はたまたまここを通り過ぎただけ……と言っても無理よね」
 相手は無言で銃を更に強く押し付けた。返答がわりだろう。
 もっとも、そんな言い訳が通用するとは思っていない。
「降参よ」
「だったらあのポケモンを戻してもらおうか。彼女からある程度、ポケモンについては教えてもらっている。嘘は無駄だ」
「そう。あの子を退かせるため、口笛を吹かせてくれないかしら?」
「いいだろう。だけど妙な真似をするな。どんな行動を取ろうと、僕のほうが速い」
 たいした自信だ。ナオミは大人しく彼に宣言した通り、ピィーっと甲高い口笛を吹いた。
 ゾロアークは美遊への攻撃をやめ、こちらに踵を返す。
 銃を構えている少年はその行動にも気を緩めていない。できる。
 だが、こちらは準備をしていたのだ。ナオミはほくそ笑み、回し蹴りで少年の銃を蹴り飛ばす。
「くっ!」
 そのまま逃げようとするが、次の瞬間少年は飛ばされたはずの銃を握りしめ、自分に向けていた。
 何をしたかは知らないが、たしかに速い。引き金にかかる指に力が入っていた。
 だけど、ゾロアークの『きあいだま』が二人の間に割って入るのが早い。
 これで、第一段階は終わった。

27幻影と罰 ◆qbc1IKAIXA:2011/09/26(月) 20:04:50 ID:kmCFpsoc


「ロロさん!」
 遠くの美優の声を耳にしながら、ロロはおのれの迂闊さを呪った。
 油断はしていなかった。何らかの格闘技はかじっていただろうと用心していた。
 予想通り銃を蹴り飛ばされたが、ギアスで挽回できた。そのまま撃ち殺せるはずだったのだ。
 まさか、ギアスの有効範囲が狭くなっているなんて。
 いつもなら彼女が持っていた黒いポケモンにも効果は及ぶはずだった。
 結局ポケモンの行動は縛れず、攻撃を放たれてしまったのだ。
 体力の消耗が激しくなっている時点で、効果範囲も疑うべきだっただろう。
 兄ならその可能性に思い至ったはずだ。自分の愚かさが嫌になる。
 半ば意地になりながら、煙をかきわけて殺人鬼の女性を探す。
「見つけた!」
 黒いライダースーツに包まれた細い腕を思いっきり掴んだ。
 間違いない、銃を突きつけたあの女性だ。今度は逃がすものか。
 ロロが更に拘束しようとした時、相手の口から炎が走った。
 虚を突かれ、頭の中が真っ白になる。ただ、危険を察知して本能で距離を取るだけだ。
 地面を転がり火を必死になって消す。いったいどういうことだ。
「砲射(シュート)! ロロさん、火は!?」
「大丈夫……とっさに飛び退いたおかげか、ヤケドはひどくない」
 ようやく追いついた美遊に対して強がりながら、敵を観察した。
 彼女は両手に光を溜めている。
『あれは……先ほど相手したポケモンの技で間違いありません』
「あの人もポケモンということ……?」
『いえ、今分析の最中ですが、幻影系の魔術に近いものが使われているかと。ならば、あれは先程のポケモンと判断したほうがいいでしょう』
 なるほど、とロロはサファイアの説明に納得し、悔しさに奥歯を食いしばった。
 知らなかったとはいえ、あからさまな罠に引っかかったのだ。
 悔しくないはずがない。
 再びあの女に化けたポケモンが、両手に光を作る。足手まといにならないようロロは立ちあがろうとしたが、膝が崩れた。
 火炎放射の威力は馬鹿にできない。それに気づいた美遊は庇うためか障壁に力を入れる。
 このまま逃げられるのか。
 だが、横から白い影が女を突き飛ばし、攻撃は中断される。
 同時に女の影が消えて、黒い狼のポケモンへと姿が戻った。
「長田さん!」
 美遊を助けに入った存在、オルフェノクに変身した結花に声をかける。
 手助けするほど余裕が生まれたのだと安堵したのだ。
 一方、ロロは彼女の危うさを感じ取った。精神的に追い詰められているように見える。
 そのことを伝えるべきだろうが、傷が痛む。強がったとはいえ、ヤケドの痛みは響くか。
「はぁぁぁぁぁっ!」
 表情の見えないはずの彼女は、明らかに鬼気迫っていた。
 素早い格闘と身のこなしで反撃を許さず、確実に追い詰めていく。
「長田さん、行きますッ!」
 美遊が魔法弾を放ち、ポケモンの動きを止めた。
 合間を縫って結花が蹴り飛ばす。ポケモンはたまらず木々を蹴って逃げようとしたが、オルフェノクである結花の方が速い。
 気合を込めた叫びと共に、彼女の背中から光の羽が伸びた。
 周りの木々を切り裂きながら、ポケモンに迫る。
 その瞬間、ロロは目撃してしまった。黒い狼の顔が、人間のように微笑んだのを。
 ポケモンは真上に跳躍して、必殺の一撃を避けた。
 なのに、ブシュッと液体が噴出する音が鼓膜を叩く。
 血に濡れる灰色の怪人の腕に、ロロたちを襲った女の首が落ちた。
 いきなりの状況に、殺人鬼の死体が灰になるまで、全員の視線は釘つけになった。


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