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小さい水泳部キャプテン-後編-

26ポロ:2011/04/18(月) 17:51:20
『写真Ⅳ』

「この本、やる」
「え?どうして…ですか?」
「これも何かの縁だ。この本は今の君が読むのに丁度いい」
「でも、知らない人からもらうわけには…」
「知らない人って。俺の名前は神谷明己仁、今日退院する人ってさっき言ったろ」
「あ、いや、そういうことじゃなくて…」
「じゃあ聞くけど、俺が怪しそうな奴に見える?」

この時、少年は戸惑った。
正直なところ、少年は目の前にいる男性がずっと怪しく見えて仕方がなかった。
しかし、男性の妙な親しみやすさと最近の自分自身の孤独さが重なり合って、
そんなことないです、と返事をし、差し出された本を受け取ってしまった。
最後には、さすがに本をもらうのは悪いから、本を読み終えたら明己仁に連絡して返すという話で落ち着いた。

「じゃあ俺は帰るわ」
「え?」
「俺、こう見えて先生をやっててな。さっさと帰らないといけないんだよ」
「あ、そうなんですか…」
「じゃあな。早く足、良くなるといいな」
「は、はい」

何だか寂しいです、と言いそうになった少年を背を向けて、明己仁は屋上を去って行った。
一方で、少年は神谷明己仁という男性への警戒心が薄れ、入院6日目にして孤独を感じ始めていた入院生活の中、
仲の悪い両親や、自分以外の男と仲良くしている友達がいる状況で、連絡すればまた出会える人の存在に少し安心していた。


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